酔雀 ― 超絶脱衣麻雀 スペシャル外伝 ―
雀太郎
勤雀
中規模の空間に自動卓が一台あるだけの、小さな流派だ。
4人が卓を囲う。
フレッシュな顔立ち。赤黒のポニーテール。同色の瞳。
リェレである。
道場の師範代。両親が残した道場の、再建に努めている。
リェレは対局しなから、麻雀を指導する。
門下生は3人だけだが、
……でも、いいの。みんな勉強熱心な
最近ではリェレの
大会で賞金も手に入る。少しずつでも生計を立てられるようにはなった。
……わたしたちの道場は、まだ始まったばかりよ……!
「ふあああぁ~!」
大あくびが響いた。
調子を外されながら、リェレは振り返る。
道場の
シックな顔立ち。黒髪ロング。同色の瞳。着崩した黒い拳法着。腰にひょうたんを携帯している。
ジウである。
先月に行き倒れていたところをリェレが介抱し、そのまま居ついている。
ジウは愛称で、名前は
ぜったい偽名だと思う。
素性は不明だが、麻雀の腕前はピカイチ。リェレも師とあおいでいるのだが、
……ジウ師匠、毎日のんだくれてばかりなのよね……。
ため息をつく。
すると弟子のひとりが、
「師範代、この間の大会おつかれさまです! ベスト16位入りだなんて尊敬します!」
「ありがとう。でも、わたしなんてまだまだよ……もっと精進しないと」
ジウがひょうたんをとる。
酒を飲もうとして、
「ん? もうないのか……」
ふらりと立ち上がる。
リェレの背中にもたれかかった。
「リェレ~! 酒きれちまったよ~……酒代、立て替えておくれ」
「またですか、師匠!? お酒ばかり身体に毒ですよ」
「いいじゃないか、賞金もでたんだし」
「師匠はなにもしてません」
「弟子の功績は、師匠の功績ってもんさ。なぁ、リェレ~!」
「もー……しょうがないですね」
リェレは酒代を見せる。
ジウが手を伸ばすと一度ひっこめ、
「せめて師匠らしいことをしてからです! この局面……師匠ならどうします?」
卓を指さす。
東3局 東家 ドラ5m
手牌
[2333456777p][東↑東東][ツモ牌 5p]
147p、2p、3pの五面待ち。
打牌候補は2種。無筋2pか、5p。
5pの筋は3p、7pともにワンチャンスだ。両面で当たるには、34pか67pが必要である。つまり通常よりも当たりにくい無筋といえる。
2pも3pのワンチャンスで、5pよりも当たりにくい。待ちも34567pと総数は少ないが、5種もある好形だ。
3p切り1-4p待ちもあるが、3pは無筋で25pよりも危険となっている。待ちも5pの下位互換だ。
事実上の二択。
2pか5p。
ジウは一瞬で打牌する。
「えっ!? その牌は……」
「これでいいな? まってておくれよ、お酒ちゃん!」
酒代をとると、浮かれて飛びだした。
リェレは手牌を見る。
[2333455677p][東↑東東]
ジウの選択は、なんと打7p。
無筋な上、待ちは
偶然7pは通った。
……でも、これじゃジリ貧……。
ツモ番が回る。
「えっ……!?」
思わず
[2333455677p][東↑東東][ツモ牌 6p]
奇跡的にもリェレのアガリとなった。
「と、とりあえず今局を
全員が手牌を開く。
リーチの二家の手牌は、
[34
[22345m 4
「ジウ師匠……あなた、いったい……!?」
数日後。
ジウは川辺で寝そべる。
最近リェレが張りきっている。つぎの大会が決まったらしい。
だから指導をせがまれないよう避難中だ。
酒をあおぎ、
……わたしが教えられることなんて、なにもないんだよ……。
ジウは各地を放浪し、麻雀の腕を磨いた。
昔は治安も悪く、様々な雀ゴロたちが威勢をふるっていた。
しかし時代は変わった。
他者を倒し
……わたしは、もう必要ない雀士だ……。
「でもリェレには世話になった」
最後に地方大会で優勝できるくらいに鍛えたら、この地を去ろう。
そこでジウは異変を感じとった。
空気がヒリつく。
穏やかな川辺に、わずかな歪みが生まれた。
近くから村人の声がきこえる。
「ここ最近、変なヤツらがいるって噂しってるか?」
「ああ、なんでも無差別に麻雀勝負をふっかけるみてえだぞ」
「リェレちゃんの道場、狙われないといいんだがな……」
道場。
「リーチ、ツモ、一発、
リェレの声に熱がこもる。
弟子たちが、ぐへぇ、と音をあげた。
「つ、強い……! 師範代、今回は優勝できますよ! いまならどんなヤツ相手でも、負けそうにないですって!」
「優勝はわからないけど……すごく調子がいいの!」
道場の入り口が開く。
「やっときましたね、ジウ師匠! 今日こそ、わたしの特訓に――」
「オレらでよければ、付き合ってやる
怪しい集団が現れた。
リェレが席を立ち、
「入門者……ではなさそうね。道場になんの用?」
「ふむ、なかなかいいとこカベね。おまえら4人だけで使わせておくには、もったいないカベ」
「なにが言いたいの……?」
「この道場はオレたちがいただくカベ! 弱小流派のたまり場よりは、有効活用してやる……ありがたく思うカベよ!」
「その意味のわからない主張と、変な語尾……まさか
「いかにもぉ! オレは雀奇団カベ男!」
カベ男が雀奇団特有の決めポーズをとった。
泣く子にダマ
門下生たちが前にでる。
「な、なにが雀奇団だ! 返り討ちにしてやる!」
3人が一斉に立ち向かう。
「ホーッ、ワチャァアアアアアアッ!」
カベ男が3人を一蹴する。門下生が人質となった。
「みんなを放して!」
「放してほしければ、わかっているカベね?」
雀リング。
独立ネットワークで、
リェレも
「わたしだって大会入賞者よ! 弱小流派かどうか見せてあげる!」
起動する。
「セットアップ!
【
東1局 ドラ9m
東家 リェレ 25000
南家 団員A 25000
西家 カベ男 25000
北家 団員B 25000
リェレ 配牌
[1247m 2
――――――――――――――――――――
mが
――――――――――――――――――――
打、9s。
ドラ1。
――――――――――――――――――――
[1247m 2
打、中。
[1247m 2
打、1m。
[2478m 2
打、東。
[2478m 24
打、4s。
[23478m 24
打、2p。
――――――――――――――――――――
[23478m 4
完全
69m、578s、南。6種20枚が有効牌である。
確定メンツ、234m、4
5メンツの5ブロック構成。
ツモ。
[23478m 4
「リーチ!」
打、7s。
5-8s待ち
リーチ、
先手をとった。
好形、高打点。絶好の勝負手だ。
カベ男のツモ。
打、7s。
現物の合わせ打ち。
対抗はない。ベタオリの雰囲気だ。
リェレのひとり旅となった。
「ツモ!」
[234789m 4
「リーチ、ツモ、
――――――――――
点棒移動
東家 リェレ 25000 → +12000 → 37000
南家 団員A 25000 → -4000 → 21000
西家 カベ男 25000 → -4000 → 21000
北家 団員B 25000 → -4000 → 21000
――――――――――
東1局 1本場 ドラ中
東家 リェレ
南家 団員A 21000
西家 カベ男 21000
北家 団員B 21000
リェレ 手牌
[11456799m 東東西中中]
ドラ2。
1456789m、東、西、中。10種27枚が有効牌である。
確定メンツ、456m。メンツ候補、11m、799m、東東、中中。
5メンツの5ブロック構成。
カベ男のツモ。
打、東。
「ポン!」
リェレが仕掛ける。
[11456799m 西中中][東↑東東]
打、西。
189m、中。4種10枚の受け入れを持つ
「ポン!」
カベ男が
同じく
打、白。
団員Bのツモ。
打、2p。
「ポン!」
カベ男が再び[222→p]と仕掛けてくる。
打、8p。
カベ男の
……
団員Bのツモ。
打、8m。
「チー!」
リェレが再び仕掛ける。
[114569m 中中][東↑東東][←879m]
打、9m。
1m、中のシャボ待ち。
先制
愚形だが1mの出アガリには期待できる。高打点を理由に押しの一手だ。
ツモ。
カベ男への危険牌だが、
……1pはいける……!
2pはカベ男のポンと、
打、1p。
「ロン!」
カベ男、
[11
「
脱衣モードにより、
脱衣衝撃が起動する。
リェレのトップスが吹き飛んだ。
小盛りの胸が晒される。上半身はブラ姿となった。
スカイブルーのスポーツブラ。無地のカップ。全体が白線で縁取りされている。
――――――――――
点棒移動
東家 リェレ 37000 → -12300 → 24700
南家 団員A 21000
西家 カベ男 21000 → +12300 → 34300
北家 団員B 21000
――――――――――
東2局 ドラ4p
北家 リェレ
東家 団員A 21000
南家 カベ男 34300
西家 団員B 21000
リェレ 手牌
[6789p 123
ドラ1。
47s、西、北。4種12枚が有効牌である。
確定メンツ、123s。メンツ候補、6789p、
5メンツの5ブロック構成。
ツモ。
[6789p 123
不要牌。ツモ切り。
打、南。
「ポン!」
カベ男が
打、北。
「ポン!」
リェレが仕掛け返す。
同じく
[6789p 123
打、9p。
4-7s待ち
北、ドラ1。30符2
先手をとった。
好形、低打点。
団員Aのツモ。
打、8m。
「カン!」
カベ男の
打、7m。
新ドラが捲られる。
新ドラ表示牌、7m。
つまり新ドラ、8m。
カベ男、ドラ4。
……モロ乗り……!?
ツモ。
[678p 123
手が止まる。
だか、
……この男、前局もそれで……!
最終手出しが、7mなのも怪しい。
7888mから8mの
リェレの選択。
打、西。
西の
ツモ。
[9m 678p 123
打、西。
前巡に9mを切ればアガリだった。
カベ男のツモ。
「ツモ!」
[45m 333p 66s][南↑南南][←8888m][ツモ牌 6m]
「南、ドラ4! 40符5
脱衣モードにより、
脱衣衝撃が起動する。
リェレのボトムスが吹き飛んだ。
下半身はショーツ姿となった。
スカイブルーの布地。ピンクリボン。フロントサイドは白。背面はフルバックだった。
「普通の両面待ち……!?」
「どうしたカベ? そんな弱腰じゃ麻雀にならないカベよ?」
カベ男が極悪な
――――――――――
点棒移動
北家 リェレ 24700 → -2000 → 22700
東家 団員A 21000 → -4000 → 17000
南家 カベ男 34300 → +8000 → 42300
西家 団員B 21000 → -2000 → 19000
――――――――――
東3局 ドラ5s
西家 リェレ
北家 団員A 17000
東家 カベ男 42300
南家 団員B 19000
リェレ 手牌
[
ドラ2。
78s、西、中。4種10枚が有効牌である。
確定メンツ、
5メンツの5ブロック構成。
団員Bのツモ。
打、中。
「ポン!」
リェレが仕掛ける。
[
打、9s。
8s、西のシャボ待ち。
中、赤ドラ2。30符3
先制
シャボの8sは悪くなく、西は絶好。中打点。まずはカベ男の親を流す。
カベ男、ツモ。
「カン!」
3mの
新ドラが捲られる。
新ドラ表示牌、發。
つまり新ドラ、中。
リェレ、ドラ3。
打点が
団員Bのツモ。
打、1m。
「カン!」
カベ男の
打、7s。
リェレ、ツモ。
[
2mは
……
相手にもリェレのドラ3は見えている。プレッシャーはかかっているはず。
強く押すべきだ。
リェレの選択。
打、2m。
「ロン!」
カベ男、
[2m 999p
「
――――――――――
点棒移動
西家 リェレ 22700 → -24000 → -1300
北家 団員A 17000
東家 カベ男 42300 → +24000 → 66300
南家 団員B 19000
――――――――――
持ち点がマイナスの場合は、トび終局となる。
1位 カベ男 66300
2位 団員B 19000
3位団員A 17000
4位 リェレ -1300
――
リェレが倒れる。
カベ男たちが雀奇団特有の、喜びの舞を
「弱小流派だろうと容赦はしないカベよ? 雀奇団の恐ろしさを、たっぷりと教えてやるカベ!」
『さっすがカベ男さん! マジ、ジャンキー!』
「ジャンキータイムだ!」
『ジャンジャン、ジャジャジャン、ジャンキーズっ!』
リェレに魔の手を伸ばす。
「待ちな!」
「なにやつぅーっ!」
ジウが到着した。
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