ヴァリエル——バベルの塔 2050_メイキング

青月 日日

プロットの作成と生成準備

 今回は「ヴァリエルーーバベルの塔 2050」のメイキングとして、生成に使ったプロットを公開します。

 1万字を超えても安定して出力できるように工夫しており、生成AIで物語を作る際の参考になればうれしいです。


「生成AIが嫌いだ」という方も、「生成AIで何ができて、何ができないのか」を確認するきっかけになると思います。読んでみると、これから自分がやるべきことのヒントにもなるかもしれません。




 生成の流れ


 ざっくり、こんな手順で進めました。


 1. まずは資料集(約4,000文字)を読み込ませる。

 2. その後、詳細プロットをもとに本編を1章ずつ執筆してもらう。

 3. 生成文字数が4,000字を超えたら、新規チャットを立ち上げて再び資料集を読み込ませ、本編を続けてもらう。


 この方法で、1万字を超えてもGPTが勝手に話をねじ曲げることなく、安定して執筆を続けてくれました。


 ただし今回は詳細プロットに少し曖昧さがあり、うまくいかない部分もありました。改善策としては、各章ごとに「登場人物」「場所」「行動対象」を明確に書いておくことが有効だと思います。


 補足ですが、資料集は「章立て」「キャラクタープロフィール」「あらすじ」などをまとめて2,000字程度にしたほうがバランスが良さそうです。



 おまけ:資料集の作り方


 最初はこんな感じで始めました。

 ```

 青月 日日:

 あなたは私の物語創作の共同創作者です。

 今日は雑談です。物語はまだ書きません。

 ```


 ここから「ルーン文字」について雑談を展開しました。

 私はすでにエルダーフサルクの24文字中22文字がアルファベットと対応していることを知っていたので、そのあたりを深掘り。

「CQVXが存在しない世界」や「CQVXをセム語風に読んでみると…」など、無料枠を使い切るくらい語り合いました。


 次の日、同じチャットで再び

 ```

 青月 日日:

 あなたは私の物語創作の共同創作者です。

 ```

 からスタート。


 今度は「SFを書きたい」と告げ、質問に答えていくうちにプロットが煮詰まってくるので、以下のように進めました。


 * 資料集を作成してもらう

 * 章立てがない場合は全章の一文要約を依頼

 * キャラクタープロフィールを作成

 * あらすじがなければ作成

 * 詳細プロットを作る順番を確認

 * 1〜2章ずつ詳細プロットを生成してもらう

 * あらすじを1,000字程度にまとめてもらう


 ChatGPTに「○○を作って」と頼むと生成してくれるので、それをコピーして自分で資料集を整えました。

 直接「資料集を作って」と依頼することもできますが、その場合は少し要約っぽくなる印象があります。


 これで資料集は完成です。




 本編の準備


 資料集ができたら、次はChatGPTに記憶させる工程です。


 ここで重要なのは次の2点。


 * 「内容を絶対に変更しないで」と強調して伝えること。

 * 「章の間で不整合がないように」と念を押すこと。


 ChatGPTに悪意はなく、より良くしようと勝手に書き換えてしまうことがあるので、ここはしっかり指定しました。


 実際のプロンプト例:

 ```

 あなたは私の物語創作の共同創作者です。

 次の小説の資料集を記憶してください。

 小説を執筆する際には、この資料集を絶対に変更しないでください。

 また、章の間で不整合がないように必ず参照してください。

 ```


 資料集(プロット/設定まとめ — ニトプとヴァリエルの物語)


 1. あらすじ


 郊外の小さな町工場で働く若手職人・ニトプは、几帳面で手先が器用な性格と祖父譲りの工具を大切にする習慣で知られていた。「仕事ってのは、手を抜かないことだ」という口癖は、無意識のうちに彼の行動原理となっている。ある日、完成したばかりの軌道エレベーター「ヴァリエル」の先行体験に抽選で当選したことを知らされ、ニトプは工具箱を持って出発する。先進的な内部空間に浮かぶ地球を眺めながらも、彼は計器や構造物を観察し、乗客が気づかない小さな異常を次々と察知しては応急処置を施す。その正確さと冷静さは、周囲の賞賛を集めるが、本人にとっては日常の延長に過ぎなかった。


 しかし、突如として外部から電磁パルス攻撃を受け、ヴァリエルは主電源を失い、人工重力も停止、軌道を外れて月へ漂い始める。混乱する乗客たちの中、ニトプは職人気質の観察力と祖父の工具を頼りに、内部機械を手作業で修理。補助電源での操作を経てシステムを復旧させ、脱出船「ノア」の発進を可能にするが、自らが残って最後の操作を行う決断を下す。「仕事ってのは、手を抜かないことだ」という口癖に支えられ、彼は孤独の中で修理作業を続ける。


 一方、世界政府はサバコカと呼ばれる組織の攻撃を誤認し、先制攻撃を検討するが、真意は不明のまま。ニトプは孤独と絶望の中、月面のノアの血族から提示された二者択一のジレンマに直面する。「どちらを選んでも文明は破滅する」という状況で、彼は指を落下スイッチから引き、自らの職人魂と倫理観に基づき、人命を優先する決断を下す。その選択は、単なる技術者としての仕事ではなく、人間としての責任を貫く行為であり、希望と犠牲、孤独と使命が交錯するクライマックスを迎える。


 2. キー用語(用語集)


 * CQVX:言語を分断する“力”(四子音群)。古代からの文字遺産でもあり、与えることで文明を促進、奪うことで退化させる。

 * サバコカ:月の裏側にいる監視組織。人間で構成され、遠い過去にAGIに連れ去られた「ノアの血族」。人類の外宇宙進出を阻止する使命を帯びる。

 * バベル(軌道エレベーター群):地球を取り囲む正四面体の各頂点に建てられる予定の軌道エレベーター群。各塔は天使/悪魔の名(Camael, Quabriel, Vahriel, Xeriel)を冠す。

 * ヴァリエル:主人公ニトプが乗った軌道エレベーターステーション(Vahrielに由来)。物語の舞台の一つ。

 * ノア:脱出船の名称。サバコカの「ノアの血族」との語感を繋げる意図あり。

 * ノアの血族:サバコカ側にいる人間群。古代に選ばれた一族の末裔。



 3. 登場人物(主要)


 * ニトプ


 * 主人公。塔のふもとの都市に住む一般市民。高専出身、技術系の職に就く。

 * 性格:細かいことが気になる、職人気質。

 * 所持品:祖父の手入れされたアナログ工具一式(ツールボックス)。電子工具は含まれない。

 * 口癖(無意識):「仕事ってのは、手を抜かないことだ」――祖父の言葉だが本人は起源を意識していない。

 * 物語上の役割:小さな職人魂が巨大な選択を下す触媒。



 * ノアの血族代表(名前は任意)


 * サバコカ側の人間。任務に忠実な「使命を遂行する敵」。だが最終的にはニトプの選択に心を揺らす。



 * 世界政府関係者(代表)


 * 作戦決定者。「ヴァリエルを落下させる」決断を下す。緊張感と政治的圧力の源。



 * 同行の一般乗客たち(群像)


 * パニック・恐怖・希望を表す群像。ニトプの対比用。



 4. 世界観・舞台(トーンはハードSF寄りだが“雰囲気”でリアルに)


 * 軌道エレベーター、宇宙ステーション、月面基地など高技術インフラが存在する未来。

 * 科学描写は数値は出さないが専門用語を散らし、身体感覚(音・匂い・振動)でリアリティを出す。

 * サバコカの攻撃は高エネルギー粒子照射(EMP的効果の拡張)で、電子機器・磁気媒体・記録を破壊する。

 * そのため アナログ工具(祖父の工具)だけが有効という必然性が成立する。




 5. 主要シーン詳細:修理シーン(重点)


 目的:技能描写でニトプの人物像を強め、口癖を自然に繰り返して伏線回収に繋げる。


 シーン前提


 * 状況:ヴァリエル主電源・制御喪失。脱出船ノアはヴァリエル側の発進ロックで発進不可。乗客の多くは脱出船へ移動済み。

 * 制約:電子系統は破壊されているか不安定。問題は機械的な固着(ロックピンの固着、油の凝固、冷却バルブの固着など)で、アナログ工具で対処可能。


 ビート(例)


 1. ニトプ、工具箱を開く(匂い:油と鉄と木)。具体描写は五感で。

 2. 仲間のパニックの声(時間がない、地上の指令はヴァリエルは放棄しろと)。ニトプ、無意識に口癖。

 3. 固着箇所を観察:金属の色、ネジ山の潰れ、古いグリースの痕。彼の経験から原因を推定する(「ここが食いついてる」)。

 4. 作業描写:ペンチでノック、スパナで逆力をかける、ノギスでクリアランスを測る、やわらかい布で拭う――デジタルではなく“手の動き”や“力感”。

 5. 小さな成功と失敗:最初は空回り、汗、息を整え、最後に金属の軋む音とともにボルトが緩む。

 6. 反応:システムのチャイムは薄く、補助電源が復帰。だが完全復旧には有人操作が必要。ニトプが残る旨を決意。


 演出のポイント(雰囲気でリアル)


 * 専門数値は出さないが、工具・部材の名前(バルブ、ロックピン、スラストベアリング)を散らす。

 * 身体感覚(手に伝わる振動、金属臭、蒸気の冷たさ)で臨場感を出す。

 * 口癖は自然に出る伏線としてこのシーンで二回目くらいにする。



 6. クライマックスの描写方針(感情と工学の交差)


 * 最終スイッチは“単なる押しボタン”ではない。象徴的で、かつ技術的にも実用的な操作(軌道姿勢制御のコマンド列)として描く。

 * ニトプの決断を外的説明に頼らず、内面描写(手の震え、工具の感触、祖父の声の断片)で描写する。

 * サバコカ側の人間も合理的な説明(地下炉の暴走リスク)を示すことで、押さない決断が単なる情緒でないことを補強する。



 7. テーマと象徴


 * 仕事/修理 vs 破壊:祖父の工具箱が「修理する価値観」を象徴。

 * 言語と社会性:CQVXとルーン的モチーフは言語=社会を形作る要素。

 * 世代継承:祖父の言葉が無意識に継承され、文明の行く末を左右する。



 8. 書き方の指針(トーン/POV)


 * POV:ニトプ中心の三人称限定(close third-person)。読者は彼の感覚で場面を見る。

 * 文体:簡潔で五感中心。工学的な専門用語は小出しにしてSF感を出すが、基本は人物描写を重視。

 * 伏線回収:口癖は序盤〜中盤〜クライマックスで3回前後繰り返す。最終回収で意味が反転する(「手を抜かない=壊さない」)。



 9. 伏線一覧(管理用)


 * 口癖(祖父の言葉) — 序盤/修理時/最終の三回で回収

 * 工具箱(祖父) — 冒頭紹介 → 修理で使用 → クライマックスで象徴的に握る

 * CQVXの設定(言語的影響) — サバコカの計画説明時に一度整理して提示

 * 月面での「人影」=ノアの血族の存在 — モニター復旧で見せる(修理結果の成果)

 * サバコカの攻撃方法(高エネルギー粒子) — 電子機器のみを破壊するため、アナログ工具が有効という必然性



 10. 小道具リスト(簡潔)


 * 祖父の工具箱(中身:スパナ、ドライバー各種、ペンチ、ノギス、ハンマー、やすり、コッタ抜きなど)

 * ヴァリエルの機械部品(ロックピン、冷却バルブ、補助電源端子、外部モニター)

 * 脱出船ノア(発進ロック機構)

 * CQVX断片の刻印(装飾的に見えるが伏線)


 11. 章立て(簡潔)


 * 第1章:日常と伏線

 町工場の職人ニトプは、祖父の工具と口癖を胸に働く。ある日、軌道エレベーターへの招待抽選に当選する。


 * 第2章:非日常への入り口

 軌道エレベーターに搭乗したニトプ。非日常空間で発生したトラブルを、その職人気質と技術で鮮やかに解決する。


 * 第3章:襲撃と混乱

 突如、謎の組織サバコカがヴァリエルを襲撃。ステーションは制御を失い月へ漂流、船内はパニックに陥る。


 * 第4章:修理の挑戦

 脱出船の故障をニトプが工具で修理。乗客を逃すため、危険なステーションに一人残る決断を下す。


 * 第5章:世界政府の決断

 地球政府はサバコカの通信を誤解し敵と断定。ニトプごとヴァリエルを月へ落下させる非情な作戦を承認する。


 * 第6章:孤独な修理

 孤独の中、ニトプは祖父の記憶を支えに修理を続ける。そしてついに外部モニターの部分的な復旧に成功する。


 * 第7章:真実の発見

 ニトプは絶望的二者択一に直面し、文明の破滅しかない現実に孤独で立たされる。


 * 第8章:決断の時

 落下操作の直前、ニトプは「仕事」の意味を自問。葛藤の末、人類の決定に背き、破壊を中止する選択をする。


 * 第9章:対話と和解の兆し

 サバコカに救助されたニトプ。彼の選択が彼らの心を動かし、計画は保留に。監視から対話への道が開かれる。


 * 第10章:エピローグ

 地球へ帰還し、再び工具を手にする日常。ニトプは口癖の真の意味を胸に刻み、未来への静かな希望を見つめる。


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