第22話 迷宮攻略 2
石の壁に囲まれた迷宮の部屋に、出現した魔法陣の先、下層へと進み、ギルドマスターを追う。
僕は次の階層をまず、見回した。
上層と変わらず、四角い空間。
目の前には先に進んだ、ギルドの2名とアレックスとダークエルフさん。
そしてみんなが見ている先には、次の層へと進むための、青い炎によって描かれた魔法陣がすでに登場していた。
僕の張り詰めるような緊張感が、切れてしまい、脱力して素っ頓狂な声で問いかけてしまう。
「えっ? もうクリアーしたのですか?」
「マーストン、俺も同じ事言った」
アレックスは、剣の鞘に手を置き振り返った。
「あぁ、これでな」
そう言い、ギルドマスターが見せたそれは、風変わりな武器だった。
かれはそれを見せて来て、彼が動くたびに、金の髪は鞭のように揺れる。
「それは……なんですか?」
「やはり、マーストンも知らないのか」
「田舎は情報が古いので、うちも両親は帰って来たの時に持って来た、書物を漁る程度なんですよね」
そして視界にはいつの間にか、降りて来ていたニンフも隣へ並んだ。
彼女もギルドマスターの手の中にある、ずっしりと重そうに鈍く光る銀の武器を見ている。
僕ら、パーティーメンバー全員の視線を集めたところで、回転式の部品を彼はまわし話し出した。
「これ銃だ。錬金術師が作り出した、試作品と言っていいものだ」
「「錬金術師か……」」
そう、僕とアレックスから言葉が漏れる。
「これをちまたに出すには、性能を試験しなくちゃならね。だろう? だが、それは誰がやって言いわけではない、まず人を選ばなければならねぇ」
「おれはやらねーぞ」
「ぼくもです。うちの祖父は、錬金術師の試作品には手をだすな、って言われているので……」
「それは聞き飽きた冒険者なら、冒険をしろよ」
「スザーク申しわないですが、結論を早く言ってください。人出不足で、ギルドがちょっと心配になってきました」
「あいよ、これから試し撃ちをするかた、お嬢ちゃんも動くなよ。危ないぞ」
そう言うと彼は迷宮の壁に向かい撃ちだすと。
壁に当たったそれは、ペキッ、ペキッと音をたてて凍り付いていく!
そして壁一面を、すぐさま凍り付かせてしまった……。
「魔法なんですか? それ魔力をどれくらい使うものですか?」
「気になるか? これはなー、魔力を全く、必要としないやつなんだ! 欲しいか?」
「いえ」
彼は少し渋い顔で、首の辺りの髪を、くうへと払う。
「まぁ、常識だよな? 錬金術師は新米でもヤバいが、天才は、天才でやばめの夢を詰め込むって」
アレックはやや、
ギルド職員のラドルさんは、ギルドマスターの斜め後ろで、笑いをこらえながら立っている。
そして僕の前で、手の甲が上がった。
「ニンフ!?」
「すまんなお嬢ちゃん、これは大人ようだ。お嬢ちゃんが精霊だとしても、まぁ、子どもに見えるんで外聞が悪い」
それを聞き、彼女はすぐに僕に振り返った。
ニンフは、顔をぷくっと膨らませて、ブラウンの瞳からも怒りの色を滲ませて、僕にギルドマスターを説得してくれと言うような顔だ」。
だが、そんな子どもらしい様子で、何を説得しろと?
「うーん、ニンフ、薬草と銃をポケットに持ってたら、ポケットがぷっくり膨れて可愛い衣装が台無しだよ」
「それに危ないもの持ってはだめです」
ダークエルフさんが黒魔術師の衣装で、小さく座り、ニンフの首をへ手をまわす。
そこでニンフもなんとか諦めたようだ。
「若者は希望者なしか」
「まぁ、気長に探してください」
「ところで、敵は何だったんだ?」
「敵は、スフィンクスですよ。例の謎かけの」
ギルドマスターにー変わり、ラドルさんが解説をしてくれた。
「そうか……迷宮のボスの感じがしないからまだ、あるのかもな? 階層」
そう言って今度は彼が揺らめく魔法陣の中へ入ると、いきなり、地面は光だす。
驚くことに、大きな円が描かれ、巨大な魔法陣が描かれ始めた。
「これは……」
「排出用魔法陣です。これと同じものが各階に出来、迷宮の中にいる者は排出される事になります」
「なぜ?」
そう聞いた時には、僕らは地上の道の上に浮き、少しだけ落ちる。
「皆さん、それにラドルさん、そしてギルドマスター! 大丈夫ですか? お怪我はあるませんか」
「ラドルさんとスザークが助けてくれたので、なんとか。後、ウンディーネ、今回もありがとうございました」
そういうと、彼女は足を後ろへ引き、ひざを折り曲げて礼をした。
そして泡となって空へと帰って行く。
「今日はこの演出か……」
「綺麗ですね。さすが、水の大精霊」
チトセは両手を組み、空を見上げている。
そして気付くと、ニンフも同じように礼をしている。
「お、可愛いなぁ」
「たいしたもんだ!」
それをお兄さんなアレックスと、良い父親であるようなスザークが一緒に褒めていた。
「合同クエストの件は、ラドルさんが迷宮の地上の入口を、探索をするでしょうからいいのですけど、ところで、どうしますか? マーティンさん柵作りの方は?」
「アレックス、どう? 行ける?」
「俺か? お茶休憩入ってるからいけるぞ?」
「なら、決めておいた時間まで、行ってみましょう。そうすればギルドの受付も、とどこおる事ないでしょうし」
「ありがとうございます!、そういうわけで、ギルドマスター、今回の迷宮のギルドクエストの書類の明細の決定よろしくお願いします」
「わかった。確率は低いだろうが、そっちは足元を気をつけていけよ」
「「ありがとうございました」」
「またね」
そして僕らもわかれ、それぞれの仕事へ戻った。
◇◇◇◇
しかしその後、雨の日には素人なので休んだこともあり、僕らの担当する地区を終わらせるのに、5日かかった。
最後の柵があるかないかの確認まわりは、僕らが迷宮に落ちたという噂が広がっていたらしく、ほぼ新しい柵が作られてはいた。
――しかし、
「柵はいらないよ」
そう大柄の、剣士あがりという感じの男は言った。
「だが、迷宮は毎年活性かする時期は、魔物も多く出現するぜ」
「そうは言ってもオオカミの事件の様なことは、生まれてから初めてだ。だから作る必要はない」
「わかった。ギルドからのニュースはこまめに見るようにしてくれ」
「じゃーな」
彼はそう言って、音をたてて扉を閉めてしまった。
けど、昨日、「あのー柵の事ですが」と、言って閉められてしまった僕より、何倍もましな成果だ。
アレックスはこっちへでやってくると、「だめだな」と、彼には珍しくぶっきらぼうに手をあげた。
「ですが、あれだけ会話が出来たのだから、凄い進歩ですよ」
「まぁーやるだけやったのだから、チトセに名簿を見せたならいいだろう」
そして坂の上から、道の脇に寄せてあった荷馬車を見ると、御者席に座ったダークエルフさんが手をあげて、出迎えてくれる。
「ニンフはまた寝ているな」
「精霊ですからね」
ニンフは柵の為の木の杭の入っていた木箱の中に、木の杭保護用に入っていた毛布を引いて、寝てしまっている。
「では、出発してくれダーク」
馬車は色とりどりの野菜畑の道を街へと歩き出す。
馬車のガタゴト揺れる揺れも、眠りを誘われていく。
続く
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