第30話 手繰り寄せた人物

「成田さん。1つ手掛かりがつかめたので、事務所にお越しください。」

 事務所で、古田所長を前に尋ねた。

「手掛かりって、どんなものですか。」

「あれから、いただいたリストにあった入札に参加した建設会社と市民運動に参加した人物を調べたんですが、関係のある人物はいませんでした。」

「そうですか。」

 なかったか、じゃあ手掛かりってなんだ?

「ただ、市民運動の参加者に大学生が数人いたんですが、そのうちの1人が怪しいんです。」

「どんなふうにですか。」

「青木っていう学生で、パチスロ、麻雀、ナンパと俗にいう不良学生で、金がなくて困っていたのに、『超楽な高額バイトを見つけた』と仲間に言ってるんですね。」

「そのバイトが、市民運動に加わること。」

「おそらく。ちょっと荒っぽいんですが、この学生ゆさぶってみませんか。」

 古田は、恐ろしい顔でにやりとした。

 

 翌日、パチスロ屋で青木をつかまえた。

「あんたたち誰?」

「君のやった高額バイトの話だよ。ついてこないと後で後悔するよ。」

「は、はい。少しなら・・。」

 古田のドスが効いた声に、青木は明らかにビビッていた。

「こちらは、君が自然破壊だと市民運動を起こして、改修事業がダメにされそうな大洋建設の営業部長さんだ。君の市民運動のおかげで大損害を受けることになる。」

「え?で、でも木を切ったりして自然破壊をしたんでしょ。」

「ちゃんと許可をとってあって何の問題もないんだ。とすると、君たちは自然破壊をでっち挙げたことになるんだよ。だいたい君、市民運動なんてやってたの?」

「え、え?それは、そういように聞かされて・・・ぼくも、白川さんも。」

「なんだって?白川ってリーダーじゃないか。その白川に今回の件を指示した人物がいるのか。」

「あ、あ、そ、それは。」

「もし言わなければ、君が偽市民運動に参加して、会社に損害を与えていると大学に報告してもいいんだぞ。また、大洋建設が君を損害賠償で訴えることもできる。」

「それは、止めてください。」

「君が全部話せば、君のことは見逃してもいい。とりあえず我々からのリークはなしにする。どうするかは君が決めろ。」

「正直に話します。」

 あきらめたのか青木は、ついに白状した。

「あの市民運動に参加していた人は、全員バイトです。集めたのは、福岡組の灰島という人です。その人の指示で市民運動をやりました。」


 福岡組・・中堅ゼネコンが仕掛けたのか。


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