【架空自己啓発本】『基本×継続=最強説』~地元騎士団解雇からGランクスタート、才能なし必殺技なしの俺が基本トレーニングの継続だけで冒険者ギルドMVP4回受賞&殿堂入りSランクまで駆け上がった方法~
基本的なトレーニングが最も効率的な投資である証拠
基本的なトレーニングが最も効率的な投資である証拠
投資家は利回りで判断する。
10金貨投資して11金貨になれば利回り10%。100金貨投資して110金貨になっても同じく10%。数字は嘘をつかない。感情も入り込まない。
だから俺は、トレーニングも投資として考えることにした。
時間というリソースを投入して、どれだけのリターンが得られるか。これ以上シンプルで客観的な判断基準はない。
そして5年間の検証の結果、俺は確信に至った。
基本的なトレーニングは、最も利回りの高い投資である。
・ 俺の5年間記録実験
中堅冒険者になった俺は、一つの疑問を抱いていた。
「本当に基本練習は効果があるのか?」
周りの冒険者たちは皆、派手な技術ばかり追いかけていた。基本練習なんて「時間の無駄」「才能のない奴がやること」と言われることもあった。
俺は基本練習を継続することの重要性は認識していた。
しかし、俺には基本練習を継続する方向性の正しさについて、決定的自信はなかった。だから、記録をつけることにした。
・シンプルな記録法
毎日、練習ノートに2つのことだけ記録した。
1. 今日何を練習したか(種類と時間)
2. 今日どれくらい上達したか(5段階評価)
練習内容は3つに分類した:
基本練習:素振り、基礎魔法、体力作り、基本コンボ
応用練習:戦術、連携技、応用コンボ
特殊練習:高度魔法、秘伝技、特別装備
毎月末に、それぞれの「効果実感度」を100点満点で自己評価した。
客観的なデータではない。完全に俺の主観だ。しかし、数年間続ければ何かが見えてくると信じていた。まあ、信じるしかなかった。他に方法を思いつかなかったからだ。
・ 1年目の意外な結果
最初の年末、集計結果に俺は驚いた。
・効果実感度ランキング(1年目)
1位:基本練習(平均82点)
2位:応用練習(平均58点)
3位:特殊練習(平均23点)
最も時間をかけた特殊練習が、最も効果を感じられなかった。高度な魔法を覚えようと必死になったが、基礎が足りずに習得できなかった。
一方、退屈だと思っていた基本練習が、最も「上達している」と実感できる分野だった。
気づき:地味なことほど、確実に効果が出る。
・ 3年目の大きな変化
記録をつけ始めて、3年目になると、基本練習の真の価値が見えてきた。
基本練習で身につけたことが、他の分野にも影響していることに気づいたのだ。
例えば:
- 素振りで鍛えた集中力が、魔法の精度を上げた
- 体力作りで得た持久力が、長時間の戦闘を可能にした
- 基礎魔法の理解が、応用魔法の習得を早めた
- 基本コンボの練習が、応用コンボの発想力を育てた
一つの基本技術が向上すると、関連する他の技術も一緒に向上していた。まるで、建物の土台を強化すると、上の階も安定するように。
この現象を発見した時、俺は自分が天才になったような気分になった。もちろん、天才でも何でもない。ただ、当たり前のことに数年かけて気づいただけだ。しかし、当たり前のことに気づくのは、案外難しいものである。
・5年目の確信
5年間の記録を振り返った時、俺は確信を得た。
基本練習に費やした時間は、決して無駄ではなかった。むしろ、最も効率的な時間の使い方だった。
客観的な成績も、この確信を裏付けていた:
5年間の成長記録
- ランク:D → B(3段階上昇)
- 任務成功率:68% → 94%
- 平均クリア時間:185分 → 127分
- 怪我による欠勤日数:年36日 → 年8日
数字は正直だった。感情的になることもなく、言い訳をすることもなく、ただ事実を示していた。俺が5年間やってきたことは、少なくとも無意味ではなかった。
基本は退屈だが、退屈なものほど確実だ。
・基本トレーニングの効果
俺は基本技術の真の威力を理解し始めた。
基本技術には「応用効果」があることがわかったのだ。
素振りで身につけた正確性が、魔法の精度を向上させる。
体力作りで得た持久力が、長時間の戦闘を可能にする。
基礎魔法の理解が、応用魔法の習得を早める。
一つの基本技術の向上が、他のすべての技術の底上げをしていた。
・特殊スキルの効果
一方、特殊スキルは意外と応用範囲が狭い。あまりにも特化しすぎているからだ。
高度な炎魔法を覚えても、それは炎魔法の威力が上がるだけ。他の技術には影響しない。
秘伝の剣技を習得しても、それは剣技の威力が上がるだけ。魔法や体力には関係ない。
ただし、特殊スキルが必要な場面になれば、基本スキルでは考えられないほどの成果をあげることができる。
冒険を長年続けていると、特殊な技術が必要になる場面も多い。
俺の場合、基本スキルに特化するというある種の特殊スキルのようなステータスをしていた。そのため特殊スキルが必要な場面では、その道の専門家と協力することが多かった。
基本スキルと特殊スキルの特性を知り、お互いに使い分けることが大事だろう。
基本技術は全体を底上げし、特殊スキルは局所を強化する。
・センバンジー・セカンドとの定期戦績
地元が同じセカンドとは、年に4回の練習試合を行っていた。彼は高度な炎魔法の専門家で、基本を重視する俺とは正反対の専門技術に特化するアプローチを取っていた。
対セカンド戦績の推移
- 1年目:0勝4敗(惨敗)
- 2年目:1勝3敗(わずかな進歩)
- 3年目:2勝2敗(互角)
- 4年目:3勝1敗(優勢)
- 5年目:4勝0敗(完勝)
セカンドの「スペース・インフェルノ」は確かに強力だった(彼はマックスの大ファンだった)。マックスの自宅前で36時間座り込み、根負けしたマックスから直伝された必殺技はとても強く、1年目の俺は、その一撃で完全に圧倒されていた。
しかし、5年目になると状況は逆転していた。セカンドの必殺技は相変わらず強力だったが、俺はそれを凌ぐ体力と持久力を身につけていた。彼が必殺技を撃ち尽くした後の戦いでは、俺の方が有利だった。
この結果を見たセカンドは、皮肉めいた笑いを浮かべてこう言った。「お前は亀みたいな奴だな。ゆっくりだが、確実にゴールに到達する」
亀呼ばわりされたのは初めてだったが、悪い気はしなかった。少なくとも、ウサギより確実にゴールに到達できるなら、亀でも構わない。
・マリア・ソードダンサーとの技術比較
同期のマリアは、特殊な二刀流技術を極めていた。そして、それ以上に資格マニア、資格バトラーであった。特殊スキルのマスター資格を乱獲、そして資格バトラーグランプリを5連覇し、恐れられていた。
当時、俺は冒険者ギルドがマスター資格取得を奨励するために設置されたゲームにハマっていた。
冒険者それぞれに設定されたキャラクターが冒険者自身のマスター資格取得で育ち、他の冒険者のキャラクターとバトルできるというゲームだ。
マリアとは熱い資格バトルを繰り広げた。
彼女との比較も興味深いデータを提供してくれた。
技術習得数の比較(5年間)
マリア:特殊スキル15個、基本スキル3個
俺:基本スキル13個
一見すると、マリアの方が多くの技術を習得している。しかし、実戦での成績は違った。
実戦成績(5年目)
マリア:任務成功率81%、平均完了時間164分
俺:任務成功率94%、平均完了時間127分
マリアの技術は確かに華麗で効果的だった。しかし、理想的な条件でなければ威力を発揮できなかった。一方、俺の技術は地味だったが、どんな状況でも一定の効果を発揮した。
この結果を知ったマリアは、少し悔しそうにこう言った。「技術の数じゃないのね……でも、資格バトルは私のほうが強いから」
技術の数ではなく、技術の質と安定性が重要だった。そして、安定性を支えるのは、やはり基本だった。……そして俺はマリアに資格バトルで勝ち越すことはできなかった。
特に俺は、報酬明細を見るたび彼女の正しさを思い知ることになった。
マリアは15個の専門スキルマスター資格を持っていた。俺は基本スキルマスター資格13個だった。つまり、資格手当で言えば彼女の方が圧倒的に上だった。毎月の給料は、おそらく俺より30銀貨は多かっただろう。
「資格は身を助ける……」俺はそう思った。
特殊技術は環境に依存し、基本技術は環境に適応する。……そして、資格は取ったほうが良い。
5年間の大きな発見
俺は基本トレーニングの重要な価値を発見した。
学習能力の向上だった。
基本技術を徹底的に練習することで、「学習の仕方」そのものが上達していたのだ。
・学習の学習
新しい技術を覚える速度が、明らかに向上していた。
以前なら1ヶ月かかっていた技術習得が、2週間でできるようになった。しかも、習得した技術の定着率も高くなった。
なぜか?
基本練習を通じて、「効果的な練習方法」を体得していたからだ。
- どの部分に注意を向ければいいかがわかる
- 間違いを早期に発見できる
- 修正の方法を知っている
- 継続するコツを身につけている
・ メタスキルの獲得
基本練習で身につけたのは、技術そのものではなく「技術を身につける技術」だった。スキルを習得するためのスキルということだ。
メタスキルがあれば、どんな新しい分野でも効率的に習得できる。基本練習は、このメタスキルを鍛える最良の方法だった。
基本練習は、学習能力そのものを向上させる。
・5年目の努力収支計算
5年間の実験を終えた時点で、俺は総合的な「努力の収支」を計算してみた。
シンプルな方程式を作ることにした。どうしても主観的になってしまうが、それでも出力してみるのは大切だ。
努力継続利益 = 得られた結果(リターン) - かかった苦労(リソース)
この単純な方程式が示したのは、明確な事実だった。
基本練習が最も「お得」な練習法である。
基本練習は確かに退屈だが、その退屈さは「慣れる」ことができる。一方、得られる結果は多方面にわたり、長期間持続する。
努力に対するリターンを考えれば、基本練習への投資が最も効率的だった。
地味だが、確実で、持続可能で、経済的だ。
最も地味な努力が、最も高い利益を生む。
・なぜ基本練習の投資効率が高いのか
5年間の分析から、基本練習が高い投資効率を示す理由が見えてきた。
・理由1:初期投資額が低い
基本練習に必要なのは、時間と意志だけだ。
特別な道具も、高価な教材も、専門的な指導も必要ない。誰でも今日から始められる。
・理由2:リスクが極めて低い
基本練習で損失を出すことはほぼ不可能だ。
最悪でも「現状維持」。普通は「改善」。うまくいけば「飛躍的向上」。
リスクがほぼゼロの投資など、現実世界にはほとんど存在しない。
・理由3:複合効果が大きい
一つの基本技術の向上が、複数の分野に波及する。
少ない投資で大きなリターンを得られる。
・理由4:持続期間が長い
基本技術は一度身につければ、長期間価値を持ち続ける。
特殊スキルは時代と共に陳腐化する危険性がある。一方、基本技術は普遍的だ。
・理由5:希少性がある
誰でも基本練習はできるが、継続できる人は少ない。
つまり、継続するだけで希少価値を持てる。希少性は高いリターンを生む。
基本練習は、ローリスク・ハイリターンの理想的投資である。
・基本練習投資の落とし穴
ただし、基本練習投資にも注意すべき点がある。
・落とし穴1:即効性がない
基本練習の効果は、すぐには現れない。
特に最初の数ヶ月は「本当に意味があるのか?」と疑問に思うだろう。多くの人が、この時期に諦めてしまう。
・落とし穴2:成長が見えにくい
派手な技術と違って、基本技術の向上は、すぐに現れないだけでなく、現れたとしても地味だ。
周囲からの評価も得にくい。自己満足度も低い。
・落とし穴3:飽きやすい
同じことの繰り返しなので、飽きやすい。モチベーションの維持が最大の課題になる。
・落とし穴4:過信のリスク
基本ができるようになると、応用を軽視する危険がある。
基本は土台であって、建物全体ではない。バランスが重要だ。
基本練習投資は、長期視点と継続力が成功の鍵だ。
・基本練習投資の最適化戦略
5年間の経験から、基本練習投資を最適化する戦略を編み出した。
・ 戦略1:ポートフォリオ分散
基本練習だけに100%投資するのではなく、70%程度に抑える。(飽きてしまうので)
残り30%は応用技術や専門技術に投資し、バランスを保つ。
俺は現役時代、基本スキルしか使わなかった。ただし、それは基本スキル以外を実戦投入しなかったという意味だ。
自分の視野を広げるために、特殊スキルの基礎理論を学んだり、簡単な技を覚えたりはしていた。
・戦略2:定期的な見直し
数ヶ月ごとに投資効果を検証し、必要に応じて配分を調整する。
成長が停滞している分野は投資を減らし、伸びている分野は投資を増やす。
・戦略3:相乗効果の最大化
関連性の高い基本技術を同時に練習し、相乗効果を狙う。
例:剣技と体力作りを組み合わせ、持久戦での優位性を確立。
・戦略4:長期目標の設定
1年以上先の目標を設定し、基本練習のモチベーションを維持する。
短期的な成果に一喜一憂せず、長期的な成長にフォーカスする。
基本練習投資は、戦略的に行えば効果が倍増する。
・まとめ:基本練習という名の最強投資
5年間の実験を通じて、俺は確信した。
基本的なトレーニングは、人生で最も効率的な投資である。
ローリスク、ハイリターン、長期安定性、複利効果。投資家が求める全ての要素を満たしている。
しかも、この投資には追加のメリットがある。
- 市場の暴落に左右されない
- インフレの影響を受けない
- 他人に奪われることがない
- 相続税もかからない
俺の個人的経験で申し訳ないが、俺は基本練習に取り組んで、良いことが多くあった。
ただし、条件がある。継続することだ。
有名な魔界投資家と話をする機会があった。
ウルトラストロングドラゴン関連銘柄投資の世界で最も難しいのは、優良な投資先を見つけることではない。それを長期間持ち続けることらしい。
基本練習も同じ。効果的だとわかっていても、継続できる人は少ない。
だからこそ、継続した者には大きなリターンが待っている。
君の未来への投資は、今日の基本練習から始まる。
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