最終回 クリスマス
唇にやわらかい感触を感じて自分が夢を見ていたことに気付く。
高校生活とかなつかしいな、私ももう大学三年生だもんな。
ゆっくり目を開くと小悪魔的な笑顔をして私を見つめる
確か一緒に映画を見ていたような...
「急にキスなんてしてどうしたの?」
「
付き合ってからもう5年以上も経っているのに陽菜は変わらず心配性だ。
なんで名指しで明美ちゃんなのかというと先週ふたりでショッピングに行ったからだ。明美ちゃんに恋人へのクリスマスプレゼント選びを手伝って欲しいと言われたので陽菜へのプレゼントを買うついでに一緒に買いに行っただけなのに、30分ごとにメールが来るし、家に帰ると号泣して抱きついてきたので他の子とふたりきりでどこかに行くのはやめようと心から思った。
「そんなことしてないよ、私は高一のときから陽菜一筋だからね」
「じゃあどんな夢見てたのさ、答えてよ...」
「教えな~い」
「もう私すねたから!今日のデートはなし!明美ちゃんとデートでもしてきたらいいんじゃない?」
正直に『高校のときの夢見てたんだよ』って言ってもよかったけど、すねる陽菜を見たくてつい意地悪をしてしまった。陽菜はソファにぽすんと腰掛けて、クマのぬいぐるみを抱きしめている。クマの顔がだんだんゆがんでいく。さすがにやり過ぎちゃったかもしれない...
「ごめんね陽菜、すねる陽菜を見たくてつい意地悪しちゃったんだ。高校のときの夢見てたんだよ」
「ほんとに?別に明美ちゃんのこと気になってるならデート行ってきてもいいんだよ?」
陽菜の横に座り真実を伝えると、唇をとがらせた陽菜が目を合わせずに答える、すねてるところもかわいいのずるいよ。
「ほんとだよ、心配させるようなことしてごめんね。もうデートの気分じゃなかったら今日はお家にいよっか、ケーキ食べたかったら私が買ってくるし。」
「怜は浮気なんかしないってわかってるけどさ、優しいから相手の子に言い寄られたらなんでもしちゃいそうじゃん!」
否定できない...
私たちの間に沈黙が流れる
「否定してよ!」
さっきまでの暗い雰囲気を陽菜の笑顔が消し去る。
「ごめんごめん、私が愛してるのは陽菜だけだよ」
「それでいいんだよ、デート行くよ!支度して!」
陽菜はうんうんと頷いてから勢いよく立ち上がる。
「私もう準備できたよ~」
30分ほど経ったころ、陽菜が頭にニット帽を乗せて部屋からぴょこりと顔を出す。
大学生になっても小動物なのは変わらないんだよな~陽菜は身長低いのがかわいいみたいなところはある。
「それじゃ行こっか」
コートのポケットにクリスマスプレゼントの指輪を忍ばせてから陽菜の手を握る、もちろん恋人つなぎだ。
「今日の怜もほんとにかっこいいね~」
家を出ると陽菜がやさしく体当たりしてくる。毎日言われているような気がするけれど何回言われても嬉しい。
クリスマスのイルミネーションがされている通りを陽菜とふたりで歩いていく。
人生なにがあるかなんて誰にもわからない、未来なんて予想できるものじゃない。だけど今を大切に生きればいい、立ち止まってもいいから生きてさえいればいい。
今を積み重ねた未来はきっと美しいものになる。
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