第五話「炎の知恵と黒曜石」

(冬を何とかやり過ごすことができたが、それでも子供たちは酷しかっただろう。 家もそうだが、更に次の冬のために、対策が必要だな)


「でも、まずは冒険者ギルドだ......」


 冒険者ギルドで受けた依頼をゴブリンたちに伝える。


「班をわけましょう。 十人ずつ行動してください。 四人は前後左右の偵察、もしモンスターにあったら勝てると思っても戦わないでください。 依頼をこなせば食べ物が手にはいりますから、危険をおかす必要はありません」


「オオ!」


 ゴブリンたちを班ごとにわけ、それぞれに鉱物、キノコ、そして薬草班へと振り分けた。


(こうすれば複数の依頼をこなせる。 私もついていって覚えた事をメモしておこう)


 ひとつの班について森をすすむ。



 森を探索する。 さすがにゴブリンたちは険しい森をすいすいとすすんでいく。


(すごいな。 暮らしているからか、そもそも身体能力が高いのか)


「周囲に危険が迫ったら教えてください」


「ワカッタ」


 前後左右のゴブリンが答えた。


(ゴブリンの武器は買ってきたナイフのような短剣と弓だ。 大きな剣は使いづらいと私がもってる)


 どうやらなにか魔法とやらがかかっていて、軽くふることはできた。 


「とはいえ、剣なんて使ったことがない。 なるだけ、モンスターに出会わないようにしないと」


 私たちの班は鉱物を探す。 ゴブリンたちは金属ではなく黒いガラス状の石、おそらく黒曜石を使っていた。 


(割れやすいが鋭いガラス性質をもつ、矢じりやナイフなんかに使ってたな。 製鉄は無理かな...... もし、人間たちに襲われたらどうしよう。 考えないとな......)


 そう思いながら、地形や目印を着けた木の場所をメモする。


「アッタ!」


 そういったゴブリンに近づくと、黒曜石の岩石がある。


「ここか、ここから採掘したのか。 黒曜石は鉱物じゃなく準鉱物だけど、この世界では鉱物扱いだ」


(黒曜石は火山のマグマによってできる。 ビケルさんはここら辺に火山があるとはいってなかったから、休火山なんだろう)


「コレトル?」


「ええ、どうやら武器とかじゃなく、装飾品として必要らしいです。 採掘していきましょう。 ほかにも鉱物、宝石などがあれば教えてください」


 黒曜石を背中のかごにいれる。


「クル!!」


 後方の偵察のゴブリンが声をあげた。


 皆がこわばる。


(モンスターか...... とにかく逃げないと)


 合図をして逆方向に下がる。


 茂みから人の形をした木が動いている。


「トレント......」


 ゴブリンがそうつぶやく。


(トレント...... 確か本にのっていた。 木のモンスターだと、もしかしたら会話ができるか......)


 トレントがこちらを向くと、近づいてくる。


「あ、あの」


「ガガガガッ!」


(会話は無理か...... それに強い敵意を感じる)


「みなさん! あれでいきます!」


 皆に号令をかける。 全員が密集して、鉄の盾を私を含む前の三人で目の前にたてた。


「カガガガッ!」


 そうトレントが発すると、なにかが盾に連続して当たる。 隙間から見るとそれは葉っぱのようだった。


(これが葉っぱか! かなりの威力だ! 後ろにある木に刺さっている)


「隙をついて弓で攻撃をお願いします!」


「オオ!」


 ゴブリンたちが後方から弓をはなつ、正確にトレントの体に矢がささる。

怯まずトレントはその長い枝のように腕を振り下ろした。


 バチッ!


(ぐっ!...... この腕、遠心力で鞭みたいだ!)


「耐えて! 弓で攻撃を!!」 

 

 幾度もの矢がトレントに刺さり、トレントの動きが鈍くなる。


「よし!!」


(もういいはずだ!)


 私は盾を代わってもらい、懐から出した先端を何重にも細く削った木をだし、鋭利な黒曜石同士を打ち付け火をつけた。


(これで! ゴブリンたちは火を起こしてる! 私も教わったんだ! よし!)


 火のついた木の棒をトレントに投げつける。


「ガアアアア!!」

   

 木の棒がトレントに当たると体中に炎がまとわりつくようにつき、燃え盛る。


(さすがにモンスターといえど木だから炎には弱いはず)


 トレントは悶えると倒れそのまま燃えた。

  

 ゴブリンたちが喜んでいる。


「ふぅ......」


(なんとかなったけど、対策が必要だな)

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