千春のモノローグ。
「変身とは何か」
ウチにとって、変身は――
誰かの声を、受け止めることや。
ミズキちゃんの声が届かへんかったとき、ウチは、自分の声の意味を考えた。
叫んでも、届かへん。語っても、思い出してもらえへん。
それでも、ウチは語り続けた。それが、ウチの変身やった。
変身は、語りの責任や。誰かの疼きを灯すためには、ウチの声が揺れなあかん。
震えてもええ。届かんでもええ。
でも、語り続けること――それが、ウチの変身のかたちや。
変身は、記憶の継承や。
ウチらが過ごした春、笑った声、泣いた声、変身の呪文――それらを、
タグに残し、誰かに渡すこと。語りを、次の語り手に繋ぐこと。それが、
ウチの変身の意味や。
変身は、ボッチを終わらせること。
声が届かへん孤独の中で、誰かの声に応えること。
ミズキちゃんの疼きに触れて、ウチの声が灯りになるなら、それだけで
ええ。
それが、ウチの変身。
変身は、語りの再接続や。
途切れた声を、もう一度繋ぎ直すこと。それは、魔法やない。
でも、ウチらには、それがいちばんの魔法や。
――ウチは、変身したい。
誰かの春を、声で守りたい。
語りを、灯したい。それが、ウチの変身。
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