第6話


第六章 雨の交差点



夜の雨は、街灯を滲ませていた。

璃子の前には二つの影。


ひとつは高級車のドアを開けて待つ翔真。

「君の未来を保証するのは、俺だ」


もうひとつは、傘も差さずに立ち尽くす亮。

「愛があれば、未来を作れる」


胸の奥で響く二つの声。

愛か? お金か?

選ぶべき道は、最初から決められているように思えた。


……でも、その瞬間、璃子は気づいてしまった。


「どうして、二択しかないの?」


自分の声に、自分自身が驚いた。

翔真も、亮も、呆然と璃子を見つめている。


「私は――誰かに救われるだけの存在じゃない」

璃子は強く息を吸い、雨の中で一歩踏み出した。

「自分の未来は、自分で選ぶ。

そして、亮となら、愛も現実も一緒に背負える」


翔真の笑みが消える。

「……夢物語だ」


璃子は首を振った。

「夢じゃない。だって、希望は“誰かから与えられる”ものじゃないから」


亮が息をのんで近づく。

璃子は彼の手を取った。

濡れた指先が絡み合う瞬間、雨音が世界を覆い尽くした。



第六章・結び


愛か? お金か?

その二択を超えて、璃子が選んだのは「共に未来を築く道」だった。

リアルに押し潰されそうな時代だからこそ、彼女は声を上げた。


――希望は、自分でつかむものだ。


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