第十話「ゴブリンの誓い、王国の危機」

「ここが人狼族の国か」


 狼のような獣人が多くあるく、そこは人間の都市のようだった。 


「ええこの国は【ザルドラ】あと、そのフードはとらないでください。 私の匂いでケイの匂いがごまかせますから」


 そうリオネからもらったフードつきのローブを着て、町へとはいる。


「ほとんど人の都市とかわらないね」


「ええ、ですが国の大きさなどは比べられるほどではありません。 せいぜいいくつかの町を合わせた程度の大きさしかありません」


「そうなのか...... でも、かなり発展している」


 足元は石畳が敷き詰められ、店も清潔で商品の種類も多い。


「物も充実しているな。 通貨もあるの?」


「ええ、我々は人間の姿に変化できますから、彼らが交易にでて人間の通貨を手に入れております」


「なるほど」


 確かに町には人の姿のものと、人狼の姿のものがいる。


「あれが王宮です」


 そういわれてみると、大きな城がみえてきた。



「本当に大丈夫かな...... いくら事情があるとはいえ、勝手に人間がはいるのは......」


「大丈夫です。 お任せください」


 自信たっぷりにリオネがいい、王宮内をあるく。


 王宮内は清潔で整然としているが、特に華美なところはなく。 つつまやしやかだ。


(町もそうだけど、変な豪華さとかはないな)


「ここです。 王の間、少しお待ちください」


 そういうとリオネは巨大な扉から中へとはいっていった。


 しばらくして、扉がおおきくあいた。


「こちらに」


 扉から一人の人狼がでてきて中へと招いた。


 私が進み出ると、奥に玉座に座る大きな人狼がいた。


(王か、あれ?)


 そのそばにはドレス姿のリオネがいた。


(そうか......)


「そなたがケイどのか」


「はい、王」


「私は人狼族の王、【ガルギア】と申す。 それで協力してくれるという話だが」


「はい、ですが、現在の状況を王からお伺いしたいのです」


「ふむ、わかった。 現在、我が国は危機に瀕している。 それはモンスターの存在だ」


「それはお聞きしました。 兵を分割できない理由があると......」


「うむ、ここは立地もよく大地も豊かだ。 ゆえに常に他種族から狙われている。 特に西の湿地帯にすむリザードマンとは対立している。 そしてモンスターの出現、この二つの問題が起こり、兵の分割ができぬ状況だ」


「なるほど、それでリオネが......」 


「そうです。 私は助けてくれるものを探して旅をしていたのです」


 そうリオネがいう。


「......まったく、勝手に城を抜け出したと思ったら、そんなことを...... そなたは王女という身分を理解しておるのか」


「しかし、父上、このままではこの国が滅びかねません。 モンスターにじりじりと押されて、兵を差し向けたら、リザードマンから攻められましょう。 王女ならばこそ動かなければならない」


「ふむ、まあな......」


 納得はしていないようだが王は渋々そういった。


「それでケイどの。 ゴブリン族が協力してくれるとのこと、本当か」


「ええ、族長が高齢の代わりに私が参ったしだい。 彼らは百名前後の兵をだしてくれるそうです」


「百か...... それだけあれば、あのモンスターも倒せるやも。 しかしゴブリン族になんの得があろう」


「ゴブリン族は他種族との友好的な交流を希望しています」


「ゴブリンが」


「はい、先程お話したように、彼らはもはや我らの知るゴブリンではございません。 必ず役に立ってくれるでしょう」


 そうリオネがいうと、王はうなづいた。


「わかった。 必ず功に報いようぞ。 あのモンスターを倒していただきたい」


「わかりました。 そのモンスターの情報をお教えいただきたい」


 私はその情報をえて、部屋をあとにした。



「お待たせしました。 では、ゴブリンと合流しましょう」


 そう服を着替えてきたリオネがいう。


「王女さまだったのですね。 リオネさま」 


「リオネでかまいません」


「おい! 人間」


 そう声がしたほうをみると、黒い人狼がこちらに歩いてくる。


「失礼ですよ! ハウザー!」


「これは王女さま。 しかし、人間や蛮族のゴブリンなどに力を借りてかまわぬのですか。 我らは誇り高き人狼だ」


「今は危機がせまっております。 それに彼らは蛮族などではありません」


「ふん、そうですか。 それならば全滅しないようせいぜいご健闘を......」


 そう皮肉をいいながらハウザーは去っていった。


「とんだ失礼を」


「何者です」


「我がいとこで父の兄、前王の子息です。 本来彼が王位を継ぐ予定だったのですが、その横暴さゆえ前王が我が父に王位を譲ったのです」


「なるほど、先見の明があるのですね」


「ええ、さきほど王は兵を動かせない旨を伝えましたが、もうひとつ、あのものが関わっているからです」


「王位を奪い取ろうとする...... と」


「可能性はあります。 ハウザーは裏の組織との繋がりもあると噂されていますから......」


(なるほどな、それで兵を簡単には動かせないわけだ。 もしかしてあのローブのものたち、ハウザーの手の者だったのか。 亜人種族も人間も権力が関わるとかわらないな)


 私たちはゴブリンたちのもとにむかった。

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