違和感
「…レオン。恥ずかしい」
恋人になったあの日からレオンの行動が大胆になった。
「僕達は恋人です」
登下校はもちろん、大学内でもスキンシップをとってくるレオンに少し困っていた。
確かに恋人になったのでスキンシップをすることは変なことではないのだと思う。
外で手を繋ぐことくらい他のカップルもしていることだ。
しかし恋愛経験が豊富ではない私はその一つ一つの行動に体力を消耗する。
「今日のお昼は友達と食べるからね」
「…OK」
一気にテンションを下げるレオンに頭を抱える。
「レオンはもっと他の人と交流するべきだよ。日本に来て私以外の友達で来た?」
授業も一人で受けるか私の隣で受けている姿しか見たことがない。
大学内で誰かと会話する様子を見たことがないので心配になる。
「せっかくの留学生活なんだし、色んなことをするべき!」
留学生や他の日本人との交流で得られるものはたくさんあるはずだ。
「ノアがいればいいです。…そのために来ました」
レオンのそういうところには手を焼く。
「一途というかなんと言うか。何目的で留学に来たんだろ」
レオンが授業を受けている間、友達と食堂で課題をやっていた。
友達の言葉に激しく同意する。
「でもさ、まじで望愛に会いに来るためだけに留学してたらどうする?」
みんながキーボードを打つ手を止めた。
「いやいや、少女漫画じゃないんだから!」
私の言葉にみんなは口をそろえて『すでに少女漫画だわ!』と怒られた。
「離れ離れになってしまった好きな人を追いかけて日本にやって来たってことでしょ?最高に愛されてんね」
「そもそもずっと連絡とってなかったんでしょ?一途とかそんなレベルじゃないでしょ。すごいよ」
女子の恋バナはすごく盛り上がる。
時には当の本人さえ置いて行く。
「けどさ、あくまで留学生。アメリカに帰るんでしょ?」
その現実から目を逸らすことは出来なかった。
レオンが留学生として二年間、この大学に在籍することにはなるがもちろん帰国しなければならない。
いつかはまたレオンがいない生活が始まる。
「でもまだ先の話でしょー。しかも望愛がアメリカで就職するとか逆パターンとか色々考えられるし、今そこまで深く考える必要はないと思うよ」
「そうそう!今はただ欲望のままに!好きだってたくさん伝えてたくさん思い出を作るべきだよ。この時間を忘れないように頭に刻むの!」
気が付けばみんな、パソコンの電源を切り、話に花を咲かせていた。
課題を進める手は全く動かなかったが、口はいくらでも動かせる。
「最近、心愛ちゃんって言わなくなったけどなんかあった?」
「あー、ちょっとね。正直縁切りたい気持ちもあるけどゼミ同じだし…あと少し穏便に過ごさせてほしい」
あの日のことを思い出すと、複雑な気持ちになる。
好きだからこそ抑えが効かないこともあると思うが、このまま友達でいられるかと聞かれれば答えはノーだと思う。
あれ以降話す機会もなかったし、レオンが話している姿も見ていない。
お互いに気まずいため距離を置いているという状況だろう。
「あの子、昔からあんな感じらしいね。高校同じだった友達が良い噂聞かないって言ってた。実際に彼氏取られたらしいし、誰でもいいんじゃない?」
レオンは顔も良いし性格も良い。
だから標的にされたのだろうと想像はつくが、私としても気分は良くない。
「警戒は怠らないように!また何されるか分かんないんだから」
「さすがに大丈夫でしょ。懲りたと思うよ」
女子トークに花を咲かせていると突然視界が真っ暗になった。
「レオン!びっくりするじゃん!」
レオンの手が目の前の視界を遮っていることはすぐにわかった。
「分かりましたか?ごめんなさい」
優しく微笑むレオンに友達が会釈するとレオンも軽く頭を下げた。
「そりゃ分かるよ。早かったね、終わるの」
スマホで時間を見ると、普段ならまだ授業をしている時間だった。
「問題を解いた人から帰れました」
友達に手を振ってその場を離れた。
家に帰るとレオンは『明日のテストの勉強をします』と言って部屋にこもった。
最近はずっとレオンと話していたので家が静かになるのは久しぶりだった。
「…部屋の片付けでもするか」
自分の部屋の扉の先の光景には毎度目を瞑りたくなる。
床に散らばる参考書や教科書。
朝使って机に放置したままの化粧品。
就職活動で貰った企業パンフレットや履歴書。
足の踏み場もない部屋に笑ってしまう。
「とりあえず床が見えるようにしよう」
床に散らばった本を本棚に入れて、要らない書類はゴミ箱に入れた。
やっと床が見えたがゴミ箱がパンパンになってしまったので一階に持って行くことにした。
母の部屋の棚から大きなゴミ袋を取り出すと、その拍子で紙が流れ落ちてきた。
「うわ、やらかした!」
落ちた紙を拾って戻そうとすると、一つの紙に目が行った。
『Noa. You are my angel- too pure, too bright for this world. Freedom is beautiful, but it also takes you far from my reach. If I could, I would keep your wings in my hands. 』
「…何、これ」
ルーズリーフにえんぴつで書かれたこの文字に見覚えがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます