第14話: 苦悩する大和未来党
永田町の会議室には、張りつめた空気が漂っていた。
大和未来党は第一党の座を得たものの、ねじれ国会に阻まれ、肝心の法案はことごとく停滞している。
外交は後手に回り、経済は乱高下を繰り返す。
地方都市では失業率の上昇に伴い、治安悪化と外国人労働者との軋轢が日常化しつつあった。
******
「津守総理、もうこれ以上は待てません」
経済再生担当の大臣が声を荒げる。
「このままでは党の支持も揺らぐ。国民は我々に“革命”を期待したのです。
だが実際は、手も足も出ない総理に失望している!」
別の閣僚も畳み掛ける。
「防衛省からも連日のように直訴が来ています。国境の緊張が高まっているのに、国会の承認待ちで部隊は動かせない。
現場の隊員たちがどれほど苛立っているか、ご存知でしょうか」
机を叩く音。
苛立ちを隠さない幹部たちの顔。
だが、津守新は動じない。
静かに水を口に含み、落ち着いた声で言葉を返した。
「わたしたちは民意を背負い、ここに立っている。
しかし、この国の制度そのものが、民の声を縛っている。わかっているだろう」
沈黙が落ちる。
苛立ちをぶつけていた大臣たちでさえ、その冷徹な眼差しに言葉を失った。
津守は続ける。
「この国を変えるには、議席の数だけでは足りない。必要なのは覚悟だ。
大罪人の謗りを受けても、国民の未来を選び取る覚悟だ」
誰も返事をしない。
だがその言葉は、嵐を前にした海のように、会議室の空気を震わせた。
******
その夜。
津守はひとり大阪本部の執務室に戻り、窓の外を見つめていた。
街には灯がともり、屋台の匂いと人々の笑い声が届く。
しかし彼の耳には、遠い国境線で銃を構える若い自衛官の姿が浮かんでいた。
「彼らは命を賭けているのに、我々は議事堂で言葉を弄んでいる……」
心中に渦巻く苛立ちは、怒声として表に出ることはなかった。ただ冷ややかな決意だけが残り、彼を縛り続けていた。
――このままでは、この国は滅ぶ。
だが、血を流さずして未来は掴めない。
津守は深く息を吐き、机上の資料を閉じた。
その指先はわずかに震えていたが、その眼には、もはや迷いは映っていなかった。
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