優しい光の先へ
ゆたかひろ
01 戦果なき戦い
このお話はフィクションです。現実世界の何とも符合いたしません。
安紀十四年八月二十五日
その日、朝八時からの勤務シフトになっている鶴岡中尉は、いつも通りシフトの十分前に指令所に入って行った。同じ八時からのシフトになっている部下はまだ誰もいない。指令所の中には三交代シフトで零時からの勤務についていた者たちが、けだるそうに眠たげな顔を何とか各々の前のモニターに向けている。
戸口から入って右側は、一枚でミニシアターのスクリーンに相当するような大型の縁なしモニターが、タテ三段、ヨコ四列で並び、壁面のほとんどを埋めている。左側は学校の階段教室のようになっていて、一段上がったところにはブースが五か所、壁面モニターの方を向いて並んでいる。そしてその各々にはさっきも言った眠そうな隊員たちが席に着いている。各ブースには二名分の席があるが、平時の配置では各所一名のみ。なので今はレーダーブース二か所にレーダー員一名ずつ二名、兵器管制ブース二か所に兵器管制員一名ずつ二名、通信ブースに通信員一名の計五名だ。
もう一段上がった二段目にはブースが四か所。三交代勤務を四班でこなしており、班長が四人いる。その四人の班長の専用席だ。専用席である必要はないようにも思うが、有事の際は班長が四人とも揃うこともあるのでその為と言うことらしい。
そしてもう一段、三段目にはブースが二つ。一つは基地司令の席。もう一つは、空きだ。予備なのか? 今はどちらも空席だ。そのブースの後ろにはちょっとしたスペースがあり、ミーティングテーブルがある。
鶴岡中尉は四人の班長の一人。なので二段目に上がっていく。途中の一段目で、おはようございます等、席に着いた隊員たちが挨拶してくる。それらに軽く手を上げ応えながら二段目に上がると、手前のブースに零時からのシフトの班長、相原少尉がいた。さすがに眠そうな顔はしていない。
「ご苦労様です」
座ったまま鶴岡中尉の顔を見て相原少尉が挨拶をする。相手は上官だが、こんな日常勤務でいちいち立ち上がって敬礼などしない。
「おはよう」
挨拶を返しながら相原少尉の席の後ろを通り、隣の自分のブースに向かう鶴岡中尉。いつも携帯している自分専用のタブレット端末をデスクに置き、席に着きながら相原少尉に声を掛ける。
「変わったことは?」
「特には」
「まだ増えてるか?」
「少し増えたようです」
増えた、とは?
ここは本城国東部の東園地方にある基地である。東園地方は百以上の島で成り立っている。本城国本土に一番近い西の端に、東西約百二十キロ、南北約三十キロの東園島があり、東園地方の東西の中ほどに東園島とほとんど同じ大きさの大山島。そして最東端の島から四つ目に、北西から南東へ約六十キロの細長い形の月見島がある。月見島の東にある三つの小島は無人島である。最東端の島から東園島までは約千二百キロ。その間には先に述べた通り百以上の島があり、今話した三つの大きな島以外に、二十キロから四十キロ程の島が十五ある。他は十キロに満たないような島である。そして半分以上が無人島だ。
この基地は月見島にある監視基地である。有人基地としては本城国の最東端になる。最東端の基地は最東端の沖ノ沖島にある無人のレーダー基地である。
大山島以東の島々は東部諸島と呼ばれることもあるが、最東端の沖ノ沖島の東、約二百キロ離れたところにある島から東にある島々は、西部諸島と呼ばれている。東にあってなぜ西部なのか。それは東西約二百キロに連なる西部諸島の先にあるナシ国の西部の群島であるからだ。
ナシ国は北極圏から赤道近くまで広がるアン大陸の西側から大陸の半分以上を支配している大国。そして大昔と言えるほどの昔から、本城国へ何度も侵攻してきている。実際のところ大山島とそこからほど近い範囲の東側の島々は、間違いなく古代から本城国の領土であるが、東部諸島、西部諸島の島々は何度も領有権が行ったり来たりしている。現在の領有権は百年ほど前の大戦終了時に決まったものであるが、ナシ国はその後も何度か、侵攻とまでは呼べない、嫌がらせのような軍事行動をとっている。と言っても、本城国の対応にスキがあれば、一つでも二つでも島を取ってやる、と言う姿勢はハッキリ分かる行動ではあるが。なにしろナシ国の主張は、大山島までは本来、我が国の領土である、だから。
そう言う背景のもとに東を警戒監視しているのが月見島監視基地である。まあ、平和な時代が長く続いているので、常に危機感を持って、と言うような緊張はなくなり勝ちになってしまってはいるようだが。
話を戻して先程の、増えた、であるが、それは船の数である。本城国は人工衛星でナシ国の西岸、西部諸島をしっかり監視している。その人工衛星の画像で、ナシ国西岸都市の港や、西部諸島の島々の港に異常な数の船が集まっているのである。一週間ほど前から増え始め、その数は数千になっている。ただ、この時期は毎年のようにこう言うことが起こっている。
集まっているのは軍艦ではなく漁船である。そして九月になる頃から大挙して出港、そして本城国の東部諸島の南の公海水域でイワシやサンマなどを根こそぎ獲っていくのである。イワシなどだけではなく、それらを狙って集まってくるハマチやマグロなども獲っていく。東部諸島の漁師たちにとっては迷惑な話だが、公海上ではそうそう文句も言えず、取ったもの勝ちで競争するしかない。その競争に勝つために、毎年数千隻もの船団で押し寄せてくるのであろうけど。
と言うわけで、鶴岡中尉もそんなに危機感を持って問いかけたわけではなかった。
「そうか」
なのでそう言っただけで腰を落ち着け、自分のデスクの端末を操作して、東部監視隊本部からの通知がないかチェックし始めた。
鶴岡中尉の班員達が指令所に入って来て騒がしくなった。レーダー員の茂川兵長が担当のレーダーブースに着きながら、
「変わりねえか?」
と、同じ配置の前シフトの山本隊員に声を掛けている。ちなみに自分の上官である鶴岡中尉には、指令所に入る前に挨拶が済んでいるので小さく礼をしただけである。それは他の隊員も同じ。
「ええ」
「そうか。それにしても毎年これだけよく集まってくるよな。こいつら普段どこにいるんだ?」
「さあ? どこから湧いてくるんですかね」
「ほんとだよな」
茂川兵長はそう返しながら、デスクにあるモニターに映っている画面を見た。そして、
「なんだこれ?」
と口から漏らす。山本隊員もその画面を見て、
「ああ、すごいっすよねそこ、埋め立て地が増えたのかと思いましたよ」
と言う。
「すごいって、いつからだ。前の勤務じゃこんなの見てねえぞ」
茂川兵長はそう言いながらモニターを切り替えて、衛星監視している港の画像を順番に手早くチェックし始めた。そして一通りチェックし終えると、忙しく手を動かしてキーボードを叩き、マウスを操作する。
「これ、お前おかしいと思わなかったのか」
と言いながら。
何かミスしたのかと、少し顔色を失くしながら口を開きかけた山本隊員を無視して、茂川兵長は振り返って後ろに声を掛ける。
「中尉、前見てください」
鶴岡中尉はその声を聞いて壁面モニターに目を向ける。壁いっぱいの壁面モニターには小さな画面に分けて、ナシ国西部の数十か所の港の衛星写真が映っていたが、今はやや大きめの画面に変えて、茂川兵長がピックアップした二十ほどの港の画像が映っていた。そしてある港はモニター一つを使って大きく映し出されていた。
その画像では、百隻くらいの漁船が舷側をぴったりつけて列になって並んでいるのだが、その列が四列もある。ぱっと見には四角い埋め立て地が出来たように見えるくらいである。
「これ、異常ですよね。ここが一番多いようですけど、似たようなところがこれだけありますよ」
鶴岡中尉が一番大きく映してある画像を見ているのを見て、茂川兵長がそう言う。
「……いつの間に。……茂川、画像解析プログラムを使っていい、監視対象の港の最新画像で、写っている船がほんとに漁船か確認。で、漁船でも何でもいい、数を数えさせろ。あと、マーキングしてある以外の軍艦や沿岸警備隊の船が混ざってないかも探させろ。あっ、マーキングしてあるのはロストしてないか確認だ」
「了解」
茂川兵長の返事を聞いて、鶴岡中尉はもう一人のレーダー員にも指示を出す。
「久保、衛星で西岸沿海を全て再チェック。集結地に向かって来てる船があとどのくらいいるか探せ」
「了解」
そして鶴岡中尉はまだ続けて指示を出す。
「坂本、近海の潜水艦を探せ。航空隊に連絡してヘリも出させろ。いたら必ず見つけろ」
「わ、分かりました」
兵器管制員の坂本軍曹が応える。索敵は本来レーダー員の仕事なもんだからこんな返事になったようだ。
「柴、本部に連絡、早期警戒機が何か捉えてないか確認してくれ」
「了解」
通信員の柴隊員にも指示を出した。
指示を出し終えて鶴岡中尉は自分のデスクの端末を操作。デスクのモニターで改めて衛星画像をチェックし始めた。すると、
「確かに多いようですけど、そこまで大事ですか?」
と、相原少尉がイスごと傍に寄って来てそう言った。
「これ見て何も感じないのか?」
画面を見たまま厳しい声で問い返す。
「いや……」
何やってたんだ、と言う目で一瞬相原少尉を睨んだ後、再び画面に目を戻し、次々と他の港の画像を確認しながら鶴岡中尉が言う。
「さっき茂川が出した画像、あれだけで一万近くいるぞ、多分」
「い、一万? そんなに写ってました?」
鶴岡中尉は言葉を返さなかった。すると相原少尉が言い訳がましくこう言う。
「あ~、この夏、ナシ国は大雨や嵐やらで穀倉地帯がかなりやられたって言うじゃないですか。それで食糧難になるとかって。それで、その補填に漁船をありったけかき集めて来たんじゃないですか?」
鶴岡中尉がまた一瞬相原少尉を見た。
「そんな呑気な話ならいいけどな」
そしてそう言う。
「はあ」
鶴岡中尉が自分の前の画面に、さっき全面スクリーンに大写しで出された画像を再び出した。
「これを見ろ」
そう言われて相原少尉が身を乗り出す。
「ここだけで四、五百隻はいる。さっきここよりは少な目だが似たような港が二十映されてた。と言うことは、さっき映っていただけで七、八千隻以上はいる可能性がある。そして船が集まって来てる港は他にもある。それも足すと一万くらいはいるだろ。それらの何割かでも偽装船が混じってて、南の漁場に行くと見せかけてそのまま西に、こっちに来たらどうする?」
「……」
「例年、漁場へ行くナシ国の漁船は三千隻程度だ。今一万隻いるとして、七千隻が偽装船だったらどうする? 向こうの領海を出たらもう目と鼻の先だぞ。どうにも出来んぞ」
「そんな大げさな」
「大げさか?」
「いえ、仮にそうでも漁船なら、いえ、偽装船だとしても漁船程度の大きさの船ならなんとでも出来ますよ」
「七千隻は無理だ」
「……そうですか?」
「なんとかって、撃沈するつもりか?」
「……」
「まあ、それも無理だな、七千は」
「はあ」
「俺が無理だって言うのは手が出せないってことだ」
「どう言うことですか?」
疲れた顔でしばし黙ってから鶴岡中尉が続ける。
「漁船に偽装しているなら、武装がある、兵員が乗っている、そう言うことが確認できるまで手が出せない。漁船にしか見えない船を攻撃するわけにいかないだろ。領海侵犯で島に近付いてくる奴を止めて臨検するしかない。そんなこと、何千隻も相手に出来るか?」
「……じゃあどうするんですか?」
「今調べさせてる詳しい状況が分かったら、司令に報告して本部に警報を出してもらう」
「えっ?」
と、相原少尉が驚いたところで前から声が来た。
「中尉、早期警戒機、異常なしとのこと」
柴隊員であった。
「了解」
続けてまた声が上がる。
「中尉、チタオ軍港内及び周辺海面、マーキングしてあるナシ国海軍艦、全て確認できます。停泊状況、動き、通常と変わりなし。ハイシャ軍港内、空母二隻、ヘリ母艦二隻、ともに停泊中。マーキングしてある艦も全て確認。通常通りです。ただし、港内に三隻増えてます。データベース内の情報だと、防空ミサイル艦破型二隻と、檄型汎用ミサイル艦です。おそらく南のコンホ軍港所属の艦です」
今度は茂川兵長の報告だった。チタオ軍港は月見島から一番近いところにあるナシ国の港。ハイシャ軍港は西岸沿いに少し南下したところで、月見島からの対地、対艦ミサイルが届かない九百キロ離れたところにある港。コンホ軍港は西岸沿い更に南に二千キロほどの所にある港。
「破型、最新鋭艦か、元々西部にいる路型と連携されたら厄介だな、分かった、続けてくれ」
路型、破型と言うのはナシ国海軍の、防空を主任務とするミサイル駆逐艦である。しかしこの型の本当の力は探査、索敵能力の高さだ。その能力は空だけではなく、海上、海中にも及ぶ。そして個々の艦の能力自体も十分高い上に、艦同士が連携して、広範囲の防御エリアを構築するシステムを持っていることだ。そう言うシステムは本城国を含め、いくつかの国も持っているが、破型の登場でナシ国の物はワンランク上になったと言われている。
最新鋭の破型は、そのシステム運用能力が強化され、システムにつながった僚艦の火器管制システムを一元制御するようになっていると言われている。つまり、破型に搭載された高性能コンピューターにて一番効率の良い目標選定を行い、一番効率の良いところにいる僚艦の火器管制システムを制御し、攻撃を行わせる。同時に追尾し攻撃できる目標数は、システムにつながっている僚艦の数に比例して増える。破型は八つの目標まで同時追尾可能だと言われるが、システム内に六つの目標追尾が可能な僚艦が十隻あれば、合計六十八の目標を同時に攻撃できると言うものである。それは破型で一元制御されているので、攻撃の順番やタイミング、方法など、すべて一番効率が良いと判断される状態で行われる。システム内で連携しているとはいえ、個々の艦で攻撃を判断して実施するより、二十パーセント以上の高効率になるという。迎撃能力が二十パーセントも上がると言うのはすごいことである。
「了解」
茂川兵長の返事を聞いてから相原少尉が口を開く。
「警報って、どうするんですか?」
鶴岡中尉は相原少尉の方を向いた。
「陸、海、空、三軍の急派を願う、出来るだけ多く」
「……」
「俺が七千隻の漁船を使って侵攻作戦をやれって言われたら、陸兵と装備を外から見えないように載せれるだけ載せて、漁船だって顔をしたまま黙って港に、いや、浜に乗り上げる。そして一気に陸兵を展開。軍隊がいる島は対応する暇を与えずにまず敵軍を制圧。敵軍のレーダーやらミサイル発射機を無力化。その後住民を監視下に置いて人質にする。そして堂々と進んでこれる後続の艦船や空母機の到着を待つ。さっきの画像からすると、漁船に大小はあるが、大きい船で百人、小さい船でも二十人は乗れる。平均五十人だとしたら、三十五万人動員できる……、三十五万、今のこっちの配備状況だと、航空基地のある岩垣島を含めて、大山までの間の半分の島はすぐに制圧できるぞ。まずい、まずいな」
岩垣島は月見島から西南西方向に二百キロほどの所にある。本城国最東端の空軍基地がある。
「まさかそんな……」
相原少尉が呆れたように呟く。
「空騒ぎで終わるならそれでいいんだ。しかし最悪のことにならんように出来ることはしないといかん」
「……」
「いや、とにかく司令だ、司令に報告。誰か石井司令を探してくれ」
鶴岡中尉は、暇そうに一段前からこちらを見上げて聞いていた、相原少尉の部下にそう呼び掛けた。八時から勤務のはずの基地司令、石井少佐はまだ指令所に顔を出していなかった。
石井司令は探すまでもなくすぐに顔を出した。そして分かっていることだけで、石井、鶴岡、相原の三者で会議となる。その途中、画像解析の結果、どの船も漁船だと判別され、総数は一万六百隻あまり。そして現在漁船団が集結している海域に接近中の、同様の漁船はそんなに見当たらず、平常運行中かも知れないものも含めて二百隻足らず。と報告があった。
鶴岡中尉が心配する通り、侵攻作戦があるのだとしたら、すでに使用する船は集結を終えていると判断出来る。そうなると作戦開始は間近かも知れない。約一万隻全てが作戦に利用されるとして、鶴岡の推測通りであれば五十万の兵力となる。半信半疑ながらも石井少佐は、大山島の東部警戒隊本部に通信を繋いだ。ビデオ会議に出た東部警戒隊指令、西村少将は、本部では昨日から異常だと判断し、分析中であったと言う。そして鶴岡中尉の推測に頷き警報を即、発するとした。本土に応援要請をするとともに、大山島に停泊中の駆逐艦、巡洋艦をすぐに、岩垣島、月見島方面に進出させる。海上警備隊の巡視船も向かわせる。そして大山島駐留の海兵師団の出撃準備が出来次第、強襲揚陸艦で出撃。空母の派遣も実施するとの話となった。
その会議が終わり、警戒監視は厳にしながらも落ち着いた頃、落ち着けない事態となった。ナシ国の漁船団が出港し始めたのだ。お昼頃のことであった。
人工衛星、早期警戒機で行方を追うこと数時間。船団は二つに別れ、二千隻ほどは出港したがナシ国西部諸島の中部海域で留まっている。残りの八千隻ほどは西部諸島の南方寄りの航路で西進中。速度はおおよそ十六ノット(時速約三十キロ)。西進してきてはいるが、この航路は本城国東園地方から南下したところにある漁場に向かう時の航路でもある。判断が難しくなった。先発した艦は東部諸島南部にある岩垣島周辺に向かうこととし、岩垣島の航空隊は領空内で厳重パトロールを始めた。
南方航路を西進中のナシ国漁船団は、自国領海を出る辺りから若干西側が先細りの東西に長蛇の列となった。先頭が速度を上げたのではなく、先頭集団以外が減速したようだ。そしてここからは不信感を強めなくてはならないことになった。それは、南方の漁場に向かうのであれば、通常は南西方向に進路を変えるはずであるのに、西進し続けているのである。あやしい。しかし、公海上なので何もできない。そして日没となった。
明らかに漁船の動きではないと判断された。それは航海灯を含め、全ての明かりを消して航行しているのだ。衛星の通常画像では捉え難くなり、赤外線画像と、早期警戒機からのレーダー探知データでの追跡となった。
安紀十四年八月二十六日
深夜日付が変わった頃、動きが変わった。西進中の船団は東西に並んだ三つの船団になっていた。その三つの船団が一斉に北進に変わった。つまり、本城国東園地方の東部諸島に向かい始めたのだ。しかも速度を四十ノット(時速約七十四キロ)以上に上げて。間違いなく偽装船だ。こんな高速を出せる漁船など存在しない。そして同時に、西部諸島中部に留まっていた約二千隻の船団が、やはり四十ノット以上の速度で西進し始めた。
緊急事態である。進路から予想すると、最西部の船団は球磨島に向かっている。球磨島には月見島と同様のレーダーと対空、対艦ミサイル基地がある。そして二番目の船団は岩垣島に向かっている。この船団の隻数が一番多く、約四千隻いる。三番目の船団は二番目の船団より少しだけ東寄りの進路。岩垣島の東方にある最大長二十五キロある初釣島ではなく、岩垣島から北北東の方向で東部諸島北部に位置する緑川島に向かっているようだ。初釣島は一大リゾート地で都市がある。沢山の住民が住んでいるし空港もあるが、軍は配備されていない。一方緑川島は、やはりレーダー、ミサイルの基地がある。そして最後の船団は月見島に向かっているのは明らかであった。
緑川島に向かっているであろう船団以外は、現在の速度なら数時間で各目的の島に到達してしまう。見事だ、到着時間をほぼ同時にする動きだ。一刻の猶予もならない。本城国側は各船団が自国領海に入る手前から警告を発し続けた。球磨島、岩垣島に向かう船団の前には、急行してきた軍艦、巡視船が立ち塞がった。しかし止められるはずもなくすり抜けられてしまう。しかし止めるのが目的ではなかった。各艦、各船は目星を付けた船に肉薄し、高精細の画像を撮っていった。そしてその画像にて漁船ではない、侵攻目的を持った偽装船である証拠を見つけようとした。証拠が見つかれば攻撃することも可能となる。しかし、至近距離からの百隻以上の高精細画像を大至急で分析したが、やはり漁船としか判断できないものであった。
侵攻目的である、と分かり切っているのに手が出せない。接岸し、船から兵隊が出てくれば攻撃できるがそれでは遅い。地上軍の配備は間に合っていない。各島の基地に陸戦配備されている数は知れている。月見島を例に挙げると、自動小銃と軽機関銃、ライフル装備の陸軍警備隊一中隊百二十名ほどしかいない。重装甲車すら配備されていない。そもそも、隠密で上陸してくる破壊工作部隊程度しか相手に想定していないのだ。平時配備では、大規模な上陸作戦に対抗することなど考えていないのである。ただ、岩垣島だけは別で、月見島のような基地が万一それ相応の規模の敵に襲撃された場合に急派する応援部隊として、海兵隊一大隊、空挺部隊一大隊が配備されている。しかし合わせても約千人ほど。何ともなりはしないであろう。この敵の数からすると、岩垣島を守ることも出来ないと思われる。
向かってくるナシ国の漁船団に、本当に数十万などと言う人員が乗っていたとしたら、戦うこと自体が無意味なのだ。対抗できるはずがない。対抗しようと思えば、こちらも数十万規模の動員が必要だ。そんな大量動員、一か月や二か月は準備期間が必要である。逆に言えば、ナシ国は何か月も前から準備していたのであろう。それを察知できなかった時点で負けているのである。
月見島方面に向かってくるナシ国の船団は自国領海を出た。と言うことは、すでに本城国の領海内にいると言うことである。そこはお互いの最端部の島と島の間が二百キロほどしかないので、その中間までがお互いの領海なのだから当然だ。
西部を北進中の三つの船団の内、東側の船団二つもそろそろ本城国の領海内に入る頃だ。最西部を北進中で球磨島方面に向かっている船団は、とっくに本城国の領海内を進んでいる。球磨島の南方には島がいくつかあるので、その分領海も南に膨らんでいるからであろう。
おそらく緑川島方面に向かっている船団以外は、各船団が主目標としている島へ同時刻に到着するであろう。到着予想時間は日の出の少し前頃である。
月見島基地の指令所内は空気までピリピリしているようであった。もうはっきり敵だと判断している大部隊が迫って来ていると言うのに、大山島の東部警戒隊本部から何の指示もないからだ。当然応援部隊も来ていないし、向かっていると言う話もない。岩垣島から戦闘機は飛んできたが六機のみ。敵船団に向って行き、警告を発しながら監視しているだけだ。
「沖の沖島北方を船団が通過中」
レーダー員の茂川兵長がモニターを見ながら報告した。
「了解」
自身もモニターを見ていたので分かっていることだが、鶴岡中尉が応えた。そして沈黙。イライラした空気が漂う。が、数分もしないうちに口を開く者が出た。
「攻撃命令はまだですか」
鶴岡中尉の方を振り返ってそう言ったのは坂本軍曹だ。
「ああ」
鶴岡中尉は坂本軍曹の方を見ずにそう返す。
「早く攻撃しないと」
「……」
「なんで攻撃できないんですか」
坂本軍曹の言葉に続き、
「そうだ」
「手遅れになるぞ」
と言った声が続く。元々のシフトでこの時間の勤務になっているキム中尉の班員だ。ちなみにキム中尉はこの基地の司令、石井少佐の次席、副長である。鶴岡中尉の班は戦時配置でキム班と一緒に勤務についている。そう、今は戦時扱いなので勤務は二班で行う。
不満の声にキム中尉が応えた。
「攻撃しても無駄だろ」
何人かがモニターから目を離して、振り返ってキム中尉を見る。
「目を離すな」
そんな者たちにキム中尉が注意を与えた。モニターに向き直った一人が振り返らずに質問する。
「なぜ無駄なんですか?」
キム中尉は答える。
「こっちに向かってくる船だけで千九百十三隻。ここのミサイルじゃ足らんだろ」
「……」
「仮に足りるだけあったとしても、今からじゃ時間が全然足らん」
「そんな……」
キム中尉の言葉に誰かが呟くようにそう言った。そしてそれに続いてこう声が上がる。
「じゃあどうなるんですか? 本部はどうするつもりなんですか?」
その声にキム中尉は、
「さあ、分からん」
と言うだけであった。そして右隣に振った。
「鶴岡中尉はどう思う?」
振られた鶴岡中尉は答えを用意していたかのように答えた。
「おそらくどう占領されるべきかを検討しているのでしょう」
その言葉に半分くらいの者たちが振り返った。そして中の一人が、
「占領って」
と口にする。
「こら、集中しろ」
と鶴岡中尉。全員が向き直るのを見て鶴岡中尉は続ける。
「警告を無視してこちらの領海に大船団で向かってきている。いや、すでに領海を犯されている。これは明らかに、この時点で侵攻だと判断できる。しかし何度も話に出ている様に、非武装船としか確認できていない以上、攻撃しないと言う方針だ。故に、向かって来ている船団が港に接舷したり、浜に乗り上げたりした後、出て来た者が武装していると確認出来るまでは手を出さない、と言うのが本部の考えだ」
「そんな、それからじゃ手遅れ……」
そう上がった声を遮って鶴岡中尉が続ける。
「そうだ、本当に想定される戦力で上陸されたら、東部警戒隊の全兵力が上陸地点に配置されていても撃退は無理だ」
しばし沈黙となった。
「だから占領されるんですか」
誰かが言った。
「ああ」
鶴岡中尉は簡単に返す。
「そんな」
と言う誰かの声に続いて、
「一発も撃たずにですか」
と、キム班のレーダー員、岸田隊員が不満気な声で尋ねる。
「だからそれを検討中なんだと思う」
「どういうことですか?」
「戦闘をするかどうか」
「……」
「敵わないと承知でも、上陸した者が武装していたら攻撃するのかどうか。攻撃すると決定したら、陸戦だけでなく上陸中の敵船、未だ航行中の敵船に区別なく、撃てるだけのミサイルを撃てと言ってくるだろうな」
「……」
「ただし、さっきも言ったように撃退は出来ない。こちらが攻撃したら向こうは遠慮なく反撃してくる。大反撃だ。我々はただでは済まないだろうな」
静かな沈黙となった。
話を聞きながらモニターのレーダー画面を見ていた茂川兵長が、その沈黙の中口を開く。
「あれ……、鶴岡中尉、敵船二隻足が止まりました」
「……」
鶴岡中尉、キム中尉の二人も自分の前のモニターに目をやる。
「沖の沖島北西二キロ地点です」
茂川兵長が続けて報告する。敵船団を示す点の集合体は東西に伸びた塊になって映っていて、沖の沖島よりもはるかに大きい。その塊は既に沖の沖島より西に動いているが、その最後尾から少し離れて小さな点が映っている。そこを拡大すると点は二つあり、確かに沖の沖島の北西岸から少し離れたところであった。
「了解」
鶴岡中尉はそう応えたが、それが敵の意図した行動なのか判断しかねていた。沖の沖島はレーダー施設はあるが無人である。一隻故障して、もう一隻はその救助か? 一瞬そう思ったが、あることを思いついて茂川兵長に指示を出す。
「茂川、他の三方面の敵船団にも同じようなことがないか確認してくれ」
「了解」
すぐに返事が来た。キム中尉がどういうことか尋ねようとするが、先に通信担当の柴中尉から声が来る。
「本部から通信、司令宛ですがどうします?」
そろそろ戻ってくる頃だが、石井少佐は三時間の休憩中であった。
「私が出る」
キム中尉がそう言って話を始めた。
キム中尉が本部と通話を始めてすぐ、茂川兵長が報告する。
「鶴岡中尉、球磨島に向かって北進中の敵船団でも、長良島付近で二隻止まっています。岩垣島に向かっている船団では、四隻が離れています。二隻は北西に向かい、太良島へ、二隻は北東の小治島に向かっています。あと、緑川島に向かっている船団からは二百六十二隻が分離して、初釣島方面へ向かっていると思われます」
「やはりな」
鶴岡中尉はそう言う。
「どういうことですか?」
茂川兵長が画面を見たまま尋ねた。
「分からんか? 二隻組で張り付いたり向かってる島はみんなレーダー基地があるところだぞ」
「破壊するつもりですか?」
「多分な。沿岸から二キロ程度ってことは、小型ミサイルでも積んでるんだろうな」
「なるほど。初釣島の方は? 二百六十二隻も向かってますよ」
茂川兵長は画面を見て、端末を操作しながら尋ねる。
「初釣島とその周辺の、人が住んでいる島の制圧隊が主だろうな。そっち方面にもレーダーが設置してある島があるから、それの破壊が任務の船も一緒だろう」
茂川兵長から続けての質問はなかった。
通話を終えたキム中尉が鶴岡中尉に話し掛ける。
「今更避難だとよ」
「はっ?」
「住民を大至急避難させろだと」
「……それだけですか?」
「ああ」
そう言うとキム中尉はデスクの上の受話器を取った。電話した先は東部諸島警察の月見島分署であった。署長を呼び出し、役所と連携してすぐに住民避難に取り掛かるように言っている。漁師たちにも声を掛け出来る限りの船を集め、大山島へ向かえとの指示だ。月見島には大きく四つの集落があり、二千三百人以上いる。そんなすぐには動けない。今からでは最初の船が出るころには、敵の船が来てしまっているだろう。出港出来た船があったとして、大山島までの航路には敵船がいる。途中で捕捉されてしまうかもしれない。素直に停船したりせず、逃げようとする船があったりしたら攻撃されるかもしれない。やることが遅すぎる。本部は何を考えているのだろう。
住民避難の話は昨日の昼過ぎから既にあった。その後も何度かあった。しかし本部は指示を出さなかった。鶴岡中尉はある時点で、本部は抵抗せず占領されてしまう方針だと思っていた。軍人は捕虜になり、住民は島内のどこかに集められ監視下に置かれる。その際人数が多ければ、敵にとっては負担が増えるって話になる。住民には怖い思いをさせ、不便を強いることになるであろうが、国際倫理が浸透している今の時代、無抵抗の一般市民が危害を加えられることはないと判断できる。それであれば敵の負担を増やすための戦術として、住民を利用しようと本部は考えている。鶴岡中尉はそう理解していた。是非は別にして。
鶴岡中尉が思った通り避難準備はそうそう進まず、行政側の指示を無視して勝手に飛び出した漁船や、個人所有のクルーザー数隻が出港したところで、敵船団が月見島沖十キロに迫ってきた。島内の全島放送の音声が指令室内に流れる。内容は、島外への避難は中止。各地区、災害時の避難所へ行くようにと言っている。これも今更だがこっちの方が、まあ正しい判断だろう。
どうやら月見島に上陸するのは三十七隻のようだ。他の船は月見島を通過して、北、西、南へと別れていくようだ。その隻数から予想は出来たが、人が住んでいる島全てを制圧するつもりであろう。
三十七隻、鶴岡中尉の予想通り、一隻平均五十人乗っているとしたら千八百人強、一連隊ってところだ。月見島の本城国の戦力は陸戦隊一中隊。陸戦専門ではない鶴岡中尉達のような軍人及び、軍関係者、航空隊も含めて約三百人。当然これらの人員には全員分の自動小銃のような装備はない。と言うか、陸戦隊が全員武装してしまうと、残りは自動小銃五十ほどしかないはずである。警察官二十二名。海上警備隊の駐在隊員、約百名。ただし、こちらも全員が武装できるかどうかは分からない(月見島配備の巡視船三隻は、当初領海東端までパトロールに出たが、敵船団が速度を上げた時点で引き返し、そのまま岩垣島方面の海上警備隊に合流。例の詳細画像撮影に当たっていた)。これだけの戦力に、本当に連隊一つ分の戦力を割いてきたのなら無駄ってやつだ。まあ、月見島は広い島ではあるし、最東端の僻地と言っても二千人以上の住人がいるのは分かっていたはずだから、その制圧となれば妥当な数なのかもしれないが。
そしてとうとう上陸してきた。こちらの出方が分からないので分散せず、月見島中央北岸の港と、その傍にある浜にまとまってやってきた。小型船は浜に乗り上げ、大型船の一部と中型船は港に接岸した。さあ、接岸と同時に武装兵が飛び出してくるか、と監視カメラの映像を指令所で睨んでいた鶴岡中尉達。しかし兵が飛び出す前に、接岸せず港口の外に留まっていた大型船の船体が開き、速射砲が顔を出していた。薄暗い映像だが十分確認できる。他の開口部からはミサイルランチャーらしきものも見えている。上陸部隊の支援砲撃態勢だ。専用に設計したのであろう、見事な偽装だ。武装を確認、これで侵攻だと言うことがはっきりした。攻撃しても、どこからも非難を浴びることはない。でも、今更何も出来ない。
接岸した船からは、やはりナシ国の軍服を着た兵たちが出てきた。予想通りぞろぞろと何百人も現れる。そして、あらかじめ決められていた進軍方向へ隊ごとに進んでいく。素早い動きである。一隊はすぐに、港にある海上警備隊の建物に入って行くのが見えた。
接岸した大型船の内、三隻は車両用であった。漁船に偽装した甲板の構造物ごと甲板が左右に跳ね上がって開き、船首部分も左右に開く。そこから岸壁にスロープが伸び、軽装甲ながら機関砲装備の六輪兵員輸送車が二両ずつ出てきた。今回の作戦が何年も前から計画されていた証拠である。でなければこんな船を持っているはずがない。
同じ映像が本部でも見られているはずだ。早く指示が欲しいものだ。そう思っていたら、茂川兵長がまた画面を見ながら報告し始めた。
「ナシ国海軍に動きあり。ハイシャ軍港の駆逐艦が動き始めました。現在三隻が出港するように見えます。空母二隻にもタグボートが接近。出港すると思われます」
鶴岡中尉が茂川兵長の方を見る。しかし先に口を開いたのはキム中尉だった。
「チタオは?」
「チタオ軍港はまだ動きなし」
茂川兵長が報告する。と、キム班のレーダー員、大内軍曹が大きな声を出した。
「沖の沖島のレーダー、接続切れました」
「どういうことだ」
とキム中尉。レーダー員たちが端末を操作して確認している。
「破壊されたようです。映像出します」
やがて茂川兵長がそう言い、壁面モニターの大きな一枚に映像が出された。人工衛星画像だ。日の出前だが既に船がはっきり判別できるくらいの明るさがあった。そして二隻写っている船の両方から、三回ずつ光が出た。光は南東方向、沖の沖島の内陸方向へ雲を引きながら飛んでいく。六個の光は二方向に別れて飛んでいき、島の二か所で爆発が確認された。その二か所は当然、レーダーが設置してあるところだ。
全員が息をするのも忘れたかのようにモニターを見ていた。と、そこに基地司令、石井少佐が入って来た。
「キム中尉、鶴岡中尉、本部から指示が出た」
戸口から二人の中尉を見上げて石井少佐がそう言う。どうやら自室で本部と連絡を取り合っていたようだ。二人の中尉は立ち上がり、直立不動の姿勢をとる。石井少佐は最上段の自分の席に向かいながら指示を伝える。
「交戦は不要、全員投降する。基地機能の完全破棄の準備」
「……」
二人は、いや、全員言葉がない。
「すぐにかかれ」
「はっ」
鶴岡中尉が応え、キム中尉も続いた。
月見島のような隣国との国境に近い基地は、敵に急襲され、占拠されるようなことを想定している。その際、軍の機密が敵に渡らないように、迅速に完全破棄できるように作られている。
「監視システム室、閉鎖完了。破棄システム起動、チェック完了、OKです」
早速、大内軍曹からレーダーシステムのコンピューター室破棄準備完了の報告が来た。レーダー等の監視システムと通信関係のコンピューターは、一つの部屋にまとめて設置してある。普段は他の部屋と同様の普通の鉄扉だけであるが、内側にもう一つ頑丈な鉄扉が備えてある。破棄の為に閉鎖する際はその扉も閉める。壁面スクリーンの隅に小さな窓で映っている基地内の監視カメラ映像で、その扉が閉まったことが確認できる。そして破棄システムと言うのは、爆薬と燃焼剤を併用した破壊装置のことだ。コンピューターの主要部分近くに設置してある、極小型の爆弾が爆発。その後燃焼剤に火が付き、部屋の中を完全に焼却してしまうシステムである。それは指令所の班長達のブースがある段の壁面にあるボタンを押すことで実行される。そのボタンのあるパネルを見ると、監視システム、と書かれた表示部分が赤く点灯していた。普段は白色点灯している。接続され、準備完了と言うことだ。そしてその時、その横のパネルの、兵器管制システム、と書かれた表示も赤く点灯し、その下に六つ並んだランプと、更にその下の二つのランプ全てが赤く光り出した。
「兵器管制コンピューター室も全て破棄準備完了」
坂本軍曹が報告してくる。兵器管制は八つの独立したコンピューターシステムで管制している。この八つのシステムは監視システムと同様の個別の部屋に納められていて、また同様の破棄システムが備えられている。
月見島基地のミサイルは全て地中から垂直発射する。発射機は大型ミサイル(大陸間弾道ミサイルを持たない本城国では大型と言うこと。他国では中型)用十基。これらは建物から一番離れたところで十基が独立して並んでいる。そして、同じく中型ミサイル用発射機は十基一群で二か所二十基。同じく小型ミサイル発射機は二十基一群で三か所六十基。合計九十基のミサイル発射機がある。それらを六つのシステムが連動して管制している。一つのシステムで照準、誘導できるのは八目標。六つのシステムが連動しているとはいえ独立しているので、最大四十八の目標を同時攻撃できる。
兵器管制システムの残り二つは、近接防御兵器用のシステムである。近接防御兵器は、二十ミリ自動機関砲が二基、九ミリ自動機関砲が四基ある。二十ミリ自動機関砲は、近接してきた戦闘機、ヘリ、ミサイルの迎撃用。九ミリ自動機関砲は、近年他国の紛争で登場し、多用され始めた攻撃用ドローンに対応するための物。どちらにも自動と付いているのは、攻撃許可の指示をそれらの管制システムに出すと、あとはシステムのAIが目標選定から攻撃まで自動で行うからである。この近接防御システムは先に言ったように二つの独立システムで管制している。しかし、自動破棄システムは更に六ケ所にも備えられている。それは各機関砲の砲塔である。この自動砲塔はそれぞれについているレーダー類のセンサーと、基地自体の監視システムからのデータを合わせて照準しているが、それと併用して光学機器であるカメラも使用している。他国でも同様のことをしているが、本城国のものは独自開発した高性能カメラであり、それを各砲塔に四基搭載しており、他国よりワンランク上の索敵、照準能力を持っている。それらも現時点では最高機密となっているため、各砲塔にも破棄システムが適用されている。こちらは結構派手に爆発する爆薬だけである。
坂本軍曹の報告後、壁面モニターに映る映像の一つの中で爆発があった。基地の様子を映している画面の一つであった。
「もう作動させたのか」
石井少佐がそう言うが、破棄システムの操作パネルの傍には誰もいない。すると、
「レーダーが破壊されました。港の敵艦からミサイルです」
と、大内軍曹が報告する。壁面モニターにはその画像が映された。大内軍曹は敵艦と言った。今まで敵船と呼んでいたが、敵船では敵潜と間違うと思ったからか。
「この基地だけでなく、島内他の二か所のレーダーもやられました」
大内軍曹が続けて報告した。
「そうか」
石井少佐は画面の画像を見ながらそう返す。
「Mリンクのサーバー破棄準備は」
鶴岡中尉がレーダー員達の方を向いて尋ねた。壁面の操作パネルの、Mリンクの表示だけ未だ白色点灯であった。
「最後のデータアップロードがまだ終わっていません。もう少しです」
茂川兵長の声が返ってきた。Mリンクは本城国軍内のデータ共用システムである。このシステムが無傷で敵の手に渡ると、軍中央のコンピューターを直接覗かれてしまう。ほとんどの軍事機密に触れることが出来てしまう。絶対に敵に渡してはいけないシステムである。
「よし。坂本、発射機の方はどうなっている」
鶴岡中尉は続けて坂本軍曹に声を掛ける。
「確認します」
坂本軍曹のその声に、茂川兵長の声が続く。
「アップロード完了。破棄システム起動します」
キーボード、マウスを操作する手の動きが早い。そして手の動きが止まり、画面をしばらく見つめたあとこう言う。
「破棄システム起動、チェック完了。アンテナの方もOKです」
「了解」
鶴岡中尉が言葉を返した。Mリンクは専用の衛星回線を使用している。それも機密である。故にそのアンテナも破棄対象になっているのだ。
「発射機エリアより回答。まだ装填済みミサイルの保管庫への移動中。あと三分ほど掛かるそうです。その後保管庫、発射機、自動装填システム閉鎖。破壊準備に入ります。全て完了まで十分弱」
「了解」
鶴岡中尉が応えた。ミサイルまでは破壊出来ないが、発射機と自動装填システムは別。一応機密であるので、可能であれば敵の手に無傷で渡さず破壊することになっている。
「よし、基地内で手空きの者は退出を始める」
石井少佐がそう言う。二人の中尉と、指令所に来ていた残り二班の班長、二人の少尉が石井少佐を見る。
「鶴岡中尉の班はここに残れ。キム中尉、退出の指揮をとれ、ゲート前広場に集合だ」
「了解」
二人の中尉が応える。
鶴岡班以外の者が指令室を出て行こうと動き始めた時、大内軍曹が画面を見ながら報告する。
「ゲート前二百メートル、敵です。装甲車二、兵員約二百は確認。ですがまだいそうです」
壁面モニターに映された画像を全員が見る。月見島基地正面ゲートの先は二百メートルほどの下り坂の道である。道の両側は何もない草原の斜面。道を下った先は突き当りで、左に行けば島の南岸に出て、集落がある。右に行けば山を越えてから北岸。そこを左に行けば、敵が接岸してきた港がある。
基地ゲートからまっすぐ坂の下を映す映像。すでにかなり明るくなっているが、基地のある台地へ西側から上ってくる敵集団は影の中にいる。それでも突き当りの三差路を左折して、装甲車一台が先行でゆっくり上ってくるのが見える。その両脇、道を外れ斜面にまで、小さな黒い影が広がって上ってくる。兵士たちであろう。
「大脇大尉を呼び出せ」
石井少佐が言う。警備隊長を内線で呼べと言うことだ。
「出ました」
通信担当が告げる。
「スピーカーにしろ」
と石井少佐。つなぎます、と通信担当が受話器にしゃべりボタン操作すると、
『大脇です』
と、警備隊長の声がスピーカーから流れた。
「大脇大尉、戦闘はしない。指示は聞いているな」
『はい』
「ゲートに敵が向かって来ている」
『確認してます。どうしますか?』
「五十メートル手前で止めろ」
『はっ?』
「五十メートル手前で止めて交渉しろ、時間稼ぎだ」
『交渉、何を話します?』
「交戦の意思はないと伝え、投降の手順を聞けばいい」
『はあ』
「機密破棄が完了するまで十分ほどのことだ。頼む」
『了解しました。もう百メートルありません。出ます』
通話が切れた。ゲートエリアの監視カメラに、ゲート横の衛兵詰所から出る大脇大尉が映った。警備隊の部屋ではなく、すでにゲートにいたようだ。人用ゲートを開け、一人後ろに従えて道の中央を足早に下っていく。迫ってくる装甲車と、両手を上げて歩いて行く大脇大尉たちの双方が止まったのは、丁度ゲートから五十メートルほどの所であった。
敵の接近で足の止まっていた、指令所から先に出て行く者たちが再び動き始めた。
「何してる、地上へ向かえ」
と、キム中尉が大きな声を出したからだ。そのキム中尉も石井少佐を振り返り、小さく礼をした後出て行った。
しばらくすると通信担当のブースで内線が鳴った。柴隊員が受け答えしたあと、鶴岡中尉に伝える。
「ミサイル保管庫の閉鎖完了。発射機、自動装填システムの閉鎖、及び爆破準備完了とのことです」
「坂本、ここから起爆出来るな?」
報告を聞いて、鶴岡中尉は坂本軍曹に尋ねる。坂本軍曹は自分の前のモニターを見てから答えた。
「はい」
それを聞いて、柴隊員に鶴岡中尉が指示を出す。
「よし、兵器員全員地上に移動。三分以内にゲート前に集合だ」
「了解、伝えます」
鶴岡中尉は石井少佐を振り返った。石井少佐は鶴岡中尉と目を合わせたあと、自身のブースの受話器を取った。大山島にある東部警戒隊本部直通のものだ。
石井少佐は全ての機密破棄準備の完了と、敵兵がゲート前まで来ていることを告げた。と、その時、無線機からの声がスピーカーから流れてきた。
『至急、至急、ゲート前から指令所。敵がすぐに基地内に入ると言って再び前進開始。基地施設に手をつけるなと言ってます』
大脇大尉に従って行った隊員からの通信だ。モニターの画像でも、装甲車が前進し始めたのが分かる。大脇大尉たちは両脇を敵兵に拘束されて、装甲車の前からどかされている。
「敵が突入してきます。破棄実施の許可を」
石井少佐が受話器の向こうの相手にそう言う。ほんのしばらくで返事が来たようだ。
「了解しました。では」
そう言って石井少佐は受話器を置いた。そして、
「破棄実行だ」
そう言った。
鶴岡中尉は時計を見た。兵器員に退出指示を出してから三分までまだ少しある。彼を見ている坂本軍曹に、目で待てと指示しながら壁の操作パネルの方へ向かった。三つ並んだパネルの操作部分の扉をすべて開け、
「破棄実行」
と、石井少佐を見る。訓練でしかやったことのないこと。まさか実際に行うことがあるとは夢にも思わなかった。
「許可」
石井少佐が応えた。
鶴岡中尉は兵器管制システムの破棄から実行。誤操作防止の安全装置を外し、ボタンを押す。しかし、パネルのランプ類が消えていっただけで、何の音も聞こえてはこない。何が起こったか確認できるのはモニターでだけだ。全員が壁面モニターを見る。コンピューターシステムの機器が置かれた八か所の小部屋内部の映像。機器の主要箇所で小さな爆発が起こった。そしてその直後、部屋の中が火炎に包まれる。六基の砲塔が破壊されるのもモニターで確認された。砲塔の爆発は、地上ではかなりの音と衝撃であったろう。ゲートの目の前にまで来ていて、一部は人用ゲートから基地内に入って来ていた敵兵が、身を屈めて一斉に吹き飛んだ砲塔の方を見ている。
次はMリンクシステムの破棄を実行。これもモニターで確認。専用の衛星アンテナは、基地の正面ゲートからは結構離れたところにあったので、派手に爆発したはずであるが敵兵の驚き方は先程ではなかった。
その次はミサイル発射システムの破壊。鶴岡中尉は再び時計を確認してから、坂本軍曹に向かって頷いた。坂本軍曹は自身のブースのモニターに向き直り、端末を操作。そしてもう一度鶴岡中尉の方を見る。鶴岡中尉は再び頷いた。坂本軍曹はそれを見たあと、マウスを操作した。
地下でのことではあるが、かなり大きな爆発である。しかも、ざっとで百メートル×三百メートルの範囲で起こっている。地下の指令所でもハッキリ音と振動を感じた。発射機の地上部分の蓋は吹っ飛んでいないし、ゲートから一番近い発射機までは二百メートル以上あるが、地上ではその音はさらに大きく、地面の揺れも大きなものであった。敵兵も、地上に退出していた基地の隊員も、そのほとんどが身を屈めて何かに身構えた。敵兵の中には、地上にいる基地員に銃口を向けた者もいた。
監視システムの破棄は最後になった。なぜなら、基地のコンピューター端末の本体も、爆発と火炎によって破棄される部屋にあるからだ。指令所内の各ブースにある端末。いや、基地内の全ての端末。それは全て十センチ角×厚み四センチほどの物である。これにモニターやキーボードなどが有線、無線で接続されているが、その端末は本体との中継器にすぎず、他には何の機能もない。個々での操作ログすら記録していない。なので監視システムの部屋を破棄すると、コンピューター制御されているものは全て使えなくなる。そう、その部屋を失った瞬間、基地は完全に死んでしまうのである。
「司令、先に地上に向かわれては?」
と、鶴岡中尉は石井少佐に投げ掛けた。指令所は地下三十メートルにある。コンピューターが破壊されるとエレベーターが動かなくなる。
「いい」
石井少佐はそう一言返した。その返事を聞いて鶴岡中尉は壁のパネルに向き直る。そしてボタンを押した。
小規模の爆発と火災だけであるが、指令所から通路でつながっている部屋であるので、音は聞こえた、ような気がした。映像での確認は出来ない。なぜならボタンを押した瞬間、全てのモニターが消えたからだ。いや、消えたのはモニターだけではない、照明も消えた。灯っているのは数か所の非常灯だけである。破棄の確認はそのことで出来た。
「よし、我々も出よう」
薄暗くなった指令所内で、石井少佐がそう言って戸口の方へ向かい始める。目の前を通り過ぎた石井少佐に続きながら、鶴岡中尉が隊員たちに言う。
「全員退出、急げ」
全員が戸口を出た。
最初に階段を上りきった坂本軍曹が、
「電源破壊、かかります」
と、鶴岡中尉を振り返る。
「頼む」
鶴岡中尉がそう頷くと、坂本軍曹は出口とは逆方向に走っていった。
敵に占領されるときの最後の手順、電源破壊。これも準備されている。占領後の敵がそのまま使えるものなど出来る限り残さない。
坂本軍曹が向かったのは、本部棟一階にある食堂の隣にある電気関係のシャフトスペース。その中に並ぶ分電盤の一つを開ける。各分電盤自体もコンピュータ制御されているので、他の分電盤は今は機能停止している。でもその盤は機能している。そこには五インチの液晶パネルがあった。触れるとテンキーが現れる。坂本軍曹がコードを打ち込むと、プロセスを開始するか、とのメッセージが出た。イエスを押すと、本当に良いか、ともう一度メッセージが出る。再びイエスを押す。すると、十五と大きく表示され、十四、十三、と表示が変わっていく。カウントダウンだ。坂本軍曹は既にその場を離れていた。
カウントダウンが終わった時、受電設備、電力供給設備のある建物が吹っ飛んだ。地下にある同施設も同様のはずだ。同時に主だった分電盤も各所で一斉に吹っ飛んだはずだ。コンピューター制御を外れ、機能停止している分電盤を、更に物理的に破壊したのである。今後この基地で電気を使えるのは、かなり大掛かりな復旧工事の後となるであろう。
ゲートは車両用も解放され、敵軍が陸続と基地内に入って来た。と言うと大げさか。月見島基地に来たのは装甲車二両と兵員約三百名だけであった。こちらの陸戦能力は把握されていたようである。
月見島基地にやってきたナシ国軍の隊長は、第二特殊任務大隊第一中隊のフオン大尉と名乗った。彼は月見島はナシ国軍の管理下に置かれると宣言。月見島基地の人員は、一旦基地内の講堂に集められた。
上下、男女問わず詰め込まれ、扉は全て開け放たれているが不快な暑さの中であった。戦争とはなっていないが、降伏して捕虜になるのは敗戦と言う感覚である。不安なのか恐怖なのか、それとも憎しみ、悔しさなのか、一同の顔は皆厳しく、そして沈んだものであった。啼泣するものこそいなかったが、すすり泣きの声は聞こえたりしていた。そんな一同を、何とも言えぬ顔で見回していたのは鶴岡中尉。いや、やるせなさのみが滲み出た姿であった。
正午、昼食が配られた後、石井少佐、大脇大尉、キム中尉、鶴岡中尉、それと兵器管理の中村大尉が呼ばれ、別室でフオン大尉以下数名と面談。
島内の制圧はほぼ完了、住民にも死傷者はいないと告げられた。住民は主な四つの集落内の一定区域に当面は集めるが、その区域内での行動には基本的に制限を加えないと言う。すでに生活用品などを持っての住民の移動を順次始めているとのこと。基地南部の集落にある基地職員の官舎にいた、基地職員の家族も一般住民として扱われ、その集落の制限区域内に移動させられる。
本城国軍人である基地職員は捕虜として基地内に軟禁。本部棟内の小部屋や会議室、食堂などに幹部その他と女性隊員が入り、その他は今いる講堂にて生活するようにと申し渡される。無許可で建物の外に出てはいけない、と言う制限以外は自由とのことなので、かなり緩い軟禁である。ただ、個人のスマホ等は回収されなかったのであるが、電波は一切拾えず、通信は不可であった。島内の電波基地は機能停止されたようである。そして、基地の電源を壊してしまっているので、かなり不便な生活にはなるであろう。まだまだ真夏である、暑そうだ。
ヘリ運用の航空隊基地の軍人、海上警備隊の隊員も軍人として扱われ、同様の処置がとられていると説明された。
軟禁される期間などに付いては一切説明なし。また一番肝心な、ナシ国の侵攻目的も説明されない。本城国の東部諸島を管理下に置く、とは言うが、何のためになのかの説明がない。まあ、領有化すると言うことであろうが。それがナシ国の目的であるのは歴史が教えてくれている。月見島とて、過去千年以上の間に何度も両国の間で領有権が行ったり来たりしている。当然ナシ国が設定している呼び名がある。またしばらくはその名になるのであろう。ん? しばらくで済むのか? それは分からない。
東部諸島東部の本城国軍の基地やレーダー設備の無力化と同時に、ナシ国軍艦艇が東部諸島目指して侵攻してきた。戦闘機はいち早く進出してきた。その為、本城国領空最東端を周回していた早期警戒機は、大山島方面に退避した。
翌日のお昼までに、初釣島の空港にナシ国空軍の戦闘機が進出、拠点とした。そして夕刻には岩垣島の軍空港にもナシ国軍戦闘機は進出。東部諸島中部海域には空母二隻を据えた艦隊も進出。有力な防空網を展開してしまった。
さらに翌日早朝、初釣島の空港にナシ国空軍の中型爆撃機まで進出。本城国軍は岩垣島の航空兵力を大山島に退避させており、大山島には東園島、そして本城国本土からも増援の航空部隊が到着、戦力を整えていた。艦隊も東部警戒隊に所属している空母一隻一群に加えて、本土東部艦隊に所属する、空母一隻を含む一群が増派されてきていた。陸軍部隊、海兵部隊も大山島に、師団単位での増員が始まり、移動してきている。
これで互角と言いたいところであるが、互角ではダメである。圧倒しなければ、早期に、そして出来るだけ戦闘を控えた、被害を抑えた状態での奪還は出来ない。それなのに、増派の動きはナシ国軍の方が早く、ナシ国西岸の南方から新たな艦隊の接近が察知され、航空兵力にいたってはその翌日、倍になっていた。
東部諸島は大山島の東、約二百キロの所にある島までが事実上ナシ国に占領された。ここまでは本城国が無抵抗であったので、ほんの数か所で偶発的に起こった戦闘で、双方に十数名ずつの死傷者が出ただけであった。しかしここからはそうはいかないであろう。大山島に侵攻すれば、本城国は必ず全力で反撃するであろう。それはナシ国も分かっているはず。膠着状態となった。
占領された島々には官民合わせて約四十万人いた。捕虜となった軍人、軍関係者は約一万人。それらを人質にとられた格好での交渉がこれから始まるのであろう。本城国政府は、そして本城国王はどうするであろう。人的被害を顧みず、武力奪還に出るのか。あくまで無血交渉とし、被占領地の一部、もしくは全てを手放してでも争いを避けるのか。本城国政府に対して、ナシ国から正式な宣言がない現状では、何も考えられず、考えていないかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます