第9話
解説エッセイ(第一章・第二章を受けて)
学食での会話や、図書館での指先のすれ違い。
一見すると、ただの青春ラブコメ的シーンに見えるかもしれません。
けれど心理学の視点から見ると、そこには若者が直面する普遍的な葛藤が映し出されています。
亮は「愛があれば未来は作れる」と信じたい理想主義者。
これは心理学でいう 「全能感的な期待」 に近く、まだ社会に出る前の青年にありがちな姿です。
一方で璃子は「奨学金」「就職」「安定」といった現実を直視しています。
これはフロイトのいう 「現実原則」 に対応し、安心や安全を確保しようとする心理です。
二人の間には、理想と現実の不一致(期待不一致) が生じています。
この不一致こそが恋愛関係を揺らし、すれ違いや葛藤を生むのです。
さらに言えば、亮は「安定型」の愛着スタイルに近く、
璃子は「回避型」の傾向を持っているように描かれています。
守られるだけではなく、主体的に未来を選びたい――その自立心が、彼女を複雑にしているのです。
奨学金や就職不安、SNSや推し活といった要素もまた、現代の若者が避けて通れない「あるある問題」です。
それらが恋愛にどう影響するかを物語に織り込むことで、単なる青春小説ではなく「現代のリアルな青春像」を描くことができます。
愛か?お金か?――この問いは単なる物語上の仕掛けではなく、
実際に多くの若者が心の中で繰り返している問いでもあります。
答えは一つではありません。
けれど、こうした葛藤の中でこそ「本当に大切なもの」を探す旅が始まるのだと思います。
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