ニューワールド・ファンタズム

第2話

無限とも思える程果てがない迷宮と、それぞれの文化がある国々。


過去、神々が現れ、目を覚ました迷宮。モンスターが跋扈し、宝があふれる暗闇。


それが、《俺達》が生きる世界の全てだ。


少年が剣を手に、英雄を夢見て走る世界。想いの力が世界そのものを作り変える。


戦う誰もが努力し、剣の腕を上げていく…………。目先の物だけに囚われ、死んでいく者も大勢いたが、現在の世界は平穏だった。


ここは、血濡れた現実。本物の笑顔がある。偽物など何一つ存在しない。


ここは、二つが生きる、幻想世界。




「ふーっ…………」




呼吸を整え、両刃片手剣の剣先を《敵》に向ける。構えた瞬間、刀身を赤い光が覆う。


片手剣単発突進技 《ヴォーパル・ブレイク》。


低く、速く。赤い光を帯びながら走る剣は敵、レベル九十二モンスター、《ウルフナイトエース》の肩を鎧ごと抉った。


これが《剣技》。《俺達》に与えられた戦闘スキル。魔法以上の確実性と剣術以上の殺傷力を持つ必殺技。動作があらかじめ決まっているため、使用者が技の動きに逆らわないように加速してやれば更に威力は向上する。




「ぐるうあああっ!」




狼騎士は反撃の為に両手剣を正中線に構え、上段斬りを放ってきた。両手剣単発重突進技、《ライトクラッシュ》。黄色い光を帯びた剣が俺の目の前に現れる。


この技は単純故に威力が高い。上位剣技として申し分ない技だ。それに対して俺は


片手剣水平四連撃 《エクシア》を発動する。




「…………………せあっ」




 連撃で一撃を受け止め、押し返す。狼が硬直した瞬間に、俺は蹴りをお見舞いする。


距離が開き、互いに大技の余裕ができる。




「………………」


「ぐぅううう…………」




互いに睨み、気配を読み合う。


俺の片手剣より、狼の両手剣の方が一撃の威力は高い。それに俺は片手剣の防御手段である盾を装備していないため、守りに入るとこっちが不利だ。




「はーっ…………ッ」




同時にスキルを起動し、ライトベールが刀身を覆う。


――――――ダッ。同時に走り出した。




「ぐがああああっ!」




ウルフナイトエースが放ったのは、両手剣三連撃、《グラム・リープ》。


初撃。顔ギリギリに来た刀身の側面に刃を当てる。俺が放ったのは片手単発突進技、《ソニックリード》。上位剣技と中位剣技がぶつかる。すると、狼の両手剣を覆っていた黄色の光が何度か点滅した後、消えた。無論技は終了していない。これは《スキルブレイク》という対人型の規格外スキルだ。規格外とはそのままの意味で、世界に組み込まれたシステム以外の、効果を持った技という意味。《スキルブレイク》は相手のスキルと自身のスキルを互いの剣の中心で衝突させることで相殺するというもの。


連続技は発動途中にスキルを停止されると硬直時間を課せられるが、単発技はそもそも放ち終わった後のため、硬直の隙をつくらないで済む。


それに、中位剣技は上位剣技と比べて威力が物足りない分、硬直時間も短い。


俺は硬直した狼人間に向けて新たな技を放つ。




「う、おおおおおッ‼」




一瞬のタメにより剣速をフルブースト。放つのは片手三連撃、《イーグル・ウィング》。


精密さを求められる上位剣技。初撃は垂直の振り下ろし、二撃目は水平左斬り。そしてラストアタック。三撃目、水平右斬り。




「ぐううがああああ!」




獣の断末魔が尾を引いて響く。


愛剣 《ナイトプレート》を手に歩む黒いロングコートの剣士。




これが誰の過去なのか、未来なのか、まだ分からない―――――。

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