週末異世界行商人・行方商太郎
@okinawaoba1932
第1話 スーパーカーのおもちゃ
「これ、あげる」
「これ、なあに?」
「これはね、スーパーカーのおもちゃだよ」
「スーパーカー?」
「うん、
すごく速くて、
すごくカッコいいんだ」
「スーパーカーありがとう!
行商のお兄ちゃん!」
そう言うと、エルフの男の子は嬉しそうにスーパーカーのおもちゃを持って走り去っていった。
僕は、異世界行商人。
ある日突然、異世界のゲートが開き、
足を踏み入れた先には、
アニメでしか見たことなかったファンタジーの世界が存在していた。
僕は異世界に心を奪われ、
自然と異世界にいる時間が多くなっていった。
異世界に行き始めた当初は、
食料をバッグに詰めてゲートから2、3日くらいで行けるところを旅していた。
週末異世界旅行だ。
金曜日の夕方に学校から帰ってきて、
異世界に行く準備をし、出発。
土日はフルで異世界旅行。
月曜日の朝に戻り、
学校に行く準備をし、登校。
という日々を送った。
異世界の言葉も勉強し始めるようになった。
現実世界から持ち込んできた物を、売って異世界マネーを稼ぎ始めた。
異世界旅行の軍資金にするためだ。
異世界人と仲良くなり始め、
お互いに贈り物をするようになった。
僕が贈る物は現実世界の物。
さきほど、男の子にあげたスーパーカーのおもちゃがいい例だ。
こうして僕は異世界行商人になった。
「ねぇ、ショータロー」
ショータローは、僕の名前だ。
「なんだい、エルヴィ」
エルヴィは、エルフ村の村長の娘だ。
陽の光を浴びて、金色の髪がきらきら揺れている。
今日も綺麗だ。
「私、現実世界に行きたい!」
「行ってどうするんだ?」
「行ってから考える!」
……ついに来たか。
村でも好奇心の塊で、いつも一番先に動くのがエルヴィだった。
「親父さんにはこのこと話したのか?」
「パパは16歳になったからいいよーって言ってた!」
本当だろうか。
もし本当だとしたら村長、
娘に甘すぎなのでは。
とはいえ、村長には異世界に最初に来た時から世話になっている。
ここは義理を通す場面だろう。
「うーん、親父さんにはいつも世話になってるしな」
「行っていいのね!
やったー!
ショータロー、パパ、サイコー!」
エルヴィの喜ぶ姿を見ると、ほっこりする。
こうして僕はエルフのエルヴィと一緒に現実世界に戻った。
はてさて、どうなることやら。
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