第一話 その7

「海老の到来を真実と仮定しよう。これはもう仕方のないことだ。斜陽機関も宇宙海老も私には観測不能な事象だからな。その非存在を証明できないこと自体が、人智では抗えないこと、つまり不可抗力の悪魔ということだ。

 じゃあ海老の到来を真実とした時に私たちに何ができるか、それは単純だ。結論よりも前にプロセスを解こう。

 一つの要素は斜陽機関。さらに分解すると、装置、世界の時間的な果て、未来から過去、偏在、未来、過去、薄いもや、過去改変、無数の未来の可能性、未来がどう選ばれるかは分からない、海老……。

 さて、こいつは一回無視しておこう。このふざけた装置から分かるのは、私たちもまた過去改変された偽物にすぎないってことだけだ。こいつは世界における所与の条件、物理法則や自然法みたいなものに過ぎない。重力の存在しない地球を考えることに意味がないように、私たちの世界の外側にあるものに目を凝らす必要はない。何が無数の未来の可能性だ、配られたカードの枚数が多いことを可能性とは呼ばねェ。可能性ってのはババ抜きで八切りを繰り出す必殺の可能性のことだ。

 次に海老の支配だ。こいつもまた考える必要のねえものだ。斜陽機関を前提にすりゃその支配は必然だからな、まさに不可抗力の悪魔というわけだ。つまり私たちは支配された世界を前提にする必要がある。

 支配された世界で何ができるか。あのクソメガネザル女は一つのヒントを残していきやがった。

 海老デンス。それは私たち人類に残された余地だ。人類には名誉宇宙海老になる可能性がまだ残されている。つまり人類は平等に不幸なわけではない、不幸なのは選ばれなかった人類だけだ。

 詮ずればこうだ、選ばれなかった人類は切り離していい。選ばれる人類とは何かを私たちは考える必要がある。

 つまりだ、私たちがすべきことは、宇宙海老に気に入られるためにはどんな情熱的なセックスを覚えりゃいいのか、それを探求することだ。海老反りか?そいつはもしや実にパッショナブルな海老反りのことなんじゃねえのか?探究心は尽きやしねえ。これが私の、やつらクソネブカドネザル女の一味に対する洗礼だ。

 勝たなきゃ敗北。そんなもんはシンプルの以前に必然に定められた確かな事実だ。

 もう一度言おう。私のモットーはいたってシンプル。シンプルこそが私のモットーだからだ。

 1+1の解は誰でも分かるのに、世界の幸せを考える時、人の思考は宇宙を駆け巡り、やがて頓挫する。善き思考とは、常にシンプルさを求めるものだ。

 この世で最も簡単なもの。それは、宇宙開闢以来の全ての歴史だ。なぜなら、それは常にシンプルを志向していたし、これからもそうであるからだ。

 この世で最も難解なもの。それはシンプルの定義だ。私たちは常にそれだけを考える必要がある。

 この世界には二種類の人間がいる。シンプル君と、ゲボが出るほど考える君の二種類だ。それらは片や存在し、片や存在してしまう。

 古今東西あらゆる問題はもっと単純化ができる。それは紛れも無い事実なのだが、現実はそう上手くいかない。一体なぜか。

 社会の中枢をゲボまみれの悪臭野郎どもが牛耳っているからだ。奴らはゲボが出るまで考えた末に、鼻をつまむようなほかほかうんこをひねり出して、昂然と胸を張っている文字通りのクソ野郎だ。しまいにゃそれを社会福祉と呼ぶ始末。ほどくのも至難なビッグ巻きぐそに、辟易としながらも私たちは縛られている。

 思考は肉体の檻だ。それを知らずにぬくぬくと考え続ける思考の自動機械どもが世の中に蔓延っている。考える暇もないほどに、奴らは考えている。

 だから私は、この世界への反逆のしるしとして三つの標語を掲げた。


 1、思考とは浪費である。

 2、思考とは怠惰である。

 3、思考とは怠惰である。思いつかないときには、同じことを言ったっていい。

 

 私の使命は、クソの塗りたくりのような複雑な社会の仕組みを破壊し、1+1で万物を統制する時代を創り上げることだ。社会全体に流行している知恵の輪遊びを即座にやめて、もっと簡単な法則で世界を成すことだ。

 その理想郷の到来によって、あらゆる人間が各々の世界をもっと愛せるようになるのだ。シンプル教万歳だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る