第27話 突然決まった身請け先


 はぁ。憂鬱だ。


 結局あれから、ハクアさんのところに戻ることもできなかった。利息は前にもらっていたから何とかなったけど、今日はその10日後。

 どんな顔で利息の取り立てに行けばいいか、分かったもんじゃない。かなり落ち込んでたしな……。


(ハクアさん、もう仕事にも復帰してるんだよね……)


【外周郭】に入り、ハクアさんのいる娼館に向かう。その足取りは重い。

 身請け作戦失敗後の新しいプランも、まだ思いつかないままだ。会ったところで、ささっと利息を回収して逃げることしかできないだろう。


(はぁ、憂鬱……あれ?)


 とぼとぼと歩いて娼館の前に来たら、何だか店の前が騒がしい。それに、店の中に、何人もの女の人が出入りしている。こんなの初めて見た。


「こんにちはー……」

「ああルイくん、いらっしゃい!」

「女将さん。どうかしたんですか?」

「ああ、それがね、大ニュースよ!」


 女将さんが今までに無いくらい明るい顔で、僕にニコニコと話しかけて来る。……逆に、ちょっと気持ち悪いと思ってしまった。

 だがそんな僕の気持ちに気づかず、女将さんは上機嫌で続ける。


「なんとね! ――――――したのよ!!」

「……え!? 身請け!? 誰が!?」

「誰がって、アンタ決まってるじゃない! ウチの、ハクアよ!!」

「……え!?」

「おかげでもう、身請けの準備で忙しくって! あ、コレ今回分の利息ね。悪いけどあの子には会う時間ないわよ? あちこちに行っているから」

「え、え、え……!」


 ち、ちょっと待って。ハクアさんの身請け話って、この間頓挫したばっかりなのに……! 何なら、身請け相手が首を斬られているのすら、僕は見ているのに!?


「だ、誰なんですか!? ハクアさんの、身請けの相手って!」

「……いや、それがねえ。空気の澄んだところで経営している、宿屋の旦那なんだってさ」


 ……いやそれ、だから……! 殺されたトルドーさんの話じゃ……!


 困惑していたら、「邪魔よアンタ!」とドレスを持ってきた女性に跳ね飛ばされ、僕は店から転げ出てしまった。


******


「えーっ!! ハクアさん、身請け先決まったの!?」

「うん。僕も、詳しくはわからないんだけど……」


 たまたま仕事帰り、一緒になったミカちゃんと晩御飯を食べていた僕がそのことを伝えると、ミカちゃんもたいそう驚いていた。思わず手に持っていたスプーンを、ぽとりと取り落としてしまう。僕らが食べているのは、肉の種類は違えど同じくカレーだ。


「でも、この間身請けしてもらおうとしてた人が殺されたばっかりじゃない! 一体誰が……」

「僕もわからないんだよねえ。前の人と同じく、宿屋の店主だって話は聞いたんだけど」

「宿屋かぁ。そんなに儲かるのかしら」

「場所にもよるんじゃない? 地方と王都の間とかだったら、結構人通りも多いでしょ」

「田舎の村の宿屋じゃ、クエスト受けに来た冒険者しか泊まらないもんね」


 確かに、僕の地元の村にも宿屋があったけど、あんまり経営は芳しくなかった。それは、宿を利用する客が単純にいなかったから。利用するような場所に、村がなかったからだ。


 ハクアさんの身請けをするほどのお金があるということは、よっぽどいい立地の宿屋なんだろう。


「……でも、不思議なんだよなあ。ハクアさん、身請け事件があってから、結構悪いうわさが広がってね。お客さんも敬遠してたみたいなんだよ。「何も知らない客を垂らし込んで、大金払わせようとしたがめつい娼婦だ」って……」

「そんな噂があったのに、身請けしたってこと? 大金払ってまで?」

「うん……」


 その人はどうして、ハクアさんを身請けすることにしたんだろう。


 それほどまでに、彼女を愛していたのだろうか。


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