疾風勁草~あなたのメロディ、私の詩~ / 大田康湖

ジャンル:現代ドラマ

URL:https://kakuyomu.jp/works/822139839266674955

作品PR:カクヨムコン11エンタメ総合部門で連載中の作品となります。よろしくお願いいたします。

批評公開予定日:2026/01/12

対象話数:第7話 迄(10,803文字)



【三行あらすじ】

 オイルショックの時代。高校三年生で三者面談の迫っていた真優美まゆみは、自身の決められた進路を想い、鬱々としていた。

 そんな時、ある事件がキッカケとなり、クラスメイトの一希かずきと共通の趣味があることを知ると同時に、彼から曲の作詞を依頼されることに。

 社会的な風当たりや、周囲を取り巻く人間関係に翻弄されながらも、己が自由を追い求める青春ドラマ作品!



◉ 発想力 ◉

〖GOOD ◎〗

 高度経済成長期を過ぎたオイルショックの頃を舞台に、自由な人生を求める青年たちの物語。ジャンルが現代ドラマなのもあって、登場人物たちの心情変化などに焦点をあてた作品ですね。

 音楽という共通点から始まった真優美と一希、その二人の関係性と、取り巻く環境がどうなっていくか。そのメインテーマが序盤から明確なのも好印象です。

〖BAD △〗

 展開力に関わる点ですが、二人が繋がるキッカケ作りの部分でかなり無理してる印象がある。

 バスの中でのノート確認。同乗した二人だが、傘を持たない一希の方が目的地に後から着く。そして爆発事件に巻き込まれ、真優美が落としたノートを一希が拾う。

 事件に巻き込まれること自体は小説の登場人物として自然ですが、二人を繋げるための行動がどうしても「読者への説明感」を拭えず、不自然に感じられる。物語に速度感を与えた分、リアリティが犠牲にされたように見受けられます。可能ならば、その行動・状況に至った理由・要因が欲しいところ。


◉ 人物像 ◉

〖GOOD ◎〗

 大きな目標があったわけでも無いが、決められたレールを歩かされる事に忌避感を持つ坂 真優美。夢があり、それを成すべく、できる行動を積み重ねていく横澤 一希。この二人を軸に、三人称視点で交互にカメラを向けることで、それぞれの心情もしっかりと描かれています。

〖BAD △〗

 第六話で真優美がラジオ宛てに書く手紙の内容が、キャラ造形と少しブレるように思う。第五話でのノートに関するやり取りから、ノートの事を聞いて固まったり、真っ先に中を見たか尋ねたり、「秘密のノート」と呼称したりと、自身の趣味・内面部分を見られる方に対して抵抗感のある性格だと窺える。だからこそ、一希も聴いているラジオに、一希が聞けば真優美だと分かる文面の手紙を書くのは、真優美の性格と乖離してしまっているように感じられた。書くことを決心した心情描写を挟み、理由づけを補強する、あるいは先の展開次第ですが、書いたけど恥ずかしくなり手紙を捨てる、などがあれば性格の一貫性が出るはず。

 あとは人物全般ですが、何箇所かで台詞回しに違和感がある。

 第五話、真優美と一希がノートの件で会話する場面。まだ二人の関係性が浅いとは言え、事実確認と情報共有が優先されすぎた会話内容で、学生同士の会話と言うより事務的なやり取りに映る。もう少し会話シーンを引き伸ばしていいので、ノイズに近い台詞を挟んでも良いと思われる。

 第七話、放送部員による打ち合わせ会話の場面。これは文章構成的な視点になりますが、秋恵が発した「ところで」が会話の文脈に沿っていない。確かに直前の自己紹介から話題が変わる台詞内容ではあるが、そもそも自己紹介から始まった理由が『隅西ニュースのアシスタント応募に来た初対面の生徒』がいた為なので、それは「なぜ応募したのか」を問うための準備動作でもある。なので本質的には話題が変わったわけでは無いはずですから、“順接の接続詞”で台詞を始めて良いかと。


◉ 表現力 ◉

〖GOOD ◎〗

 短くスマートな情景描写・場面説明が多く取り入れられており、読者が飲み込みやすい文章量。それでいて、様子をしっかり想像できるだけの情報量で、絶妙な塩梅。

〖BAD △〗

 裏を返すと、癖が無さすぎる印象。心情描写の挟み具合で場面の重みづけもされているが、その人物の心境に合わせた情景の見え方なども組み込んでいくと、より一層シーンごとの緩急がつくはず。第四話で一希がラジオを聴いて、それに感化され指先でリズムを取る描写は良かったので、そういった描写をもっと要所に散りばめる形で。

 それと細かい指摘で、第三話・第四話で「やっぱり」の半濁点が濁点になっている点に注意を。一箇所だけなら言及せずスルーしていましたが、二連発だったので書かせて頂きます。


◉ 構成力 ◉

〖GOOD ◎〗

 前述した描写の簡潔さに併せて、一文一文が細かく区切られており、非常にテンポ良く読み進められる文章構成になっている。

 二人がそれぞれの部屋でラジオを聴く場面を、上手く書き分けながら内容重複させない演出も良い。

〖BAD △〗

 全体的に問題ないので、ポイントごとの指摘を。

 第一話、真優美と一希がレコード店のあるビルに入るシーン。短い一文中に『傘』という語が連続するため、その単語が変に強調されて見える。可能なら重複を避けて別表現に。

 第三話、キャバレーでの酔っ払いの台詞前後。常連客の台詞が入る前に「からかう」「かなり酔いが回っているようだ」と説明が続くため、ややテンポが悪くなっている印象。呂律の回らない台詞、あるいは理路整然としていない台詞を出した後に「かなり酔いが〜」と挟んだ方が効果的かもしれない。

 第五話、坂家での朝食場面。必要性の薄い服装描写が少々くどい。本作はキャラ容姿よりも内面部分で勝負する作風だと思うので、服装について言及するのは、デートシーンなどキャラの心情に関与する場合のみで充分かと思われる。


◉ 展開力 ◉

〖GOOD ◎〗

 真優美のバックグラウンドと一希との関係発展から始まり、爆発事件に遭遇、ノートの拾得、ラジオを介した双方個別の心情吐露、再会と進展——という所までで一章六話分が10,000文字以内。

 展開速度としてはかなりハイペースで読者を飽きさせず、かつ各話2,000文字以内で一貫しているので、ページを気軽に開けます。

 ここから二人の関係がどう変化していき、どう環境を変えるかに期待が持てます。

〖BAD △〗

 展開速度に対して、サイドストーリーを詰め過ぎているように思う。何らかのネタバレに触れるかもしれないので深くは書きませんが、第一章で出すなら爆発事件のみで充分量かな、と。

 あとは発想・人物像と併せて、読者を強烈に惹きつけられるような『物語の強み』がまだ足りない。本作の方向性は主人公の心情や話の展開からおおよそ読み取れるので、その点は素晴らしいことです。が、それゆえに『障壁』となるものも想像がついてしまい、そしてそれが『人生で直面しやすいもの』だからこそ、この物語が“凡庸”に見えやすくなっているように思えます。それを払拭するには、「ここが他と違う部分だ」と一目で分かる“特異性”を早期に出せる展開構築が必要。突飛な発想や展開でも、人物の重大な秘密でも、読者の胸を打つような厚みのある心情・情景描写でも。そういった一つ大きな『強み』が出せれば、より一層作品にのめり込ませる事ができるはずです。特に“ダブル主人公”という要素を強調するのであれば、一希側の心情をもっと盛っても良いかもしれません。



【総合評価】

  ■■■■:発想力

  ■■■■:人物像

  ■■■■:表現力

 ■■■■■:構成力

  ■■■■:展開力

      54321

 ⭐︎★★★★(4.2)



【コメント】

 二人の高校生男女を主軸に描かれた、滑らかな筆致の作品でした! テンポ良く読み進められる文章構成、流れるように進むストーリー展開と、読み心地は抜群です。その流れに棹さす“もの”を一つドンと置ければ、作品全体でのメリハリがつくように感じられました。

 読みやすさのある青春ドラマをお望みの方、是非読んでみてください!



作品名:疾風勁草~あなたのメロディ、私の詩~

著者:大田康湖

https://kakuyomu.jp/works/822139839266674955

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