魔法とか術、特殊能力とか、そういうものを分類してみた時に「これは!」と気づきがあったんです。

あきじいプロジェクト/黎明の器たち

第1話:魔術について語ってみた

■魔法とか術、特殊能力とか、そういうものを分類してみた時に「これは!」と気づきがあったんです。


●気づいたら、3つに分類できそうだった話


はじめに:気付いたので、誰かに伝えたいな、という程度の考えごとです。

ただ、実社会でこれを語り合える人っていなかったんで(笑)

いわゆる“魔術”とか“術”とか“能力”と呼ばれるもの、ファンタジー作品には本当にいろいろな形で登場しますよね。

雷を呼ぶ詠唱や剣から放たれる光、魂との契約や血筋に伝わる力――どれも作品ごとに独自の世界観を形づくっていて、「よくできてるなぁ」と感心したり「カッコいいなぁ」と胸を熱くしたりします。

ただ最近、創作する立場で術や能力を描こうとしたときに、勉強がてら改めて人気作品を振り返ってみたんです。

そこで「この術って、どうやって発動する仕組みなんだろう?」と設定を見ていったときに、

「もしかして、“術”って3つにまとめられるんじゃない?」という考えが浮かんできたんです。

そしてその三つの分類を整理するうちに、今までいろいろな作品の中にあったぼんやりとした”ツッコミポイント”が、輪郭を持ち始めたんですよ。

それをみなさんにシェアしようとすることで、この気づきをもっと洗練してみたいなと思いました。よく言いますよね、「人に話すほど理解が深まる」って。まさにそんな気持ちで、今回は語ってみます。




■術は何によって成り立っているのか?



●3つの“軸”で見えてきた構造


この先はあくまで、

「こう見たら整理しやすかった」

という自分の感覚のお話です。

私みたいな読者もいるんだな、くらいのつもりで読んでいただけたら嬉しいです。

と言うことで――私は以下の三種類に分類できるのではないか、(各作者には勝手に許可なく分類される乱暴な提案かもしれませんが(笑)、そこはどうかご容赦いただいて)とりあえず戯言だと思って聞いてください。

① 術者の“思念”に依存する術

② 術そのものに“開放条件”がある術

③ エネルギー源に依存する術

色々と見比べた結果、術は結局“何を基準に発動できるか”という視点でこの三つにまとめられる、と気づいたんです。

最初は細かく分けようとしたんですが、作品ごとの差異に応じてどんどん枝分かれしてしまい、無限ループ状態になったんです。そこで発想を転換した結果が集約だったんです。

もちろんそれぞれの術が①②③と重複してることもあるんですが、とりあえず、色々と考えると、この三つに集約できるのかなと。

それでは、それぞれの術について個別に詳しくお伝えしていきたいと思います。




●術の“発動条件”で見えてきた三分類①②


① 術者の“思念”に依存する術

――その人自身から生まれる術――

このタイプの術は、「誰が使うか」で、その性質や強さがガラッと変わってくるんです。

術を生み出す力の源は、“内なるもの”。つまり、精神力とか思念とか集中とか、知識や修行、経験なんかですね。

外から特別なパワーを取り込むわけじゃなくて、術者自身の意志や努力しだいで花開いていく術、という感じです。

これは読者にも、「訓練すれば自分でもいけるかも?」と思わせてくれるような仕組みだとも言えます。




●①の術に共通する要素


精神状態や集中度によって威力や精度が変わる

修行や学習によって発動できるようになる

成長に比例して威力や種類が増える

感情や意思に反応して暴走、あるいは覚醒する

こういう術は「努力の物語」と相性が良くて、修行や成長、心の葛藤や師匠や努力しあった仲間との絆を描くときに、大きな役割を果たすんです。




●①の要素が見られる作品の例


『ドラゴンボール』

「かめはめ波」なんかは修行すれば習得可能になる。最初は撃てないけど、コツをつかむことでできるようになる。

→ 力の根源は“気”。体内で練り上げるものだから、実は完全に①。


『鬼滅の刃』

水の呼吸とかの剣技は才能もあるけど、やっぱり修行と努力で磨かれる。技の完成度や型の精度も精神の集中に左右される。

→ 修練物語として、①の要素ががっつり描かれている。


『BLEACH』

斬魄刀の能力は使用者の精神状態や内面と強く結びついていて、力を伸ばす過程では“心の対話”が欠かせない。

→ 力そのものが術者の人格・魂と直結している点で、まさに①の象徴。


『ハンターハンター』

“念能力”は、発動条件や能力設計を自分で作り込める。制約や誓約次第で威力が変動する。

→ 知識や戦略、精神性まで全部が反映される体系で、①の最も緻密な例。




●①の術がもたらす物語的価値


この①タイプの術は、「術者本人がカギを握っている」から、同じ術でも人によって精度や表現が違ったり、極め方が全然変わってきます。

面白いのは、①の術って個人の物語だけじゃなく、人間関係を描くのにも使いやすいんです。先ほど例示した仲間や師匠との修行で力を伸ばすとか、ライバルの存在がきっかけで限界を突破するとか。「誰と関わったか」がそのまま力の形に反映されるから、単なる必殺技じゃなくて“人間ドラマを映す鏡”みたいな役割を持つんです。

読者としするとキャラクターを応援したくなるのが、この分類の特徴と言えるでしょう。さらに「努力が報われる」という希望を感じやすいので、読者自身の経験や感情とリンクして共感が生まれやすい。結果として①の術は、読者自身の心の成長物語まで重ねてくれる構造を持っているんです。




●ゲームに見る①的な構造


ゲームの「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」のMP型魔法も、一見③(あとで出てくるエネルギー依存型)っぽいですが、実は①の構造なんです。

MPは術者の精神力や集中力を数値化したもので、自分を最良状態に戻す手段が休息や気分転換ですものね。

ステータス画面では「最大値から減っていって0になったら使えない」と表記されてますけど、実際は「0が始まり=元気な時の状態で、疲れてくるとマイナスになってくる=疲れて行使できない」って感覚に近い。

表記上のわかりやすさから“最大値=満タン”に見せてるだけ。

つまり、外部からエネルギーを借りてくるんじゃなく、宿屋で寝たり、何かで癒されたら再び使えるようになる術。だから本質的には①に入れるのが自然なんです。




●② 術そのものに“開放条件”がある術


――「選ばれし者」にしか行使できない術――

このタイプの術は、努力とか修行とかがあろうとなかろうと、“特定の条件をクリアした人しか使えない”っていう仕組みになってます。

言い換えると、その条件を突破できなければ、どんなに優秀でも術のスタートラインにすら立てない。そういうタイプの力なんですよね。

だからこそ“宿命”とか“特別感”をまとわせやすい術として描かれることが多いんです。




●②の術に共通する要素


ある“道具”や“神器”を持っている人だけが発動できる

特定の血筋・人種・出生条件を持つ人だけが使える

精霊や契約存在に“選ばれる”ことで解放される力

決められた“代償”を支払うことで一度きりで発動できる術

面白いのは、「その力を使えるようになること自体が物語の分岐点になりやすい」ってところなんです。

しかもその分岐点って単なる戦闘力アップにとどまらないんですよ。人物の立場や世界観の均衡を揺らすこともある。誰が選ばれたのか、なんでその人なのか――この問いが物語全体に波及して、周囲のキャラに嫉妬や期待や恐れを呼ぶことだって多い。主人公なら「自分は本当に選ばれるに値するのか」って悩み、組織や権力との関係に政治的な緊張まで生まれたりする。つまり②型の術って、力の発現そのものがキャラの内面も社会の構造も一気に動かしちゃう仕掛けなんです。

術そのものは存在してても、選ばれし者しか触れられない。

だから持つ者には“特別な役割”や“宿命”がのしかかり、読む側も“強さの理由”より“選ばれた意味”に引き寄せられるんです。




●②の要素が見られる作品の例


『ワンピース』

“悪魔の実”を食べた人にだけ特定の力が宿る。

→ 努力とは関係なく、その実を食べた瞬間から術者になれる完全な②型。


『ジョジョの奇妙な冒険』第3部以降

スタンド能力は矢に貫かれるとか血筋とか、“ある条件”を満たした人だけに発現。

→ スタンド使いになるには明確なトリガーがあって、鍛えてどうこうできるものじゃない。


『ロード・オブ・ザ・リング』

“指輪”という特別アイテムを持つことで力を使える。ただ、その代償や選択が物語の核心に直結する。

→ 指輪に選ばれた人、その重みを背負えるかどうかがテーマの中心。

でもこの作品の面白いとこは「特別な資質を持たないホビットが選ばれる」って逆説的な構造ですよね。けど選ばれた時点でもう“選ばれし者”。だからこそ力が足りなくても、圧倒的な重圧に押しつぶされそうになりながら必死に責任を背負う。その姿が物語を動かす原動力になっていて、②型の宿命性をさらに際立たせてるんです。

それから、ウィザードっていう種族だけが使える魔術も出てきます。これは“人間である限り”絶対に触れられない領域。


『BLEACH』の“斬魄刀”の始解・卍解

刀に宿る力と完全に同調できた者だけが、その真の姿と力を引き出せる。

→ 修行要素もあるけど、“始解・卍解”には解放条件と契約が不可欠。


『シャーマンキング』の“持霊との契約”

霊とのつながりが術の根幹で、発動できるかどうかは霊との縁しだい。

→ 修行だけじゃ無理で、まず出会いと契約が先に来る。

こうした②型の例ってどれも、“誰が選ばれたのか”っていう物語的な意味を前面に押し出す構造を持ってるんです。




●②の術がもたらす物語的価値


この②タイプの術は、術者の存在そのものに物語的な価値を生みます。

「なんでこの人が使えるの?」「どうして他の人には無理なの?」っていう問いが自然と読者の頭に浮かぶから、力の中身そのものじゃなく“選ばれた意味”にスポットが当たりやすいんですよね。

力を持つ者は称賛や期待を背負う一方で、嫉妬や恐怖、排除の対象にもなる。逆に持たない者は憧れ、羨望、劣等感に揺れる。この対立や摩擦がそのまま人間関係や社会構造を描く燃料になるわけです。

この軸は、力を持つ人に“特別感”と“宿命感”を与えて、物語全体の流れをガラッと変えてしまう。たとえば「選ばれたとたんにやらなけばならない目標の発生」や「自分が選ばれた理由を理解できずに苦悩する主人公」とか「選ばれなかったからこそ別の道を模索する仲間」とか、立場の違いから多層的なドラマが生まれる。ここには「運命への反発」「力の責任」「特権と平等」といった普遍的なテーマが自然と組み込まれるんです。

努力や修行の積み重ねで成長する①型が物語を進めるなら、②型は「なんでこの人物なのか」という問いでキャラクターの立場や人間関係、さらには世界観そのものを揺さぶっていく仕掛けになるんです。結果として②型は、個人の歴史や権威との関係を浮かび上がらせたり、仲間との距離感や社会のひずみを描く装置にもなる。単なる「特別な力」じゃなく、選ばれた事、得てしまった事が物語の中で描かれるのが、この分類の強みだと思います。




●①と②が重複する術の分類は


最近の作品では①と②が両方入ってるケースがほとんどだと思います。たとえば「選ばれた人しか術を発動できないけど、真価を出すには修行が必要」みたいなタイプですね。

この場合は整理ルールを決めておきます。つまり、②の条件があるならそっちを優先する。①っぽい要素を持ってても、この場合は②として扱うのが分かりやすいんです。

丁寧に言うと、修行がいくら必要でも、まず②の条件をクリアしない限り術はまったく効力を持たない。どれだけ鍛えても②を突破しなければ始まらない――そういう順番で考えてもらえれば分かりやすいと思います。

分類はあくまで私が勝手に決めた目安。作品の魅力を縛るものじゃなくて、ただ分類できないかって考えた時に、集約できちゃったっていうだけのことなんです。




●次回予告


ここまでで①「思念依存」と②「開放条件依存」をざっと見てきました。

どちらもワクワクさせる仕組みなんですが、実はその裏に“危うさ”が隠れているんですよ。


そして、①にも②にも収まらない第三の視点――③「エネルギー源依存型」。

これがまあ、とんでもなく面白い。リアリティが作りやすくて、戦術性は広がるわで。

この三分類で、世にある術式の全てを整理できるんです(多分)。整理して見えてきたのは、③が他の二つとはまったく違う立ち位置を持っているという事実。……これを掘り下げて語りたいって感じで。

最初は③までここに入れていたんですが、ちょっと長くなっちゃったんで、ここでいったん区切りです。

次回はこの③の分類、そして分類したことで見えてきた①と②の裏にある危うさをまとめて深掘りします。絶対面白い――いや、もう面白すぎると自分で言っちゃいます。どうか次回も楽しみにしていてください。


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