精神分析学に基づくキャラクターの性格設計
技術コモン
性格の16軸モデル
性格の16軸モデル
■ 概要
性格を描く際には、単なる「優しい」「冷たい」といった形容だけでは奥行きが生まれにくい。精神分析学では、性格を多次元的に捉えるための評価軸がいくつも提案されており、それを物語設計に応用することで、キャラクターの一貫性と複雑さを持たせることができる。以下では代表的な軸を整理する。人の性格はこれらの軸において2値的に当てはまるものではなく、一般的に連続的中間的な値を取る。
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■ 1. 外向性―内向性
最も基本的な評価軸のひとつ。外向的な人物は社交的で刺激を求めやすく、他者との交流をエネルギー源とする。一方で内向的な人物は、静かな環境を好み、思考の内面に重きを置く。
物語においては、外向的な主人公は積極的に事件に関わる推進力を持ちやすいが、内向的な人物は観察力や洞察に優れ、思慮深い行動を物語に添える。
■ 2. 協調性―対立性
協調性(調和性)が高い人物は、他者に配慮し、衝突を避け、信頼や優しさを示す傾向がある。逆に協調性が低い(対立的な)人物は、自分の利益や主張を優先し、時に攻撃的になる。
この軸を物語に置き換えると、協調的なキャラクターはチームの潤滑油となるが、対立的なキャラクターは葛藤や緊張を生み、物語を動かす火種となる。
■ 3. 誠実性―奔放性
誠実性の高い人物は計画的で責任感が強く、目標達成に努力を惜しまない。対して奔放な人物は自由を尊び、柔軟で即興的に動く。
キャラクター設計では、誠実性の高いキャラは「信頼できる安定要素」として、奔放なキャラは「予測不能な揺さぶり」として配置できる。両者の対比は物語にダイナミズムをもたらす。
■ 4. 情緒不安定性―情緒安定性
不安、怒り、憂鬱といったネガティブ感情をどの程度体験しやすいかを示す軸。情緒不安定性が高い人物は繊細で感情が揺れやすい。逆に低い人物は落ち着き、冷静でブレにくい。
物語では、情緒不安定なキャラクターは緊張感を高め、共感を呼びやすい。一方で安定した人物は物語の「支柱」として機能し、他者を支える役割を担う。
■ 5. 開放性―保守性
開放性が高い人物は新しい経験やアイデアに積極的で、芸術的・創造的である。逆に保守的な人物は慣習や既存の枠組みを大切にし、安定を求める。
キャラクター表現において、開放的な人物は革新的な行動を起こし物語を変革へ導き、保守的な人物は伝統や秩序を守る存在となる。
■ 6. 楽観性―悲観性
出来事を前向きに捉えるか、あるいは最悪の結果を予想してしまうかの傾向。
楽観的な人物は希望や明るさを物語に与えるが、無謀さにもつながりやすい。悲観的な人物は慎重さやリアリズムを物語に持ち込み、時に「警鐘役」として重要な位置を占める。
■ 7. 自己肯定感―自己否定感
自分を肯定的に受け止めるか否かという内面的な軸。
自己肯定感が高い人物は自信をもって挑戦でき、リーダーシップを発揮しやすい。一方、自己否定感の強い人物は劣等感や嫉妬を抱えやすく、物語上の弱さや葛藤を象徴する存在になる。
■ 8. 主導性―受動性
状況を自ら動かすか、それとも他者に従いやすいかという態度の違い。
主導的なキャラクターは物語の推進役として自然に前へ出る。受動的なキャラクターは流されやすいが、他者に影響されて変化する「成長の物語」を描きやすい。
■ 9. 信頼傾向―猜疑傾向
人を信じやすいか、それとも疑いやすいかという対人認知のスタイル。
信頼傾向の高い人物は協力を生み出しやすいが、裏切られるリスクを抱える。猜疑的な人物は警戒心が強く、真相を暴く役や対立の種を持ち込む存在となりうる。
■ 10. 感情表出―感情抑制
感情を外に出すか、それとも内に秘めるかというスタイル。
感情を率直に表す人物はドラマ性が高く、感情的な衝突を引き起こす。抑制的な人物は冷静沈着に見えるが、その沈黙や内面の葛藤が逆に読者に想像を促す。
■ 11. 道徳性―享楽性
規範や善悪を重んじるか、快楽や利得を優先するか。
道徳的なキャラクターは理想や正義の体現者となりやすいが、享楽的なキャラクターは人間的な弱さや欲望の象徴となり、物語を人間臭くする。
■ 12. 現実主義―理想主義
現実を直視し、実際的な判断を優先するか、それとも理想や理念を追い求めるか。
現実主義のキャラクターは冷静で合理的な判断を下す一方、夢を持たない冷たさを伴うこともある。理想主義のキャラクターは情熱と純粋さを示すが、非現実的な言動で葛藤を招くことも多い。
■ 13. 自律性―依存性
どこまで自分の力で生きようとするか、他者や環境に寄りかかろうとするか。
自律的なキャラクターは孤高の存在や自立したリーダー像を形作りやすい。依存的なキャラクターは他者との関係性を通じて成長する物語を描きやすい。
■ 14. 創造性―模倣性
独自の発想で物事を生み出すか、それとも既存の枠組みや他者のやり方をなぞるか。
創造的なキャラクターは革新や変化の源泉となるが、奇抜さゆえに孤立する場合もある。模倣的なキャラクターは安定や伝統を担う存在として、物語の保守的側面を支える。
■ 15. 意志力―衝動性
長期的な目標のために欲求を抑えられるか、瞬間の衝動に従って行動するか。
意志力の強いキャラクターは試練を乗り越える芯の強さを持つ。衝動的なキャラクターは予測不能で物語を大きく動かす「爆発力」を生む。
■ 16. 権威志向―平等志向
序列や権威を尊重するか、それとも対等さを求めるか。
権威志向のキャラクターは秩序や伝統の維持に適するが、時に権力に従順すぎる。平等志向のキャラクターは革新や民主性を象徴するが、組織の中では摩擦を生むこともある。
■ 締め
これまでに提示した16の評価軸を組み合わせれば、キャラクターは単なる「性格のラベル」を超え、物語の中で矛盾や葛藤を抱えながら生きる存在として立ち上がる。たとえば「理想主義的で衝動的、かつ平等志向のリーダー」は革命家的人物像を想起させるし、「現実主義的で依存的、模倣的だが意志力が強い人物」は逆説的な面白さを持つ。評価軸をただの分類表ではなく「物語の力学を生む座標軸」として使うことが創作の鍵となる。
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