墓暴きの御前さん

ごーでん

プロローグ


 高校生というものがこんなにも暇なものだとは思わなかった。

 いや、それは俺が部活に入っていないのが原因だろう。実際野球部だとか吹奏楽部だとかに入っているクラスメイトは忙しそうだ。

 朝練により7時登校を強要され、そして放課後も日が暮れるまでみっちり練習。土日だってほぼ休めない。サッカー部なんかは特に酷く、その日の練習の終わりに次の日の予定が告げられる。祝日だろうがテスト前だろうが関係ない。入らなくて良かった。

 こうして見ると、高校生というのはあまりに部活動に振り回され過ぎている。学生の本分はあくまでも学業であって、部活で疲れて授業中に寝たり、勉強する時間が足りずテストで赤点を取っているようではいけないのだ。当然最終的には生徒個人の問題なんだろうけど、学校側も少しは考慮してやれよ。と思う。まあ、運動部の顧問とやらが偉そうにしている限りどうにもならないだろう。だいたいあいつらは何の権限があるんだよ。

 いけないいけない。このままだと体育教官に対する怒りをぶちまけるところだった。

 でも、部活にも良い点がある。それはまさに『青春』を過ごせるということ。学年・クラスを跨いで結成されたチームで共通の目標に向かって進む。同好の友と知見を深め、あるいは自分たちだけの世界を創造する。これはまさに今しか体験出来ないことだろう。大人になってからもそういうことをしようと思えば出来るだろうが、年の近いもの同士限定という違いがある。そして外せないのが恋愛。仲間内で、先輩後輩で、応援する側とされる側でと形は様々だが、高校生の恋愛のほとんどは部活動に関係している。野球部の田中なんかはもうマネージャーを付き合い始めたそうだ。

 こう考えるとやっぱり部活に入っておけば良かったと思う。俺もチア部の可愛い彼女が欲しい。

 でも、俺が入れる部活なんてないしな。運動部は嫌だし、文化部も興味ないし。


 何か面白いことはないのだろうか。

 自分で選んだ道とはいえ、後悔はしている。このまま高校生活を大学までの道中にするのはもったいない。あまりに時間が有りすぎる。

 ああ情けない。この年になってまだ外からの刺激を求めるのか。自分から動かないと何も得ることは出来ないというのに。


 彼女と行動し始めたのは、そんなことを考え始めた時だっただろうか。そこから俺の高校生活は一変した。巻き込まれたのか自分から巻き込まれにいったのか。細かいところは忘れたが、とにかく変わった。

 御前涼花ミサキスズカ。面白い女子だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る