同居人の美少女は雪女の子供です
いちのっせ
第1話 見知らぬ美少女
俺は昔から霊感が強く、普通は見えないであろうものが日常的に見えている。
そのせいで学校ではクラスメイトとぎくしゃくしてしまうことがあり春からは地元から離れた高校に進学しマンションでほのぼのと一人暮らしを満喫していく。
はずだったんだが…
「重い...」
朝からまるで何かが上に乗っているような重さを感じ、目を開けると俺の上に美少女がのっかっていた。
いや…なんで見知らぬ美少女が俺の部屋に!?
見た目から察するに俺と同い年くらいだろうか。
長いまつ毛に透き通った青い瞳、さらさらとした青い髪。無意識に目が吸い寄せられるようだ。
それはさておき、この子はいったいどこから入ってきたんだ?
そもそも人間なのか妖怪や幽霊の類なのか、霊感の強い俺にも判別がつかない異様な気配を纏っていた。
「ぐぅぅぅ」
どうやら彼女はお腹が減っているらしく食べ物をよこせとジェスチャーをしてくる。
とりあえず家に食べ物がなく出前を取ったのだが...
「マジかよ…」
この子すんごい食べる。だんだんと財布の中のお金が無くなってきた。
さすがにそろそろ帰っていただきたい。
「いい加減帰ってくれないか?」
と少女の肩をつかもうとしたその時、あれ、触れない?
少女は食事中に触れようとしたからか鬼の形相で俺をにらみつける。
その瞬間、家の中なのに吹雪が吹き始めた。
「なんなんだこの子は…」
やはりこの子は妖怪の類なのか?
家の中は解けた雪水で最悪だがとりあえず頭の中で状況を整理しよう。
まずこの子は自由に霊体化と実体化をでき、服が落ちていないことから察するに体の一部分だけの霊体化もできるみたいだ。
そしてなにより今みたいな吹雪はいつどのタイミングで起こるのかわからないため
要注意。
聞きたいことは山ほどあるがまずはこの子の目的が知りたい。
「なあ、お前はなんで俺の家にいるんだ?」
食べることに夢中で聞こえていないみたいだ。
そんなこんなで食べ始めて三十分が経つ。
無理やり追い出そうとも考えたが霊体化され触れないため断念どうしたものか…
しばらく悩んでいると急に話しかけてきた。
「申し遅れました。私は一ノ瀬 柚葉(いちのせ ゆずは)。あなたの名前は?」
しかしいきなり自分から名前を教えてくるなんてどういうつもりなのだろう。
だが、沈黙が続くだけで特に意図は見えないので答えることにした。
「俺は音坂 理久(おとさか りく)」
「じゃありくさんって呼ばせてもらいますね」
中学では友達どころか少し話すような仲のやつもいない、そのため両親と妹以外に自分の名前を呼ばれるのは少しうれしい。
「まずなんで俺の家に勝手に入ってきたのかなど経緯をすべて話してほしい」
話を聞いていくとだんだんと柚葉のことがわかってきた、柚葉は妖怪と人の子供でお母さんが雪女、お父さんはごく普通のサラリーマン。
中学までは幽体化がコントロールできないため学校に通わせてもらえず外出もできず、幽体化のコントロールができるようになったときには同年代の子たちと比べ学力が低く高校受験に失敗。
受験に落ちたことで両親は教育方針のミスの責任を擦り付け合い離婚。
その後母に引き取られたが毎日のように罵詈雑言を浴びせられ、耐えられず家出。
しばらくは貯金を使いネカフェに泊まっていたがお金が無くなり、途方に暮れていた時にたまたま俺を見つけ家までつけて入ってきたそうだ。
「ごめんなさいこんな重い話困ってしまいますよね、ごはんありがとうございました」
重い足取りで玄関へ向かう彼女は今にも消えてしまいそうな気がした。
おそらくこの子は家には帰らない。
行き場のないこんな状態の子を放っといていいのだろうか...
周りの子が当たり前にしている生活ができないのはとてもつらいことだ。
俺も霊感が強く、普通見えないであろうものが見えたりすることで周りから孤立していったから独りになる辛さはわかる。
なぜ周りと違うのかと自分に嫌悪感を抱いたほどに…
この子は自分が周りと違うことで俺とはくらべられないほどの苦労をしてきただろう。
でも、この子には自分を憎んでほしくない。
この時俺は初めて誰かの助けになりたいと思った。
「一ノ瀬さん、俺とでよければなんだけど一緒に住まない?」
「ほんと、ですか?...」
一ノ瀬さんの瞳からは今にも涙があふれそうだ。
「俺が一ノ瀬さんの支えになるよ」
孤立し両親以外誰ともかかわらない人生を歩んできた俺が初めて女子を泣かせてしまった。
アニメや漫画では感動のシーンになるであろう場面なのはわかるのだが...
また家の中は雪だらけ。そんな悲惨な状態の中一ノ瀬さんは寝てしまった。
だが、さすがは雪女の子供、部屋の中でさえ雪のある所ではとても絵になる光景だ。
不法侵入から始まる同居なんて展開、アニメや漫画でもそうそうない展開だろう。
でも、少し不安だがあの子とならやっていける気がする。という妙な自信があった。
が、まずこの雪をどうしたものか。
やっていける気がするとは思ったが、これからも家の中で吹雪が起こるのは幸先が不安だ…
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