Breathing ーロードバイクと、キミに出会ってー / 川中島ケイ
ジャンル:現代ドラマ・スポーツ
URL:https://kakuyomu.jp/works/16818792438173339965
作品PR:弱虫ペダル大好きな作者の書いた、1人の中学生がロードバイク競技とそれによって出会う人達のおかげで前を向いて成長していく青春ドラマになります。
批評公開日:2025/10/08
対象話数:第4話 迄(10,154文字)
【三行あらすじ】
小学校最後の陸上大会で大怪我をし、それが元で同級生達から嫌がらせを受けた主人公・
彼らから離れるため校区の異なる中学に進学する事にした八一は、通学用の自転車を買いに出かける。
そこで出会ったロードバイクと、それを通じた人々との交流が、主人公の心を変えていく青春スポーツ作品!
◉ 発想力 ◉
《GOOD ◎》
有名な漫画・アニメから着想を得た、ロードバイク作品。好きなもの・影響を受けたものから創作を始める事はとても良い事です。どういう方向性でオリジナリティを見せてくれるかに期待。
《BAD △》
読んだ範囲までだと人間ドラマが主体になる様子なので、設定や目的の目新しさは少ない。主人公が今後何を目指していくのかも、おそらく先の展開になる様子。
◉ 人物像 ◉
《GOOD ◎》
大事な大会での怪我が原因でクラスメイトから嫌がらせを受け、小学校卒業まで登校拒否になっていた主人公・青嶋八一。その心情描写は丁寧に描かれています。ヒロイン的立ち位置っぽいロードバイク経験の豊富な
《BAD △》
容姿の描写が少なめ。第1話〜第2話に登場する店員さんは、名前を出す必要はありませんが、会話パートを長く取るならば軽くで良いので容姿説明を入れるべき。読者目線、店員の台詞ごとに脳内イメージを修正しながら読み進める事になるので、そちらに思考のリソースが割かれてしまう。読者に主人公の心情や会話内容に集中してもらうならば、余計な負担は極力排する方が良い。
また、序盤に主人公の名前がほぼ登場しない。一人称視点で主人公の名前を頻出させるのは難しいところではありますが、読者への印象刷り込みとして、上手いこと多めに盛り込めるのが吉。
◉ 表現力 ◉
《GOOD ◎》
ロードバイクの様子や、情景の表現語彙など、イメージしやすく、かなり良質でした。また、ロードバイクを漕ぐ描写と心情との紐付けも上手くなされています。
《BAD △》
細かい要望になりますが、専門知識も織り込んでほしい。
第2話にてロードバイクの乗り方を説明される場面がありますが、そこは敢えて専門用語や難しい説明を加える事で、ママチャリとは違う特別感を演出できますし、新しいものに触れる主人公に読者を共感させる機会も得られます。
専門的すぎる小説は読者を選ぶ、とは言われますが、今回のシーンでは専門知識の使い所です。文量調節は必要ですが、作者様の文章力ならば上手く織り込めるはずです。
あとは視覚に頼る描写が多いので、聴覚・触覚から得られる情報を意識し、描写にもっと組み込む事。風を切って進む様子を読者に体感させるつもりで。
◉ 構成力 ◉
《GOOD ◎》
地の文は心情描写がやや多めながら、くどくならない範疇。台詞の掛け合いもテンポ感は悪くないです。
《BAD △》
表現力にも絡みますが、一文あたりの字数が多い。文章力が充分あるので内容は読み取れますが、読み取る負荷がかなり大きい。
第1話から一文引用。八一が怪我した脚で登校し、同級生から突き倒され松葉杖を奪われる等の嫌がらせを受けた後のシーン。『3階から落ちた衝撃でヒビの入った松葉杖で苦労して家に帰り「明日から学校、行かないから」と言った僕の姿と表情に両親は困ったような表情を一瞬みせたものの、何も言葉を掛けることはなかった。』帰宅までの様子、両親への宣言、そしてそれに対する反応。一文の中で内容が二転三転し、さらに文全体の主語が『両親』だと分かるまでが非常に長いです。内容は分かるものの、『この文章で一番に伝えたかったものは何か』が希薄になっている。本作では、こういった長文がかなりの頻度で登場していました。都度その内容を汲み取ろうとする事で『読み疲れ』が蓄積されて「疲れたから、また今度読もう」と途中離脱される要因に繋がります。
よく小説の技法で『一文一意』というのが言われますが、長文になってしまっても内容が一貫していれば読みやすいです。内容が切り替わる時は、読点ではなく句点で分けて、読者にわかりやすく示しましょう。
これは余談ですが、あえて一文に多くの意味を詰め込んで、意図的に読み疲れを誘発させる手法もあります。登場人物の不快感や嫌悪感を読者に共感させたい時などに有効です。
◉ 展開力 ◉
《GOOD ◎》
ロードバイクとの出会いと主人公の過去、身体に合ったバイクの購入、中学入学までの試運転と少女との出会い——と、展開自体は着実に進んでいます。各話ごとに主人公の心理的な動きも見られるのが良いですね。
《BAD △》
物語自体もまだ漕ぎ始めの部分なので、特別大きな山場はまだ見られない。発想力部分でも記載しましたが、今後主人公にどういう目的を持ち、どんな壁が立ち塞がり、いかなる変化が訪れるか——それを予期させるものが序盤にもっと欲しかったところ。伏線らしき人物をもっと目立たせても良いかもしれません。
【総合評価】
■■■:発想力
■■■■:人物像
■■■:表現力
■■:構成力
■■■:展開力
★★★(3.0)
【コメント】
主人公のツラい過去を起点にしつつ、心情描写にかなり力の入った作品でした! 新生活のキッカケとして出会ったロードバイクが、主人公をどう成長させていくかが期待されます。
逆風すら撥ね除けるような青春スポーツ作品をお求めの方、オススメです!
作品名:Breathing ーロードバイクと、キミに出会ってー
著者:川中島ケイ
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