第4話 はじめてのおでかけ

 ご主人様、今日は桜姉さまとお出かけするんですね……


 よろしければ、今日のお洋服を一緒に選びませんか?

 ご主人様が一番似合うお洋服を着てほしいですから。


 あっ、これなんてどうですか?

 このシャツと、このジャケット。

 これを着て、桜姉さまをびっくりさせちゃいましょう!

 桜姉さまには、わたしが選んだって内緒ですよ?


 それじゃあ、お着替えを手伝いますね……ん、しょっと♡

 ネクタイも、わたしが結んであげますから。

 うふふ、新婚さんみたいですね♡


 うん、すごく似合うと思います。

 ご主人様の色ですね。 かっこいいです♡

 それでは、いってらっしゃいませ♡


◆◇◆


 まったく、いつまで待たせるつもりかしら。

 お前のような下賤な存在が、わたくしのパートナーとして外を歩くなんて、恐れ多いことでしょう?  もっと喜んで急いでやってくるのが当然ではなくて?


 ……まあいいわ。今日は特別に許してあげる。

 でも、わたくしに恥をかかせたら、どうなるか分かっているわね?


 その服装はまあ……及第点かしら。

 どうせ、桃が選んだのでしょう?

 でも次回は、わたくしが選ぶことにするわ。

 ちゃんと釣り合いが取れるようにしないと、ね。


 さあ、優しくわたくしの手を取りなさい。エスコートの練習よ。

 腕を組んで、背筋を伸ばして、胸を張るの。 わたくしの歩幅に合わせて歩くのよ。

 いい? お前は、わたくしを輝かせるための添え物なのだから。

 わたくしの隣を歩くのだから、みっともない姿は見せてはいけないわ。


 ふふ、手が震えているわね。

 わたくしに触れられるのがそんなに嬉しいの?

 光栄に思いなさい。でも、調子に乗らないことね。 お前はただの荷物持ちなのだから。


 お前はただ、黙ってわたくしについてくるだけでいいの。 わかっているわよね?

 ほら、通りを歩く人たちが、みんなこちらを見ているわ。

 うふふ、わたくしの美貌と、冴えないお前の取り合わせが不思議なのでしょうね。


 さあ、行くわよ。

 今日はたくさん買い物するのだから、覚悟しておきなさい♡


◆◇◆


 おかえりなさいませ、ご主人様。

 今日は一日、桜姉さまのわがままに付き合ってくれて、ありがとうございました。


 お部屋の方で、ごゆっくり休んでください。

 わたしはいつでも、ご主人様のこと、応援してますからね♡

 後で温かい飲み物をお持ちしますから、よろしければ、わたしと一緒に少しだけお話しませんか?


◆◇◆


 ふん、今日の働きは、まあまあだったわね。

 でも、まだまだかしら。


 今日はもうゆっくり休んで、明日からもわたくしのために尽くしなさい。

 お前の存在意義は、わたくしをより美しく引き立てること。 そのことを決して忘れてはならないわ。いいわね?

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