富岳バスケットボール・デイズ

第2幕

### 第1話：桜舞い散る入学式

　その日、空気は春の柔らかな光に満ちていた。空には雲一つなく、澄み渡った青が広がっている。柊一真は、真新しい制服に袖を通し、胸の奥からこみ上げてくる高揚感と、わずかな緊張感に身を震わせた。富岳第一高校の真新しい制服は、紺色のブレザーに、白のワイシャツ、そして深紅のネクタイ。由季や雄宇、柚希たちとお揃いであることを思い、一真の顔に自然と笑みが浮かぶ。

　富岳第一高校の校門へと向かう道のりも、特別なものに感じられた。由季、雄宇、そして柚希と待ち合わせ、四人で並んで歩く。桜並木から舞い散る花びらが、彼らの新しい門出を祝福するかのように、風にひらひらと舞っていた。由季は、緊張と期待が入り混じった、どこか誇らしげな顔つきで隣を歩いている。彼女の長い黒髪が、風に揺れて、一真の頬を優しく撫でた。

「なんか、すごい緊張するね」

　由季が、そう呟く。その声は、震えていた。

「大丈夫だよ、由季。俺たちが一緒にいるんだから」

　一真は、由季の手をそっと握った。由季の手は、少し冷たかった。由季は、一真の優しさに心を温め、安心したように微笑んだ。由季の隣を歩く雄宇は、由季とは対照的に、どこか不安げな表情を浮かべていた。一真は、そんな雄宇に、どう声をかけたらいいか分からず、ただ見守ることしかできなかった。

「由季と雄宇、やっぱり似てるね。制服が同じだと、余計に似て見える」

　柚希が、由季と雄宇の顔を交互に見ながら、そう呟く。雄宇は、柚希の言葉に、一瞬、身をこわばらせた。柚希は、由季と雄宇が双子の姉妹であることを知っている、数少ない友人だ。由季と雄宇は、中学時代、それぞれ別の名前で過ごし、その事実を隠してきた。一真と柚希と結季以外には、その秘密を話していない。

「う、うん。まあ、姉妹だしね」

　雄宇は、そう言って、ぎこちなく笑った。柚希は、雄宇の反応に、何かを察したように、ただ黙って微笑んだ。

　校門をくぐると、人の波に飲み込まれた。真新しい制服に身を包んだ新入生たちが、希望に満ちた表情で、これから始まる高校生活に胸を膨らませていた。在校生たちが、新入生を温かく迎え入れてくれる。一真は、由季の手を握り直し、雄宇と柚希と、固い絆で結ばれていることを改めて感じた。

　入学式の式典が終わり、いよいよクラス発表が行われる。一真は、由季と雄宇、柚希と、固唾をのんで掲示板を見つめた。

「一真、どのクラスがいいかな？」

　由季が、そう尋ねる。

「由季と同じクラスがいいな」

　一真は、由季の目をまっすぐに見つめ、そう答えた。由季の顔が、わずかに赤くなる。由季は、恥ずかしそうに、はにかんだ。

「私も、一真くんと同じクラスがいい」

　由季は、そう言って、一真にそっと寄り添った。一真は、由季の温かさを感じ、胸の鼓動が速くなるのを感じた。

　掲示板には、クラスごとに新入生の名前が張り出されていた。一真は、自分の名前を探し、そして、由季の名前を探した。

「一真！　俺たち、同じクラスだ！」

　一真は、自分の名前の隣に、由季の名前を見つけ、由季の手を握りしめた。由季は、一真の言葉に、目を丸くする。

「ほんと？　一真くん、嘘でしょ？」

　由季は、自分の名前を確認し、満面の笑みを浮かべた。由季は、一真に抱きつき、喜びを分かち合った。雄宇と柚希も、二人の喜びを祝福してくれた。

「おめでとう、一真、由季」

　雄宇が、そう言って、二人に微笑む。

「よかったね、由季。一真くんと一緒で」

　柚希も、そう言って、二人に微笑んだ。その笑顔は、どこか寂しげだった。

　クラス発表が終わると、それぞれが自分のクラスへと向かう。一真は、由季と一緒に教室へと向かう。由季は、一真と二人きりになれることに、少し照れくさそうにしていた。

「一真くんと一緒で、よかった。心強いな」

　由季が、そう呟く。

「俺もだよ、由季。これからも、ずっと一緒にいよう」

　一真は、由季の頭を優しく撫でた。由季は、一真の優しさに、顔を赤らめた。

　教室に着くと、すでに多くの新入生が集まっていた。一真と由季は、席を探し、隣同士に座った。そして、クラス委員の発表が行われる。一真と由季は、クラス委員に選ばれた。

「一真くんとまた一緒に活動できるなんて、嬉しいな」

　由季が、そう言って、一真の顔をのぞきこむ。その瞳は、希望に満ちていた。

「ああ。俺も嬉しいよ、由季」

　一真は、由季の手を握り、二人の新しい高校生活が、これから始まることを実感した。由季と一真、二人の視線が交わり、互いの存在を確かめ合う。その瞬間、二人の絆は、より一層強固なものへと変わった。由季は、一真の隣にいることが、自分の居場所であることを確信した。

　教室の窓から見える景色は、どこまでも青く澄んでいた。桜の花びらが、風に舞い、新しい物語の始まりを告げているようだった。一真は、由季と、そして雄宇と柚希と、この新しい場所で、どんな物語を紡いでいくのだろうか。期待と、わずかな不安が、胸の中で混ざり合った。しかし、一真は、由季と一緒なら、どんな困難も乗り越えられると信じていた。由季もまた、一真の隣にいることで、勇気と希望をもらっていた。二人の新しい物語が、今、静かに幕を開けた。

### 第2話：新入生オリエンテーションとバスケ部始動

　入学式の翌日。柊一真は、由季とともに富岳第一高校の体育館にいた。新入生オリエンテーションの一環として、各部活動の紹介が行われる。体育館の床は、ワックスがけされたばかりで、光を反射し、真新しい制服を身につけた新入生たちの熱気で満ちていた。一真の隣に座る由季は、緊張した面持ちで、由季と雄宇、そして柚希は、女子バスケ部に入部することに決意を固めていた。

「由季、本当にバスケ部に入るのか？」

　一真がそっと声をかけると、由季は力強く頷いた。

「うん。バスケが好きなのはもちろんだけど、全国大会で優勝するという目標もあるから」

　由季の瞳は、強い意志の光を宿していた。彼女の完璧主義な性格は、バスケというスポーツを通して、さらに磨きがかかっていた。一真は、そんな由季の姿を見て、彼女のことを誇りに思った。

　女子バスケ部の紹介が始まり、由季、雄宇、柚希、詩織、結季の五人が、女子バスケ部の顧問である先生に連れられて、体育館のステージに上がった。

「由季ちゃんたち、すごいね！」

　雄宇が、由季の隣で目を輝かせながら言った。

「当たり前じゃない。あたしたち、絶対全国大会で優勝するんだから」

　柚希がそう言って、雄宇に微笑む。その笑顔は、中学時代に由季に対抗心を燃やしていた頃のそれとは違う、穏やかで優しいものだった。

　女子バスケ部の紹介が終わると、男子バスケ部の紹介が始まった。一真は、男子バスケ部の顧問の先生に連れられて、体育館のステージに上がった。

「一真くんもバスケ部に入るんだね」

　由季が、一真に声をかける。

「ああ。由季が頑張るんだから、俺も頑張らないと」

　一真はそう言って、由季に微笑んだ。由季は、一真の優しさに心を温め、彼のことを誇りに思った。

　男子バスケ部の紹介が終わり、新入生オリエンテーションが終わると、いよいよ部活動が本格的に始まった。由季、雄宇、柚希、詩織、結季の五人は、女子バスケ部の新入生チームを結成する。一方、一真は、男子バスケ部の新入生チームを結成する。

「由季、一緒に頑張ろうな」

　一真が、由季に声をかける。

「うん。一真くんも、バスケ部頑張ってね」

　由季はそう言って、一真に微笑んだ。

　由季と一真、二人は、それぞれの場所で、バスケという共通の目標に向かって、新しい一歩を踏み出した。由季は、女子バスケ部のエースとして、全国大会での優勝を目指す。一真は、男子バスケ部の一年生として、由季に負けないように、日々練習に励むことを心に誓う。

　二人の新しい高校生活が、今、静かに幕を開けた。そして、その二人の関係は、バスケというスポーツを通して、さらに深く、強固なものへと変わっていくことを予感させるのだった。

### 第3話：男子・女子バスケ部の洗礼

　富岳第一高校の体育館は、新入生歓迎ムードとは一変し、張り詰めた緊張感に包まれていた。一年生チームがそれぞれの先輩チームから「洗礼」を受ける日。真新しいユニフォームに袖を通した柊一真は、由季の女子バスケ部の一年生チームの練習試合を、コートサイドから見つめていた。

　「ドンッ！」という、ゴール下でボールを奪い合う音が響く。女子バスケ部の一年生チームは、由季、雄宇、柚希、詩織、結季の五人が、二年生チームと対戦していた。由季は、女子バスケ部のエースとして、チームを引っ張っていた。しかし、二年生チームのキャプテン、鈴木花は、由季よりも一回り大きく、力強いプレイで由季を圧倒する。由季の力強いシュートも、鈴木の前にことごとくブロックされてしまう。由季の顔には、苛立ちと焦りが浮かんでいた。

「由季ちゃん、大丈夫！？」

　雄宇が由季に声をかける。雄宇は、パワーフォワードとして、リバウンドで奮闘していたが、二年生の壁は厚かった。

「……うん、大丈夫。まだ、これからだから」

　由季はそう言って、雄宇に微笑んだが、その笑顔はどこかぎこちなかった。由季の完璧主義な性格が、この敗北を許せずにいるようだった。

　柚希は、シューティングガードとして、素早い動きでコートを駆け回り、由季と雄宇をサポートする。しかし、二年生チームの副キャプテン、斎藤美咲の正確なパスとシュートに、一年生チームは翻弄されてしまう。柚希は、美咲のプレイを見て、由季との対抗意識を燃やし、一真との関係を、もっと特別なものにしたいという独占欲を強める。

「みんな、落ち着いて！　まだ、始まったばかりだよ！」

　詩織が、ポイントガードとして、チームの司令塔の役割を担い、冷静な判断力でチームを鼓舞する。しかし、彼女の言葉も、二年生チームの圧倒的な実力の前には、届かなかった。

　結季は、スモールフォワードとして、由季たちのサポートに徹していた。彼女の地味だが、チームに貢献する縁の下の力持ちのようなプレイは、二年生チームの攻撃を、少しだけ食い止めることができた。

　女子一年生チームは、二年生チームに完敗した。

　次に、男子バスケ部の一年生チームが、二年生チームと対戦する。一真は、一年生チームのキャプテンとして、チームを引っ張る。一真の重戦車を思わせるがっしりした体格が、ゴール下で力強いポストプレイを繰り広げる。

「一真くん、頑張って！」

　由季と雄宇、柚希たちが、コートサイドから一真に声援を送る。その声援に、一真は、由季との関係を、もっと特別なものにしたいという想いを強める。

　しかし、二年生チームのキャプテン、伊藤隼人は、昨年からレギュラーとして活躍する実力者だった。クールで無口だが、内に秘めた闘志は強く、一真の力強いポストプレイをことごとくブロックする。一真は、隼人の高い壁の前に、思うようにプレイすることができなかった。

　「ドンッ！」という、一真と隼人の体がぶつかる音が響く。一真は、隼人の力強いプレイに、歯を食いしばる。

「くそっ……！」

　一真は、悔しそうに顔を歪ませる。

　男子一年生チームも、二年生チームに完敗した。

　試合が終わると、一真と由季は、それぞれのチームで敗北を喫したことを悔やむ。しかし、二人の瞳には、敗北を乗り越え、成長しようとする強い意志の光が宿っていた。

「由季、俺たち、まだまだだな」

　一真が由季に声をかける。

「うん。でも、あたしたち、これからだから。一真くんも、一緒に頑張ろうね」

　由季は、一真に微笑んだ。その笑顔は、中学時代にクラス委員の仕事を通して出会った頃と何も変わらない、清楚で真面目な由季の笑顔だった。

　由季と一真は、それぞれのチームで、バスケという共通の目標に向かって、新たな一歩を踏み出した。由季は、女子バスケ部のエースとして、全国大会での優勝を目指す。一真は、男子バスケ部の一年生として、由季に負けないように、日々練習に励むことを心に誓う。

　二人の新しい高校生活が、今、静かに幕を開けた。そして、その二人の関係は、バスケというスポーツを通して、さらに深く、強固なものへと変わっていくことを予感させるのだった。

### 第4話：女子一年生チームの女子会

　柊一真と由季たちが高校バスケ部に入部し、二年生チームからの「洗礼」を受けてから数日後。女子一年生チームのメンバーは、試合の動画を見ながら反省会を開くため、由季の部屋に集まっていた。リビングの大きなソファに五人が集まり、由季が持ってきたノートパソコンの画面を食い入るように見つめている。試合の動画が再生されるたびに、彼女たちの顔に、悔しさや疲労感が浮かび上がる。

「あの時、由季ちゃんがシュートを打った瞬間に、花先輩がブロックに入ったんだよね」

　御影詩織が、冷静な声でそう言った。詩織は、女子一年生チームのポイントガードとして、試合の動画を分析していた。彼女の言葉には、感情的なものよりも、論理的で客観的なものが多く含まれている。詩織は、由季の完璧主義な性格を理解し、彼女の努力を尊重していた。

「うん。花先輩は、私がシュートを打つタイミングを、完全に読み切っていた。私のプレイは、まだパターンが少なすぎるんだと思う」

　由季が、そう言って、悔しそうに唇を噛んだ。由季は、女子一年生チームのリーダーとして、この敗北を真摯に受け止めていた。

「由季ちゃん、気にしすぎだよ。あたしたち、まだ一年生なんだから」

　佐倉雄宇が由季に声をかける。雄宇は、女子二年生チームとの対戦で、過負荷をかけてしまい、疲労困憊になっていた。しかし、彼女の瞳には、由季の悔しさを理解し、彼女を支えようとする強い意志の光が宿っていた。

「由季ちゃん、雄宇も、練習中に過負荷をかけてしまったことを、すごく悔やんでたじゃない。由季ちゃんも、雄宇も、みんな、真剣にバスケに向き合っているからこそ、悔しいんだよ」

　東雲柚希が、雄宇の様子を見て、彼女を気遣う。柚希は、由季と雄宇が双子の姉妹であることを知っている。柚希にとって、雄宇は、由季と同じくらい大切な存在だった。

「柚希ちゃん……」

　雄宇は、柚希の優しさに心を温め、彼女に感謝の言葉を述べた。

「由季、私にできることは、試合の動画を分析して、みんなに助言することだけだけど……」

　詩織がそう言って、由季に助言する。

「詩織、ありがとう。詩織の助言は、私たちにとって、すごく心強いよ」

　由季はそう言って、詩織に微笑んだ。

「あたし、由季ちゃんに負けないように、たくさん自主練するから！」

　雄宇が、そう言って、由季に宣戦布告する。

「うん。雄宇。私も、雄宇に負けないように、たくさん自主練するから」

　由季はそう言って、雄宇に微笑んだ。その笑顔は、中学時代にクラス委員の仕事を通して出会った頃と何も変わらない、清楚で真面目な由季の笑顔だった。

「みんな、ありがとう。あたしたち、まだ始まったばかりだけど、必ず全国大会で優勝するから」

　由季は、そう言って、女子一年生チームのメンバーに頭を下げた。その姿は、一真の隣で、由季の心を癒せる場所になれたらいいな、と願っていた頃の由季とは違う、強い意志を持ったリーダーの姿だった。

「由季ちゃんの、その気持ち、あたし、すごく好きだよ」

　結季が、そう言って、由季に微笑んだ。結季は、由季と雄宇、そして柚希と、バスケという共通の目標に向かって、一緒に頑張っていくことを決意する。

　女子一年生チームの女子会は、夜遅くまで続いた。由季、雄宇、柚希、詩織、結季の五人は、それぞれの弱点を補い合うための自主練の方針を立てた。そして、互いに励まし合い、チームとしての結束を固めていく。

　一真は、由季たちが反省会をしている間、リビングの隣の部屋で、彼女たちの声に耳を傾けていた。由季、雄宇、そして柚希。三人のヒロインが、バスケという共通の目標に向かって、互いに支え合い、高め合っていく姿に、一真は心を打たれた。由季との関係が、これからさらに深く、温かいものになっていく予感を感じていた。

### 第5話：雄宇の頼みとマッサージ

　女子バスケ部の一年生チームが二年生チームからの「洗礼」を受けてから数日後。由季たちの反省会が終わる頃合いを見計らい、柊一真は彼女たちのための差し入れを調理し始めた。母の佳代子も雄宇も、引越しの片付けで疲れているため、一真は一人で料理を作ることにしたのだ。一真は、冷蔵庫から材料を取り出し、手際よく調理していく。由季たちが、反省会で疲れた体を癒せるようにと、一真は心を込めて料理を作った。

　由季の好物のチーズケーキと、雄宇の好物のフライドチキン、そして柚希の好物のカルボナーラ。一真は、それぞれの好物を調理しながら、彼女たちの笑顔を思い浮かべていた。料理の匂いがリビングに漂い始めると、由季、雄宇、柚希が、一真のいるキッチンに顔を出した。

「一真くん、いい匂い！何作ってるの？」

　雄宇が、目を輝かせながら一真に尋ねた。

「みんな、反省会お疲れ様。反省会で疲れた体を癒せるようにと、俺が作った料理だ。みんなで食べよう」

　一真は、そう言って、由季たちに料理をふるまった。由季は、一真が自分のために作ってくれた料理に、心を温めた。

「一真くん、ありがとう。すごく美味しいよ」

　由季がそう言うと、一真は嬉しそうに微笑んだ。

「一真、雄宇にマッサージしてくれないか？」

　柚希がそう言って、一真に頼んだ。柚希は、練習中に過負荷をかけてしまった雄宇の様子を心配していた。

「雄宇、大丈夫か？」

　一真は、雄宇の顔をのぞきこむ。

「うん。大丈夫。でも、一真くん、マッサージしてくれたら、もっと元気になると思う」

　雄宇がそう言って、一真に甘えるように身を寄せる。

「わかった。じゃあ、風呂でマッサージをしてやるよ」

　一真は、雄宇の頼みを聞き入れ、彼女と一緒に風呂に入ることになった。由季と柚希は、二人の様子を複雑な表情で見つめていた。由季は、一真の恋人として、雄宇と一真が二人きりで風呂に入ることに不満を覚えた。しかし、雄宇の体を心配する気持ちと、一真を独占したい気持ちの間で葛藤する。柚希は、雄宇が一真と二人きりで風呂に入ることに、由季への対抗心を燃やす。

　風呂場は、湯気と石鹸の香りで満たされていた。由季と柚希はすでに風呂を終えており、雄宇と一真の二人が湯船に浸かっている。雄宇は、疲労困憊の体を湯船に沈め、気持ちよさそうに目を閉じていた。一真は、雄宇の隣に座り、彼女の肩を優しく揉み始める。雄宇の肩の筋肉は、バスケの練習で硬くなっており、一真の指先が触れるたびに、雄宇は小さく声を漏らす。

「一真くん、ありがとう。すごく気持ちいいよ」

　雄宇はそう言って、一真に微笑んだ。その笑顔は、中学時代に一真に助けてもらった頃と何も変わらない、純粋で無邪気な笑顔だった。一真は、雄宇のその笑顔に心を温め、彼女の疲労を少しでも和らげてあげたいと、心を込めてマッサージを続けた。

　一真は、雄宇の肩から腕、そして背中へと、優しくマッサージをしていく。雄宇の体は、バスケの練習で鍛え上げられたアスリートの体だった。一真は、そんな彼女の努力を、誰よりも理解してくれている。彼の優しさと誠実さに触れ、雄宇の心は、少しずつ溶けていくようだった。

「一真くん……」

　雄宇は、一真にそう語りかける。

「うん、どうした？」

「あたし、一真くんがいてくれて、本当によかった」

　雄宇は、一真の胸に顔をうずめ、彼の温もりを全身で感じていた。由季と離れ離れになっていた間の寂しさや、由季への複雑な思いが、一真の腕の中で、少しずつ溶けていくようだった。一真は、雄宇の頭を優しく撫で、彼女の孤独な心を癒していく。

　一真の温もりが、雄宇の心を癒していく。雄宇は、一真との二人きりの時間が、雄宇にとってかけがえのないものになっていく予感を感じていた。

### 第7話：ゴールデンウィークの家族旅行

　ゴールデンウィークが始まり、柊一真の家族である誠一郎、佳代子、そして立花由季と佐倉雄宇の5人は、由季の提案で温泉旅行に出かけることになった。新緑が眩しい山道を走る電車に揺られながら、由季は一真の隣で、家族の一員として初めての旅行ができることに胸を弾ませていた。雄宇もまた、中学時代に一真にタクシーで見送られて以来、母親の再婚で再会するまでの約1年半、会うことも話すこともなかった。その間に募らせた一途な想いを抱え、この貴重な時間を心待ちにしていた。由季も雄宇も、この旅行を通して一真との関係を、より特別なものにしたいと強く願っていた。

　富岳市から電車に揺られること二時間。一行が到着したのは、山間にひっそりと佇む温泉旅館だった。客室に荷物を置くと、由季と雄宇、そして一真は、誠一郎と佳代子に見送られ、さっそく露天風呂へと向かった。湯気が立ち込める露天風呂は、山々の緑と空の青に囲まれ、幻想的な雰囲気を醸し出している。

　由季は、一真の恋人として初めて彼の前で肌をさらすことに、少しだけ戸惑いを感じていた。白いタオル一枚で身を隠しながら湯船の縁に腰掛けると、熱気で火照る肌に、心臓の鼓動が重なっていく。だが、一真は由季の緊張を察したかのように、優しい眼差しを向けてきた。その温かさに、由季の心の戸惑いはすぐに溶けて消えた。

「由季、こっちにおいで」

　一真がそう言って隣に立つと、由季はゆっくりと湯船に浸かった。熱い湯が全身を包み込み、毛穴という毛穴が解放されるような感覚に、由季は小さく息を漏らす。一真は由季の背後から近づき、そっと体を洗い始めた。彼の指先が、由季の背中をなぞるたびに、ぞくりと全身に快感が走り、肌が粟立つのを感じた。由季は、一真の肩にそっと手を回し、優しくマッサージしながら、彼の存在が自分にとってどれほど大きなものかを改めて実感していく。由季がそっと一真の太腿に触れると、筋肉の硬さと温かさが伝わってきた。

「気持ちいいよ、由季」

　一真の甘い声が鼓膜を震わせ、由季は幸福で胸がいっぱいになった。一真の恋人であることの喜びと、彼の温もりに包まれる安心感。この特別な時間が、由季と一真の関係をさらに深く、強固なものへと変えていくことを予感した。

　その間、雄宇は静かに二人の様子を見つめていた。由季と一真の親密な雰囲気に、心臓が締め付けられるような痛みを感じる。しかし、雄宇は、この機会を逃すわけにはいかないと、意を決して一真に話しかけた。

「一真くん……中学の時、バスケの練習試合で怪我をしたあたしを、タクシーに乗せて自宅まで送ってくれた日……覚えてる？」

　雄宇の言葉に、一真はあの日のことを鮮明に思い出した。雄宇は、由季と離れて暮らしていた間の寂しさ、そして一真に会えなかった時間の長さを、一つひとつ丁寧に語った。会いたくても会えなかった約1年半の間に熟成された、一途で深い愛情。雄宇の瞳は、その想いの深さに満ちていた。

「あたし、あの時からずっと……一真くんに会いたかった」

　雄宇の正直な告白に、一真は心を打たれた。由季の妹というだけでなく、雄宇が自分に対してこれほど深い感情を抱いていたことを知り、一真の心は複雑な感情で満たされた。

　温泉から出ると、一行は夕食を楽しみ、夜には一つの部屋に集まり、語り合った。そして、眠りにつく時間になると、由季と雄宇、そして一真は、由季の提案で、一つのベッドで添い寝をすることになった。由季は、一真の腕の中にすっぽりと収まり、彼の規則正しい鼓動をすぐそばで感じていた。一真の温かい腕が由季の肩を抱き寄せ、由季は彼の恋人であることに改めて幸福を感じる。

　雄宇は、一真と由季の間に静かに横たわり、由季と離れて暮らしていた間の寂しさや、由季への複雑な思いを語った。雄宇の言葉は、由季の恋人という立場、そして雄宇の新しい家族という立場に、一真を独占したいという強い独占欲が入り混じった複雑な心情を物語っていた。

「由季はあたしの姉だけど……でも、一真くんはあたしだけのものにしたい」

　雄宇の言葉に、一真は胸の奥が締め付けられるのを感じた。由季と雄宇、二人の間で揺れる一真の心。由季の恋人としての責任感と、雄宇の一途な想い。ゴールデンウィークの家族旅行は、一真、由季、雄宇、そして誠一郎と佳代子にとって、忘れられない思い出となった。そして、この旅行は、物語の次の展開へとつながっていく、重要なターニングポイントとなった。

### 第8話：由季の家出と一真の保護

　その夜、嵐のような雨が窓を叩く中、由季は恐怖と絶望に苛まれていた。父による性的暴行未遂。それは、由季の心を深く抉り、その奥底に拭い去れない傷跡を残していた。震える手でスマートフォンを握りしめ、由季は一真の家に家出してきた。インターホンを押す指先は、冷たい雨に濡れて、震えていた。

　玄関のドアが開くと、そこに一真の姿があった。由季は、一真の顔を見た瞬間、張り詰めていた糸がプツンと切れるような感覚を覚えた。彼女の心は、この出来事によって完全に折れ、今までの一真の恋人としての矜持や、雄宇に対する対抗心といったものは、脆くも崩れ去っていた。由季は、怯えきった子鹿のように、一真の胸に飛び込み、全身を震わせた。その震えは、まるで冬の嵐に晒された小鳥のようだった。

「由季、どうしたんだ？　びしょ濡れじゃないか」

　一真は、由季のただならぬ様子に、ただならぬ事態が起こったことを察した。由季を家の中へと招き入れ、タオルを渡すと、一真は優しく由季の頭を拭いた。由季は、一真の温もりに触れると、さらに激しく震え始めた。

「一真くん……助けて……」

　由季はそう呟くと、一真の胸に顔をうずめ、大粒の涙を流した。その涙は、一真の胸を濡らし、彼の心に重くのしかかった。彼女の言葉には、自分を救ってくれる唯一の存在である一真に、すべてを委ねたいという切ない願いが込められていた。

「何があったんだ、由季。話せるか？」

　一真が優しく問いかけると、由季は震える声で、その日の出来事を語り始めた。

　由季の父が、酔った勢いで、由季の部屋に押し入り、由季の体を触ろうとしたのだという。由季は、必死に抵抗し、父を突き飛ばして逃げてきたのだと。由季の瞳は、恐怖と絶望に歪んでおり、その瞳からは、とめどなく涙が溢れ出していた。由季が語る言葉は、まるで千切れていく糸のように、か細く、途切れ途切れだった。

　由季の心と体に深く刻まれた恐怖と絶望。由季の話を聞き終えると、一真の胸には、由季の父に対する激しい怒りがこみ上げてきた。同時に、由季を絶対に守るという強い決意が固まった。彼女の体はもう、彼女自身のものではなくなってしまったかのような、重く冷たい感覚に支配されていた。唯一の救いは、自分を抱きしめる一真の腕の温かさだけだった。

「由季、大丈夫だ。俺が、由季を守るから」

　一真は、由季の小さな体を抱きしめながら、自身の両親である誠一郎と佳代子に、由季の身に起こった出来事を説明した。誠一郎と佳代子は、一真の話を真剣な面持ちで聞き、由季の前に座り込むと、静かに由季の頭を撫で、優しく抱きしめた。

「由季さん、よく頑張ったね。怖い思いをさせて、本当にごめん」

　佳代子の優しい言葉に、由季の瞳から、再び大粒の涙がこぼれ落ちる。誠一郎は、由季に静かに話しかけた。

「由季さん、この家は、由季さんの家です。由季さんが安心できる場所です。もう、怖い思いはさせません」

　誠一郎と佳代子の温かい言葉と、優しく抱きしめる温もりが、由季の心を少しだけ軽くしたようだった。彼女は、一真と、彼の家族の温かさに触れ、自分にはもう、自分自身でいることよりも、この温かい場所に「属すること」こそが何よりも重要だと感じ始めた。一真のそばにいること、彼の「物」として扱われること、それが自分を唯一守ってくれる手段なのだと、本能的に理解したのだった。

　誠一郎は、一真に、由季の父に法的措置を取ることを決意する。

「一真、由季さんの父親に、法的措置を取ろう。由季さんがもう二度と、怖い思いをしないように」

　誠一郎の言葉に、一真は力強く頷いた。一真は、由季の保護者となり、由季を守ることを決意した。由季の父に対する激しい怒りを原動力に、一真は由季を守るための行動を起こした。

　その夜、一真は由季を自分の部屋へと連れて行った。由季は、一真の部屋のベッドの上で、膝を抱えて座っていた。由季の顔は、まだ恐怖と絶望に歪んでおり、その瞳は、怯えきった子鹿のように震えていた。

「由季、大丈夫だ。俺が、由季のそばにいるから」

　一真は、由季の隣に座り、彼女の頭を優しく撫でた。由季は、一真の温もりに触れると、震える体を一真の胸に預ける。一真の規則正しい鼓動が、由季の耳に心地よく響き、由季の心が少しずつ落ち着いていく。

「一真くん……」

　由季はそう呟くと、一真の瞳をまっすぐに見つめた。その瞳には、まだ恐怖と絶望が残っているものの、一真への深い愛情と、彼の存在によって守られているという安心感が入り混じっていた。彼女は、もはや一真を「自分の恋人」として所有するのではなく、一真に「所有される」ことで、心の安全を保とうとしていた。由季は、一真に抱きつきながら、ゆっくりと目を閉じた。由季と一真の二人の新しい物語が、今、静かに幕を開けた。そして、その二人の関係は、由季の家出と、一真の保護を通して、さらに深く、強固なものへと変わっていくことを予感させるのだった。

### 第9話：由季の初体験

　その夜、一真の部屋のベッドの上で、由季は膝を抱えて座っていた。窓の外では、まだ雨音が聞こえてくる。由季の顔は、恐怖と絶望に歪んでおり、その瞳は、怯えきった子鹿のように震えていた。先程、父に襲われそうになった時の、あの忌まわしい感触が、まだ肌に残っているような気がして、全身が粟立つ。

「由季、大丈夫だ。俺が、由季のそばにいるから」

　一真は、由季の隣にそっと腰掛け、彼女の頭を優しく撫でた。その温かい手に触れると、由季の心に、張り詰めていた緊張の糸が、少しずつ緩んでいくのを感じた。由季は、震える体を一真の胸に預け、彼の規則正しい鼓動に耳を澄ませた。その音は、まるで自分を包み込む温かい毛布のように、由季の心を癒していく。

「一真くん……」

　由季は、か細い声で一真を呼んだ。一真は、由季の体を優しく抱きしめ、由季の背中にそっと手を回す。由季は、一真の温もりに触れると、さらに強く彼に体を預けた。由季の心は、この出来事によって完全に折れ、今までの一真の恋人としての矜持や、雄宇に対する対抗心といったものは、脆くも崩れ去っていた。自分を救ってくれる唯一の存在である一真に、すべてを委ねたいという切ない願いが、由季の心を支配していた。

「ねえ、一真くん。全部、忘れさせて」

　由季は、そう呟くと、一真の瞳をまっすぐに見つめた。その瞳には、恐怖と絶望、そして、一真への深い愛情が入り混じっていた。

「まだ、残っているなら……この処女を、一真くんにあげる」

　由季は、そう言って、一真の首に腕を回した。由季の言葉に、一真は驚きを隠せない。由季は、自分の体が一真の存在によって特別な意味を持つようになったと、彼の前で初めて言葉にしたのだ。彼女の言葉は、由季の一真への深い愛情と、二人の将来への希望を物語っていた。

　一真は、由季の言葉に心を打たれ、彼女の気持ちを受け入れた。彼は、由季の傷ついた心を癒すため、由季の望み通りにすることを決意する。一真は、由季の唇にそっと唇を重ねた。それは、由季の不安をすべて取り除き、彼の恋人であることに改めて幸福を感じさせる、甘く、優しいキスだった。

　由季の唇から、甘く、温かい息が漏れる。一真は、由季の唇を優しく貪り、由季の体にそっと手を回した。由季の肌は、まだ少し冷たかったが、一真の温もりに触れると、ゆっくりと温かくなっていく。由季は、一真の温もりに身を委ね、彼の胸に顔をうずめた。

　一真は、由季の服をゆっくりと脱がせていく。由季は、一真の優しい手つきに、羞恥心を感じながらも、彼の優しさに心を委ねた。服がすべて脱がされると、由季の白い肌が、一真の瞳に映る。由季の肌は、まるで雪のように白く、滑らかだった。

「由季……」

　一真は、由季の肌を優しく撫でた。由季は、一真の優しい手つきに、全身が粟立つのを感じた。由季は、一真の温かい手に触れるたびに、心が温かくなっていくのを感じた。

　一真は、由季を優しくベッドに横たえた。由季は、一真の優しい手つきに、体を震わせながらも、彼の優しさに心を委ねた。一真は、由季の体にそっと唇を重ねた。由季の体は、一真の唇に触れるたびに、甘く、熱い快感が全身を駆け巡る。

　由季は、一真の愛撫に身を任せ、彼の優しさに全身が溶けてしまいそうな感覚に襲われた。そして、二人の体が一つになろうとしたその瞬間、由季の体に、かすかな痛みが走る。由季は、その痛みに、一瞬だけ体を硬直させた。だが、その痛みは、由季の心を支配していた恐怖と絶望を、少しずつ洗い流していくようだった。

「あっ……残ってた」

　由季はそう呟くと、一真の胸に顔をうずめ、大粒の涙を流した。その涙は、安堵の涙だった。一真にすべてを捧げられたこと、まだ残っていた自分を、一真にあげられたこと。その事実が、由季の心の傷を、少しだけ癒してくれたようだった。

「一真にあげられて……嬉しい」

　由季は、安堵の涙を流しながら、一真にそう告げる。一真は、由季の言葉に心を打たれ、彼女を強く抱きしめた。

　由季と一真の二人の新しい物語が、今、静かに幕を開けた。そして、その二人の関係は、由季の初体験を通して、さらに深く、強固なものへと変わっていくことを予感させるのだった。

### 第10話：由季の引越

　由季の家出から数日後。柊一真の家に、静かな引越し作業が行われていた。由季の父親による性的暴行未遂は、誠一郎が主導した法的措置によって、由季の父親が逮捕されるという結末を迎えていた。一真の家には、由季の最低限の荷物だけが運び込まれた。由季の私物は、まるで彼女の過去を物語るかのように、どれもが簡素で、必要最低限のものばかりだった。

「由季、これで、もう大丈夫だから」

　一真がそう言って、由季の小さな手を握った。由季の手は、まだ少し冷たかったが、一真の温もりに触れると、少しずつ温かくなっていく。由季は、一真にそっと微笑んだ。その笑顔は、中学時代にクラス委員の仕事を通して出会った頃と何も変わらない、清楚で真面目な由季の笑顔だった。しかし、その笑顔の奥には、一真だけが知る、繊細で脆い一面が隠されていることを、一真は知っていた。

　由季の新しい部屋は、一真の部屋の隣だった。誠一郎と佳代子が、由季が安心できるようにと、一真の部屋の隣の部屋を由季の部屋として用意してくれたのだ。由季の部屋は、以前一真が使っていた部屋で、一真の私物も少しだけ残っていた。由季は、一真の部屋の隣に、自分の部屋ができたことに、心を温めた。

「由季、何か必要なものがあれば、いつでも言ってくれ」

　一真がそう言って、由季の頭を優しく撫でた。由季は、一真の温もりに触れると、震える体を一真の胸に預けた。一真の規則正しい鼓動が、由季の耳に心地よく響き、由季の心が少しずつ落ち着いていく。

「一真くん……ありがとう」

　由季はそう呟くと、一真の瞳をまっすぐに見つめた。その瞳には、まだ恐怖と絶望が残っているものの、一真への深い愛情と、彼の存在によって守られているという安心感が入り混じっていた。彼女は、もはや一真を「自分の恋人」として所有するのではなく、一真に「所有される」ことで、心の安全を保とうとしていた。由季は、一真に抱きつきながら、ゆっくりと目を閉じた。由季と一真の二人の新しい物語が、今、静かに幕を開けた。そして、その二人の関係は、由季の引越しを通して、さらに深く、強固なものへと変わっていくことを予感させるのだった。

　その日の夜、由季は、自分の部屋のベッドの上で、一真の温もりを感じながら、ゆっくりと目を閉じた。一真の部屋から聞こえてくる、かすかな物音。それは、由季にとって、何よりも安心できる音だった。由季は、一真の部屋の隣にいることで、自分の居場所を見つけたようだった。

　由季は、一真の部屋の隣で、新しい生活を始める。そして、その新しい生活は、由季と一真、そして雄宇と柚希の関係を、さらに複雑に絡み合わせていくことを予感させるのだった。

### 第10話：由季の引越

　それは、唐突な終わりだった。由季の父親が逮捕された、という知らせが、柊家に届いたのは、由季が一真の家に身を寄せてから数日後のことだった。誠一郎の力強い後押しと、由季の勇気ある証言が、由季の父親の悪行を明らかにした。警察の捜査により、由季の父親は、過去にも同様の犯罪を繰り返していたことが判明し、由季は、一真の家族の温かい保護の元で、ようやく心の安寧を取り戻すことができた。

　由季の父親は、由季の目の前から、二度と姿を現すことはなかった。由季は、父親がいなくなったことで、ようやく重い鎖から解き放たれたような解放感を感じた。しかし、同時に、これまでの由季の世界のすべてが崩壊したという空虚さも感じていた。そんな由季の心を埋めてくれたのは、一真の存在だった。一真は、由季の隣に寄り添い、由季の心に温かい光を灯してくれた。

　由季は、一真の家に身を寄せるようになってから、一真の部屋の隣の部屋で眠るようになった。一真の部屋から聞こえてくる、かすかな寝息。それは、由季にとって、何よりも安心できる音だった。由季は、一真の部屋の隣にいることで、自分の居場所を見つけたようだった。

　ある日の午後、由季は、一真の家族である誠一郎と佳代子に、由季の今後の生活について相談された。由季は、誠一郎と佳代子に、このまま一真の家に住み続けたい、と告げた。誠一郎と佳代子は、由季の言葉を真剣な面持ちで聞いた。誠一郎と佳代子は、由季の言葉に深く頷き、由季を家族の一員として迎え入れることを決意してくれた。

「由季さん、ようこそ、私たちの家族へ」

　佳代子の優しい言葉に、由季の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。その涙は、安堵と、一真の家族への感謝の涙だった。由季は、佳代子の温かい腕の中で、深い幸福感に包まれた。由季は、一真の家族の温かさに触れ、自分にはもう、自分自身でいることよりも、この温かい場所に「属すること」こそが何よりも重要だと感じ始めた。

　由季の引っ越しは、静かに、そして、確実に進められた。由季の私物は、まるで彼女の過去を物語るかのように、どれもが簡素で、必要最低限のものばかりだった。由季の部屋は、一真の部屋の隣に用意された。誠一郎と佳代子が、由季が安心できるようにと、一真の部屋の隣の部屋を由季の部屋として用意してくれたのだ。由季は、一真の部屋の隣に、自分の部屋ができたことに、心を温めた。

　由季は、引っ越し作業が終わり、自分の部屋で一人、静かに一真の帰りを待っていた。一真が部活から帰ってきて、由季の部屋を訪ねてきたとき、由季は、今まで抱えていた感情をすべて一真にぶつけるように、言葉を紡ぎだした。

「一真くん、聞いてほしいことがあるの」

　由季は、一真の前に立ち、深呼吸をした。一真は、由季の真剣な表情を見て、静かに由季の言葉を待った。

「私は、もう、あなただけのものです。この先もずっとそうでありたい。あなたが私だけのものではなくてもいい。でも、ずっと、ずっとそばに置いていただけますか？」

　由季の言葉に、一真は、由季の心に秘められた、深い孤独と、自分への強い依存を感じた。由季は、父親から受けた傷を、一真の存在によって癒そうとしていた。一真は、由季の言葉に、由季の重い想いを感じた。しかし、一真は、由季の言葉を拒絶することはできなかった。由季の言葉は、一真の心を強く揺さぶった。一真は、由季の頭を優しく撫で、由季を強く抱きしめた。

「由季、俺は、お前のそばにいる。ずっとそばにいる。だから、もう、一人で頑張らなくてもいいんだ」

　一真の言葉に、由季は、安堵の涙を流した。由季の心に、深い安心感が広がっていく。由季は、一真の腕の中で、彼の言葉を何度も、何度も反芻した。

「一真くん……」

　由季は、一真の胸に顔をうずめ、一真の温かさを感じた。一真は、由季を優しく抱きしめながら、由季の髪を優しく撫でた。由季と一真の関係は、由季の引越しを通して、さらに複雑に絡み合っていくことを予感させるのだった。

### 第11話：由季の告白と雄宇の秘密

　由季の引っ越しは、新しい生活の始まりを意味していた。由季は、一真の家の居心地の良さに安堵していた。夜になれば、隣の部屋から聞こえてくる一真の物音に耳を澄ませ、彼の存在を確かめる。それだけで、由季の心は温かくなった。昼間は、一真と学校へ行き、部活動に励む。一真と同じ場所で、同じ時間を過ごすことが、由季の何よりの喜びだった。由季は、一真の家族の一員となったことで、心の傷が少しずつ癒えていくのを感じていた。

　ある日のことだった。由季は、一真の部屋の整理を手伝っているときに、雄宇の私物が残されていることに気づいた。由季は、雄宇の私物を見て、雄宇がどれほど一真を慕っていたかを知った。由季は、雄宇の私物を手に取り、雄宇と一真の間に、自分が知らない秘密の関係があるのではないかと感じた。由季の心に、小さな疑念が芽生えた。

　由季は、雄宇に、一真の部屋に雄宇の私物が残されていることを話した。雄宇は、由季の言葉に、一瞬、顔色を変えた。雄宇の様子から、由季は、自分の勘が正しいことを確信した。由季は、雄宇に、一真と雄宇の間に何があったのかを問い詰めた。雄宇は、由季の言葉に、口ごもった。雄宇の沈黙が、由季の疑念を確信に変えた。

　由季は、雄宇から、一真と雄宇が毎日一緒にお風呂に入っていたことや、数日おきに添い寝していたことを知った。由季は、雄宇の告白に、衝撃を受けた。由季の心に、激しい嫉妬と、裏切られたような感情が湧き上がった。由季は、一真の恋人として、雄宇に嫉妬することなど、あってはならないことだと分かっていた。しかし、由季の心は、激しい感情の波に揺れていた。

　由季は、雄宇との会話を終えると、一真の部屋に向かった。由季は、一真の部屋に入り、一真に、雄宇から聞いた話をすべて話した。由季は、一真に、自分の気持ちをすべてぶつけるように、言葉を紡ぎだした。

「一真くん、どうして黙っていたの？」

　由季の言葉に、一真は、言葉に詰まった。由季は、一真の沈黙に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。由季の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。由季は、一真の胸に顔をうずめ、嗚咽を漏らした。

「私、知らなかったの。雄宇が、一真くんと毎日お風呂に入っていたことも、添い寝していたことも……。どうして、私に言ってくれなかったの？」

　由季の言葉に、一真は、由季の背中に手を回し、由季を強く抱きしめた。一真は、由季の背中を優しく撫でながら、由季に、これまでのことをすべて話した。一真は、由季に、雄宇が由季と離れて暮らしていた間の寂しさや、由季への複雑な思いを語った。一真は、由季に、雄宇の気持ちを理解して欲しいと訴えた。

　由季は、一真の言葉に、雄宇の寂しさを感じた。しかし、由季の心は、まだ、激しい嫉妬の炎に燃え上がっていた。由季は、一真の腕の中で、彼の言葉を何度も、何度も反芻した。由季は、一真の言葉に、雄宇の気持ちを理解しようと努めた。しかし、由季の心は、まだ、一真を独占したいという強い独占欲に支配されていた。

　由季は、一真の腕から抜け出すと、一真の瞳をまっすぐに見つめた。その瞳には、恐怖や絶望ではなく、一真への深い愛情と、彼の存在によって守られているという安心感が入り混じっていた。

「一真くん、私は、あなたの恋人よ。雄宇は、私の大切な妹。二人の気持ちを尊重したい。雄宇も私と同じであなたのものなのでしょう。それなら、一真くんの恋人である私には、雄宇と同じことをしてもらう権利はあると思わない？」

　由季の言葉に、一真は、由季の心に秘められた、深い孤独と、自分への強い依存を感じた。由季は、父親から受けた傷を、一真の存在によって癒そうとしていた。由季は、一真の恋人であることで、自分の存在価値を確かめようとしていた。一真は、由季の言葉に、由季の重い想いを感じた。しかし、一真は、由季の言葉を拒絶することはできなかった。由季の言葉は、一真の心を強く揺さぶった。

　一真は、由季を優しく抱きしめ、由季の髪を優しく撫でた。一真は、由季の気持ちに真摯に向き合うことを決意した。一真は、由季と雄宇、二人の気持ちの間で葛藤する。しかし、一真は、二人の気持ちに応えることを決意した。一真は、由季と雄宇、二人の気持ちを受け止め、二人の心を癒すことを決意した。由季と一真、そして雄宇の関係は、由季の告白を通して、さらに複雑に絡み合っていくことを予感させるのだった。

### 第12話：中間考査対策の勉強会

　新緑が目に鮮やかな五月。中間考査が二週間後に迫り、富岳第一高校の生徒たちは、部活動の合間を縫って、それぞれの考査対策に追われていた。柊一真の家では、由季の部屋で、一真、由季、雄宇、そして柚希の四人による勉強会が開かれていた。由季の部屋は、以前、一真が使っていた部屋を由季が引き継いだものだ。由季の私物で彩られた部屋は、以前とは全く違う、由季らしい清楚で真面目な雰囲気に満ちていた。

「ね、一真。この問題、どう解けばいいんだっけ？」

　柚希がそう言って、一真に数学の問題集を差し出す。一真は、柚希の隣に座り、彼女に数学の問題を教えていた。由季は、一真の隣で、英語の教科書を開き、真剣な面持ちで勉強している。雄宇は、リビングで、誠一郎と佳代子とともに、テレビゲームを楽しんでいた。由季と雄宇、そして柚希。三人のヒロインが、一真をめぐって、それぞれの想いをぶつけ合うように、勉強会は、いつもとは違う、どこか張り詰めた空気が流れていた。

　休憩時間になると、由季は、一真に、自身が描いたバスケの戦術ノートを見せた。ノートには、由季の完璧主義な一面が、そのまま凝縮されていた。由季が描いた戦術ノートは、まるでプロのコーチが描いたかのように、細かく、そして、正確に描かれていた。一真は、由季の努力を称賛し、由季に、自分の考えを伝えた。

「由季の戦術は、すごく面白いと思う。でも、もし相手がゾーンディフェンスを敷いてきたら、どうする？」

　一真の言葉に、由季は一瞬戸惑った表情を浮かべる。由季は完璧主義者で、自分の考えた戦術に絶対の自信を持っていた。しかし、一真の指摘は、彼女が気づかなかった弱点を突いていた。

「……確かに。ゾーンディフェンスは想定してなかったな」

　由季は、そう言って、少しだけ悔しそうな顔をする。一真は、そんな由季の姿を見て、彼女の肩にそっと手を置いた。

「由季、一人で完璧な戦術を考えなくてもいいんだ。俺も一緒に考えるから」

　一真の言葉に、由季の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。由季は、感情を表に出すのが苦手だった。しかし、一真の前では、自分の弱い部分をさらけ出すことができた。由季は、一真の優しさと誠実さに心を温め、彼の恋人であることに改めて幸福を感じた。

　由季と一真が、二人きりで話に夢中になっている間、雄宇と柚希は、二人の親しげな様子に不満を漏らしていた。雄宇は、由季と一真の間に、自分が知らない秘密の関係があるのではないかと感じていた。柚希は、由季と一真の関係が、幼馴染である自分と一真の関係を、脅かしているのではないかと感じていた。

「ねえ、一真くん。あたし、中間考査が終わったら、二人きりで旅行に行きたいな」

　柚希は、一真に旅行のパンフレットを差し出した。それは、温泉地や遊園地、そして少し遠方のリゾート地など、さまざまな場所が載っていた。柚希は、由季と雄宇の姉妹としての絆に、幼馴染という自分たちだけの特別な絆で対抗しようと考えていた。

「一真くん、あたしは、中間考査が終わったら、毎日体を洗って欲しいな」

　雄宇が、一真にそう言って、甘えるように身を寄せる。雄宇の言葉には、由季と離れて暮らしていた間の寂しさや、由季への複雑な思いがにじみ出ていた。

　一真は、由季、雄宇、柚希の三人のヒロインが、それぞれ違う形で自分に心を寄せていることを改めて実感する。由季は、一真の恋人として、一真の隣にいることが自分の居場所であることを確信している。雄宇は、一真の新しい家族として、一真との関係を、より特別なものにしたいと願っている。柚希は、幼馴染として、一真の心を一番深く理解しているのは自分だということを、一真に証明する必要があると感じている。

　一真は、三人の気持ちに応えたいと願っていたが、その優しさが、結果的に三人を傷つけてしまうのではないかと恐れていた。由季は、一真の隣に寄り添い、由季の心に温かい光を灯してくれた。由季と一真の関係は、由季の引越しを通して、さらに複雑に絡み合っていくことを予感させるのだった。

### 第13話：結季と由季と雄宇と一真のお茶会

　中間考査が近づく週末、柊一真の携帯電話が震えた。画面に表示されたのは「東雲結季」の文字。いつもは柚希の隣でおとなしくしている、彼女の妹からの連絡に、一真は少し驚きながら電話に出た。

「一真くん、もしもし。あのね、お姉ちゃんと由季ちゃんと雄宇ちゃんも誘って、お茶会しないかなって思って。よかったら、一真くんの家で、由季ちゃんの部屋でやらない？」

　結季の声は少し緊張しているようだったが、その誘いは一真にとって嬉しいものだった。由季と雄宇が同居を始めてから、彼女たちと過ごす時間が増えたものの、柚希や結季との時間は意識して作らなければならない状況だった。

「いいな、楽しそうだ。柚希にも声かけてみるよ」

　一真は快諾し、結季の提案を由季と雄宇に伝えた。由季は「結季ちゃんから誘ってくれるなんて、嬉しい」と笑顔で言い、雄宇も「久しぶりに結季とゆっくり話したい」と乗り気だった。こうして、由季の部屋でのお茶会が急遽開催されることになった。

　当日、一真は、お茶会をさらに特別なものにするため、女の子たちに手作りのクッキーをふるまうことにした。由季の部屋に集まる前に、リビングのキッチンでクッキー生地を練り始める。バターと砂糖が混ざり合う、甘く香ばしい匂いが部屋に広がる。一真は、由季や雄宇、柚希、そして結季の顔を思い浮かべながら、一つ一つ丁寧に型を抜いていった。オーブンから焼き上がったばかりのクッキーは、ほんのりと温かく、サクッとした食感がたまらなかった。

　由季の部屋に集まったのは、由季、雄宇、結季、そして一真の四人。柚希は用事があり、少し遅れて来ることになっていた。部屋には、由季の趣味であるアロマの香りがほのかに漂い、温かく落ち着いた空気が流れていた。

　一真が淹れた紅茶をカップに注ぎ、焼きたてのクッキーを皿に並べる。結季は、その手際の良さに目を丸くした。

「一真くん、すごい。全部手作りなの？」

「ああ、結季たちのために、心を込めて作ったんだ」

　一真は、照れくさそうに笑いながら答えた。結季は、その言葉に胸をときめかせた。由季と雄宇は、一真のクッキーを口に運び、「美味しい！」と目を輝かせた。

「一真くん、どうしてそんなに料理が上手なの？」

　結季が、一真にそう尋ねた。結季は、一真の料理の腕前に驚き、彼の家庭的な一面に興味を持つ。

「母親を早くに亡くしたから、料理は必要に迫られて始めたんだ。でも、みんなが喜んでくれるから、今では趣味になったよ」

　一真の言葉に、結季は心を温めた。

「一真くんの料理、すごく美味しいね。由季ちゃんも、雄宇ちゃんも、毎日一真くんの料理が食べられるなんて、羨ましい」

　結季がそう言うと、由季と雄宇は、照れくさそうに顔を赤らめる。

　由季と雄宇は、一真の優しさと家庭的な一面に触れ、彼の存在が、自分たちにとってどれほど大きなものかを改めて実感していく。雄宇は、由季と離れて暮らしていた間の寂しさや、由季への複雑な思いを、一真の隣にいることで少しずつ癒やしているように見えた。結季は、一真の家庭的な一面に興味を持ち、彼との距離を縮めようと試みる。

　お茶会が終わり、由季、雄宇、結季がそれぞれ帰路につく頃、結季は一真に、一真を独り占めしたいという強い独占欲を抱き始めた。

「一真くん、今日はありがとう。また、お料理、教えてくれる？」

　結季が、一真にそう尋ねる。一真は、結季の言葉に、嬉しそうに頷いた。

「ああ、もちろん。いつでも言ってくれ」

　一真の言葉に、結季は満面の笑みを浮かべる。しかし、一真の心の奥底では、結季の行動が、由季と雄宇との関係に新たな波紋を広げることを予感していた。三人のヒロインとの関係が、これからさらに複雑に絡み合っていく予感を、一真は感じていた。

### 第14話：姉妹の女子会

　柊一真の家に由季が引っ越してきてから、由季と雄宇、二人の姉妹の間に流れる空気は、以前よりもどこか穏やかで、そして少しだけ複雑なものになっていた。由季は、一真の家という同じ屋根の下で雄宇と生活を共にすることで、離れていた時間が生んだ溝を埋めようと努めていた。一方、雄宇もまた、由季が隣にいることで、姉妹としての絆を再確認し、由季との関係をより深くしたいと願っていた。

　ある日の午後、一真が部活動の練習に出かけた後、由季と雄宇は、由季の部屋で二人きりで過ごすことになった。由季は、一真の部屋のベッドに座り、雄宇は、由季の机の椅子に腰掛けていた。二人の間には、穏やかな、しかし、どこか張り詰めた空気が流れていた。

「ねえ、由季ちゃん」

　雄宇が、静かに由季に声をかけた。

「どうしたの、雄宇」

　由季が、雄宇にそう尋ねると、雄宇は、由季の顔をまっすぐに見つめた。雄宇の瞳は、中学時代に一真に助けてもらった頃と何も変わらない、純粋で、ひたむきな光を宿していた。

「由季ちゃん、一真くんのこと……どう思ってる？」

　雄宇の言葉に、由季は、一瞬、息をのんだ。由季は、雄宇が、一真のことが好きだということを知っていた。しかし、由季の心は、もう独占欲に囚われてはいなかった。父親による性的暴行未遂という出来事が、由季の考え方を根本から変えていた。一真を「自分の物」にすることよりも、ただ「一真とともにあること」を何よりも優先するようになっていたのだ。

「一真くんは、私の大切な人よ。雄宇も、私の大切な妹。二人の気持ちを尊重したい。一真くんが、雄宇を大切に思っているように、私も雄宇を大切に思っているから」

　由季の言葉は、雄宇にとって、由季が独占欲を抱いているわけではなく、姉として雄宇の幸せを願っていることを示唆していた。しかし、由季の言葉には、雄宇への深い愛情や、雄宇の幸せを願う気持ちも込められていた。

「うん……由季ちゃん、あたし、由季ちゃんの気持ち、分かるよ」

　雄宇はそう言って、由季に微笑んだ。その笑顔は、中学時代に一真に助けてもらった頃と何も変わらない、純粋で、ひたむきな笑顔だった。

「由季ちゃん、あたし、由季ちゃんに負けないように、たくさん頑張るから」

　雄宇が、そう言って、由季に宣戦布告する。

「うん。雄宇。私も、雄宇に負けないように、たくさん頑張るから」

　由季はそう言って、雄宇に微笑んだ。その笑顔は、中学時代にクラス委員の仕事を通して出会った頃と何も変わらない、清楚で真面目な由季の笑顔だった。

　由季と雄宇は、お互いの気持ちを正直に語り合い、一真との関係や、バスケに対する想いを語り合った。由季は、一真の恋人として、一真の隣にいることが自分の居場所であることを確信している。雄宇は、一真の新しい家族として、一真との関係を、より特別なものにしたいと願っている。由季と雄宇は、一真との関係を通じて、離れていた時間が生んだ溝を埋め、再び強い姉妹の絆を取り戻していく。

「由季ちゃん、あたし、由季ちゃんのことが、大好きだよ」

　雄宇がそう言って、由季に抱きついた。由季は、雄宇の温かさに心を温め、雄宇を強く抱きしめた。由季と雄宇、二人の姉妹の間に流れる空気は、穏やかで、温かいものになっていた。

### 第15話：中間考査と女子バスケ部合宿

　蒸し暑さの残る放課後、富岳第一高校の校舎は、中間考査を終えた生徒たちの、開放感に満ちた熱気に包まれていた。由季は、雄宇、柚希、詩織、そして結季と連れ立って昇降口へ向かっていた。一真の家での勉強会で、由季は完璧主義な一面を露呈し、一真に弱点を指摘された。一真の優しさと、彼の隣にいることの心地よさを再確認した由季の心は、安堵と、一真への深い愛情で満たされていた。

「みんな、中間考査、お疲れ様。よく頑張ったな」

　昇降口で待っていた一真が、由季たちにそう声をかけた。一真の優しい言葉に、由季は、照れくさそうに微笑んだ。雄宇も、柚希も、詩織も、結季も、それぞれが、一真の言葉に、嬉しそうな顔をした。

「一真くん、ありがとう。一真くんが教えてくれたおかげで、数学、完璧だったよ」

　雄宇が、そう言って、一真に笑顔を向ける。

「一真くんの解説、すごく分かりやすかった。私、これで中間考査、乗り越えられそう」

　柚希も、そう言って、一真に微笑む。

「一真くん、おかげで、私も自信がつきました。ありがとうございます」

　結季も、そう言って、一真にお礼を言う。一真は、みんなの言葉に、嬉しそうに笑った。

「みんなが頑張ったからだよ。俺は、何もしてない」

　一真の謙虚な言葉に、由季は、一真の優しさを改めて実感した。由季は、一真の隣にいることが、自分の居場所であることを確信している。由季は、一真の隣で、彼の存在を、心ゆくまで感じていた。

　中間考査が終わり、由季たちは、女子バスケ部の合同合宿に参加することになった。合宿の会場は、富士山の麓にある、女子バスケ部の専用体育館だった。体育館には、女子二年生チームと女子三年生チームの面々が、すでに集まっていた。由季は、女子一年生チームのリーダーとして、チームを率いて、体育館に入った。

「由季、来たか」

　女子二年生チームのキャプテン・鈴木花が、由季に声をかけた。鈴木花の瞳は、由季との対決を心待ちにしているようだった。

「はい、花先輩。今日こそ、勝ちます」

　由季はそう言って、鈴木花に微笑んだ。その笑顔は、中学時代にクラス委員の仕事を通して出会った頃と何も変わらない、清楚で真面目な由季の笑顔だった。

　由季たちは、女子二年生チームと女子三年生チームとの合同合宿に参加した。合宿では、由季は、女子二年生チームのキャプテン・鈴木花、女子三年生チームのキャプテン・木村綾香と、再び対決することになった。由季は、鈴木花と木村綾香の二人に、敗北を喫する。しかし、由季は、敗北を通して、彼女たちとの間に、バスケを通して、確かな絆を感じた。

　合宿の夜、由季は、女子二年生チームと女子三年生チームの先輩たちと、部屋で話していた。由季は、先輩たちに、自分の悩みや、バスケに対する想いを話した。先輩たちは、由季の言葉に、真剣な面持ちで耳を傾けてくれた。

「由季ちゃん、バスケは、一人でやるもんじゃないよ」

　鈴木花が、由季にそう言った。

「チームプレーだよ。みんなで、一つの目標に向かって、力を合わせるんだ」

　木村綾香も、そう言って、由季に微笑んだ。

　由季は、先輩たちの言葉に、心を温めた。由季は、これまで、一人でバスケをやってきた。しかし、先輩たちの言葉に、由季は、チームプレーの重要性を改めて実感した。由季は、バスケを通して、先輩たちとの間に、確かな絆を感じた。由季は、先輩たちに、感謝の気持ちを伝えた。

「花先輩、綾香先輩、ありがとうございます。私、頑張ります」

　由季の言葉に、鈴木花と木村綾香は、由季の頭を優しく撫でた。由季は、先輩たちの温かさに触れ、心が温かくなった。

　合宿の帰り道、由季は、雄宇、柚希、詩織、そして結季と、バスに乗っていた。由季は、バスの窓から、遠くに霞む富士山を眺めていた。由季は、バスケを通して、多くの人々と出会い、多くの人々と絆を深めることができた。由季は、バスケを通して、自分の居場所を見つけることができた。由季は、バスケを通して、自分の人生を、より豊かなものにすることができた。由季は、バスケを通して、一真との絆を、より深いものにすることができた。

### 第16話：柚希との二人きりのデート

　中間考査が終わり、由季たちが女子バスケ部の合宿へと向かった週末。柊一真は、東雲柚希と二人きりでデートをすることになっていた。柚希は、一真の幼馴染であり、昔から何でも話せる特別な存在だ。一真は、由季と雄宇、二人の間で揺れ動く自分の心を、柚希になら話せるのではないかと感じていた。

　二人は、駅前のシネマコンプレックスで、公開されたばかりの青春映画を観た。映画は、高校生の男女の淡い恋物語を描いたもので、一真は、映画の主人公たちの初々しい恋模様を見て、由季との出会いを思い出していた。一方、柚希は、映画のヒロインが、主人公の恋の相手に嫉妬する姿を見て、胸の奥が締め付けられるような痛みを感じていた。

　映画が終わると、二人は駅前のカフェに立ち寄った。窓から差し込む夕日が、二人の間に、穏やかな時間を運んでくる。柚希は、一真の隣に座り、コーヒーを飲みながら、お互いのことや将来の夢について話した。

「一真、バスケ部、頑張ってるか？」

　柚希がそう尋ねると、一真は、力強く頷いた。

「ああ。由季が頑張ってるからな。俺も負けてられない」

　一真の言葉に、柚希の胸には、由季への対抗心がこみ上げてきた。柚希は、一真の幼馴染として、一真の心を一番深く理解しているのは自分だということを、一真に証明する必要があると感じていた。

「ねえ、一真。由季のこと、本当に好きなんだね」

　柚希が、一真にそう尋ねた。柚希の瞳は、一真の瞳をまっすぐに見つめている。その瞳には、由季への対抗心と、一真を独占したいという強い独占欲がにじみ出ていた。

「ああ。由季のことが、本当に大切だ」

　一真の言葉に、柚希の胸は、締め付けられるような痛みを感じた。柚希は、由季と雄宇の姉妹としての絆に、幼馴染という自分たちだけの特別な絆で対抗しようと考えていた。

「一真、私ね……」

　柚希は、そう言って、一真の瞳をまっすぐに見つめた。柚希は、中学時代からの一真への一途な想いを、由季と雄宇との関係に悩んでいることを明かした。

「一真、私ね、中学の時から、ずっと一真のことが好きだったんだ」

　柚希の言葉に、一真は、言葉に詰まった。由季との関係が、これからさらに深く、強固なものへと変わっていく予感を感じていた矢先のことだった。

「柚希……」

　一真が、柚希にそう言うと、柚希は、一真に旅行のパンフレットを差し出した。それは、温泉地や遊園地、そして少し遠方のリゾート地など、さまざまな場所が載っていた。

「本当は、由季や雄宇には内緒で、一真と二人きりで、ここに行きたかったんだ」

　柚希は、そう言って、一真の瞳をまっすぐに見つめた。柚希の言葉には、由季と雄宇への対抗心と、一真を独占したいという強い独占欲がにじみ出ていた。

　一真は、柚希の真剣な想いと、由季と雄宇への気持ちの間で、激しい葛藤に襲われた。由季の恋人として、由季を大切に思う気持ち。雄宇の新しい家族として、雄宇を幸せにしたいという気持ち。そして、幼馴染として、柚希の気持ちに真摯に向き合いたいという気持ち。一真は、三人のヒロインが、それぞれ違う形で自分に心を寄せていることを改めて実感した。

　一真は、柚希の真剣な想いを受け止め、彼女の気持ちに真摯に向き合うことを決意する。一真は、柚希の手を優しく握り、柚希の瞳をまっすぐに見つめた。

「柚希、俺も、柚希の気持ちに真摯に向き合うよ」

　一真の言葉に、柚希は、安堵の表情を浮かべた。しかし、一真の心の奥底では、柚希の行動が、由季と雄宇との関係に新たな波紋を広げることを予感していた。三人のヒロインとの関係が、これからさらに複雑に絡み合っていく予感を、一真は感じていた。

### 第17話：体育祭の準備と一真の葛藤

　中間考査も終わり、富岳第一高校は体育祭の準備で賑わっていた。放課後のグラウンドには、クラスごとに集まった生徒たちの活気に満ちた声が響き、熱気が立ち込めていた。柊一真は、体育祭の実行委員に選ばれ、各クラスの代表者との打ち合わせを終えた後、由季、雄宇、そして柚希と合流した。

　由季は、一真と二人三脚に出たいと提案した。由季にとって、一真との二人三脚は、二人の絆を、周囲にアピールする絶好の機会だった。由季は、一真の恋人として、一真の隣にいることが自分の居場所であることを確信している。由季は、一真の隣で、彼の存在を、心ゆくまで感じていた。

「一真くん、私たち、二人三脚に出ようよ。私、一真くんと一緒なら、絶対優勝できると思うんだ」

　由季が、一真にそう言うと、雄宇は、由季の提案に反発し、一真と二人三脚に出たいと提案した。

「由季ちゃん、ずるい！　あたしだって、一真くんと二人三脚に出たい！」

　雄宇の言葉に、由季は、一瞬、息をのんだ。由季と雄宇、二人の間で、一真をめぐる対立が、再び始まった。

「二人とも、落ち着いてくれ」

　一真は、二人の対立に、頭を抱える。しかし、一真の言葉に、二人は耳を傾けようとしなかった。

「由季ちゃん、ずるいよ！　あたしだって、一真くんと二人三脚に出たいんだから！」

　雄宇がそう言って、由季に詰め寄る。

「雄宇、私は、一真くんの恋人よ。恋人同士で二人三脚に出るのは、当然じゃない」

　由季が、雄宇にそう言うと、柚希は、二人の対立に不満を漏らした。柚希は、由季と雄宇の姉妹としての絆に、幼馴染という自分たちだけの特別な絆で対抗しようと考えていた。

「二人とも、やめなよ。一真は、あたしだけのものなの！」

　柚希は、そう言って、由季と雄宇に宣戦布告する。柚希の言葉には、由季と雄宇への対抗心と、一真を独占したいという強い独占欲がにじみ出ていた。

　一真は、由季と雄宇、そして柚希の三つ巴の関係に、頭を抱える。由季は、一真と二人三脚に出たいと提案する。雄宇は、由季の提案に反発し、一真と二人三脚に出たいと提案する。柚希は、由季と雄宇の対立に不満を漏らし、一真と二人三脚に出たいと提案する。

「みんな、落ち着いてくれ。俺は、みんなの気持ちに真摯に向き合いたいんだ」

　一真は、三人にそう言った。しかし、三人のヒロインは、一真の言葉に耳を傾けようとしなかった。

「一真くん、私と二人三脚に出てくれないの？」

　由季が、潤んだ瞳で一真を見つめる。

「一真くん、あたしと二人三脚に出ようよ。あたし、一真くんと一緒なら、絶対優勝できるから」

　雄宇が、一真にそう言って、甘えるように身を寄せる。

「一真、あたしと二人三脚に出ようよ。あたし、一真の幼馴染なんだから」

　柚希が、一真にそう言って、一真の腕を掴んだ。

　一真は、三人のヒロインの言葉と、三人のヒロインの瞳に、激しい葛藤に襲われた。由季の恋人として、由季を大切に思う気持ち。雄宇の新しい家族として、雄宇を幸せにしたいという気持ち。そして、幼馴染として、柚希の気持ちに真摯に向き合いたいという気持ち。一真は、三人のヒロインが、それぞれ違う形で自分に心を寄せていることを改めて実感した。

　一真は、三人の気持ちに応えたいと願っていたが、その優しさが、結果的に三人を傷つけてしまうのではないかと恐れていた。由季は、一真の隣に寄り添い、由季の心に温かい光を灯してくれた。由季と一真の関係は、由季の引越しを通して、さらに複雑に絡み合っていくことを予感させるのだった。

### 第18話：体育祭と三つ巴の勝負

　降り注ぐ太陽の光が、富岳第一高校のグラウンドを照らしていた。体育祭当日、校庭は生徒たちの活気に満ちた熱気に包まれていた。柊一真は、由季、雄宇、そして柚希と、グラウンドの隅に集まっていた。由季は、一真の恋人として、雄宇と柚希に負けるわけにはいかないと、由季の瞳は、強い意志の光を宿していた。雄宇は、一真の新しい家族として、由季と柚希に負けるわけにはいかないと、雄宇の瞳は、ひたむきな光を宿していた。柚希は、一真の幼馴染として、由季と雄宇に負けるわけにはいかないと、柚希の瞳は、由季と雄宇への対抗心を燃やす光を宿していた。

「一真くん、頑張ろうね」

　由季が、そう言って、一真に微笑んだ。

「うん。由季も頑張ろうな」

　一真は、由季の頭を優しく撫でた。由季の頭を撫でる一真の手は、由季の心を温かくした。由季は、一真の優しさに心を温め、彼の恋人であることに改めて幸福を感じた。

「一真くん、あたしたち、絶対優勝しようね」

　雄宇が、そう言って、一真の腕を掴んだ。

「ああ。雄宇も頑張ろうな」

　一真は、雄宇の頭を優しく撫でた。雄宇の頭を撫でる一真の手は、雄宇の心を温かくした。雄宇は、一真の優しさに心を温め、彼の存在が、自分にとってどれほど大きなものかを改めて実感した。

「一真、あたしと二人三脚に出るんだから、絶対に優勝しような」

　柚希が、そう言って、一真の腕を掴んだ。

「ああ。柚希も頑張ろうな」

　一真は、柚希の頭を優しく撫でた。柚希の頭を撫でる一真の手は、柚希の心を温かくした。柚希は、一真の優しさに心を温め、彼の存在が、自分にとってどれほど大きなものかを改めて実感した。

　由季と一真、雄宇と一真、そして柚希と一真の三組が、二人三脚で勝負をする。スタートの合図とともに、三組は一斉にスタートを切った。由季と一真は、息を合わせ、走り始めた。雄宇と一真も、息を合わせ、走り始めた。柚希と一真も、息を合わせ、走り始めた。

　由季と一真は、由季が引っ越してきてから、由季の部屋で、由季の提案で、毎日一緒に二人三脚の練習をしていた。由季は、一真との二人三脚を通して、一真との絆を、さらに深めることができた。由季は、一真との二人三脚で、一真の存在を、心ゆくまで感じていた。

　雄宇と一真は、雄宇が由季と離れて暮らしていた間の寂しさや、由季への複雑な思いを語り合いながら、二人三脚の練習をしていた。雄宇は、一真との二人三脚を通して、一真との絆を、さらに深めることができた。雄宇は、一真との二人三脚で、一真の存在を、心ゆくまで感じていた。

　柚希と一真は、一真が柚希に旅行のパンフレットを見せられた後、二人三脚の練習をしていた。柚希は、一真との二人三脚を通して、一真との絆を、さらに深めることができた。柚希は、一真との二人三脚で、一真の存在を、心ゆくまで感じていた。

　三組は、互いに一歩も譲らない激しいデッドヒートを繰り広げた。由季と一真は、息を合わせ、走り続けた。雄宇と一真も、息を合わせ、走り続けた。柚希と一真も、息を合わせ、走り続けた。

　勝負の最中、一真は、三人のヒロインとの関係に、一つの答えを出した。一真は、由季と雄宇、そして柚希、三人の気持ちに応えることを決意する。

「由季、雄宇、柚希。俺は、みんなのことが大切だ。みんなの気持ちに応えたいんだ」

　一真の言葉に、由季は、一瞬、息をのんだ。由季は、一真が、自分だけでなく、雄宇と柚希のことも大切に思っていることを知っていた。由季は、一真の言葉に、安堵の表情を浮かべた。

「うん。一真くん、ありがとう」

　由季が、一真にそう言うと、雄宇は、一真に抱きついた。

「一真くん、ありがとう。あたしも、一真くんが大好きだよ」

　雄宇がそう言って、一真の胸に顔をうずめた。

「一真、あたしも、一真のことが大好きだよ」

　柚希が、一真にそう言って、一真に抱きついた。

　一真は、由季と雄宇、そして柚希の三人を、強く抱きしめた。三人のヒロインが、一真の腕の中で、彼の存在を、心ゆくまで感じていた。

　体育祭の二人三脚は、由季と一真、雄宇と一真、そして柚希と一真の三組が、同着で優勝した。一真は、三人のヒロインとの関係に、一つの答えを出した。そして、三人のヒロインは、一真の気持ちに応えることを決意した。

　由季と一真、雄宇と一真、そして柚希と一真の関係は、体育祭の二人三脚を通して、さらに複雑に絡み合っていくことを予感させるのだった。