第26話 結界への攻撃ふたたび?
夜明けの砦を包む結界が、突如としてきしみを上げた。
水晶板に映し出された波形が乱れ、ひび割れのような揺らぎが広がっていく。
「結界が……破られる!」
兵士の叫びと同時に、外壁の光の膜がぱりんと砕けるように散った。
石畳に走る魔力のきらめきが弾け、地面に火花が降り注ぐ。
リィナは思わず立ち上がった。
「ソーマさん! 急いで補修を!」
エルドランも険しい表情でうなずく。
「奴らめ……また偽ノードの類か。早急に繋ぎ直さんと、砦が丸裸じゃ!」
しかし、ソーマは水晶板から目を離さず、ただ波形を凝視していた。
「……待って」
リィナが制御盤に手を伸ばしかける。
「待ってじゃない! このままじゃ砦が落ちます!」
ソーマは水晶板を拡大し、指で示した。
「これは……偽ノードの侵入じゃない。PUFで認証してるから弾かれてる。
外から“無関係の信号”を叩き込んで、結界同士の同期を乱してるんだ。
互いに干渉し合って、波形がぶつかり合ってる……そのせいで外壁の一部だけが崩れてる」
リィナはすぐに切り返した。
「結界同士の干渉なら、共振部の位相をずらせば一時的に安定します。
手動ででも調整すれば持ち直せるはず!」
エルドランも腕を組み、低く唸った。
「あるいは結界の一部を遮断して孤立させるか……そうすれば干渉は減る。
その間に補強回路を差し込めば、ひとまず守れるじゃろう」
ソーマは二人を制して首を振った。
「待って、それじゃ波形の“模様”を消しちゃう」
リィナは一瞬手を止め、眉をひそめる。
「模様……? でも、このまま放っておいたら犠牲が出ます!」
ソーマは視線を水晶板に戻した。
「見てください、この干渉縞……ただの雑音にしては整いすぎてます。
壊すためだけじゃなく、何かを“伝えようとしている”……そんな気がするんです」
言葉を口にした瞬間、ソーマの脳裏にある顔がよぎった。
(……ヴァルグ。これは、あなたの仕業なのか?)
エルドランは重々しい声で言った。
「技術者としての直感は尊重する。……じゃが、結界を守るのも我らの責務じゃぞ、ソーマ」
リィナも強い目で食い下がる。
「犠牲を出すわけにはいきません。私たちができる手立てもあるんです!」
ソーマは二人の視線を受け止めながら、それでも首を振った。
「違う……これは“メッセージ”だ。
誰かがわざと、この波形を通じて何かを伝えようとしてる。
……俺たちに、いや……俺に」
研究室に重苦しい沈黙が落ちた。
結界の外で光が砕け、空気が震える。
反撃か、解読か――。
三人の思惑は交わらぬまま、緊張だけが高まっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます