第6章
その夜。シンデレラはいつもの物置小屋で小さくなって、静かに泣きました。
「どうして……」
小さな窓から差し込む月明かりに照らされ、ガラスの靴が煌めいています。これは、あの夜、階段で〝脱げなかった方〟のガラスの靴です。彼女はそのガラスの靴を、誰にも見つからないように、ひっそりと隠していました。
「あの夜は本当に夢だったのかしら。王子様と踊った私は、私ではなかったの……?」
シンデレラは声を震わせて、ぽろぽろと涙をこぼしました。
そんな彼女を心配してか、七匹のネズミたちはシンデレラの傍に集まってきます。たくさんの木の実を差し出す者や、彼女の肩に乗って様子を伺う者、何をすればいいのか分からなくてワタワタと駆け回っている者。各々のやり方でシンデレラを励まそうとしていました。
「……ふふっ、ありがとう」
シンデレラは涙を拭いながら、小さく笑います。
そして、ガラスの靴を抱きしめ、独り言のように呟きました。
「きっと……、夢は。夢であるから、綺麗なのね」
涙に濡れた長い睫毛が、シンデレラの頬にそっと影を落とします。
夜空に浮かぶ月は、何も言わず、ただじっと彼女を見つめていました。
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