終章:永遠の光の万華鏡
数ヶ月後。
シャルトル大聖堂の北側の一番高い場所に新しいステンドグラスがはめ込まれた。
それはルナが完成させた父との合作であり、そして俺との共作でもあった。
直径八メートルの円形窓に、西洋と東洋の美が見事に融合した誰も見たことのない光の芸術が誕生した。中央には蓮の花をモチーフにした仏教的なデザインがあり、それを取り囲むように十二使徒を表すキリスト教的な図像が配置されている。しかし全体の構成は和歌の韻律を視覚化したような流麗さを持っていた。
使用されたガラスも革新的だった。新しいシャルトル・ブルーは従来の重厚さに透明感を加え、まるで清流のような美しさを醸し出している。他の色彩も東洋的な渋みを持ちながら、ゴシック建築の荘厳さを損なわない絶妙な調和を保っていた。
完成記念の除幕式には多くの関係者が集まった。ジャンをはじめとする職人たち、大聖堂の関係者、フランスの文化省の役人、そして日本からルナの母親も駆けつけた。エリックの姿もあった。彼は深く頭を下げ、ルナに謝罪した後、静かに新しいステンドグラスを見上げていた。
朝日がそのステンドグラスを通過した瞬間。
聖堂の中に今まで誰も見たことのない虹色の
光は床に美しい模様を描き、石の柱に幻想的な影を落とした。そして最も美しかったのは、その光がまるで生きているかのように刻々と表情を変えていくことだった。雲の動きに合わせて、風の強さに応じて、太陽の角度に従って、無限の変化を見せ続ける。
それは父の魂を浄化し、ルナの罪悪感を赦し、そして俺の軽薄な魂を救う奇跡の光だった。
その光の中で俺は彼女の隣に立っていた。
「ルナ。俺、あんたに会うために、ここに来たんだと思う」
「蓮……」
「俺の人生の光はあんただ。だから俺のそばにいてほしい」
無神論者だった俺が初めて祈るように愛を告白した。
ルナは何も言わずにただ静かに頷き、俺の胸に顔をうずめた。
大聖堂に響く賛美歌のような沈黙の中で、俺たちは永遠の誓いを交わしたのだ。
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