第43話 Scene:望「恋人たちの日に」
真っ赤な顔で、小さな可愛い紙袋を持って、翼が帰ってきた。
「うふふぅ。バッチリ?」
「バッチリだ」
「暑かったの?」
「めちゃくちゃ暑かった」
翼に颯とチョコを買いに行ってって頼んだ。光は「それはちょっと……」って最初は言ってたけど、恥ずかしそうに「でも、貰えたら嬉しいけど」だって。かわいー!
「あとは、任せてねー」
「いや、こう言っちゃあれだけど、お前に料理を任せるわけには……」
「あー!失礼しちゃう!でもねー、お料理は光にやってもらうから、安心してー」
「なら、いっか」だって。翼って何気にヒドイことサラっと言うよね。
「翼、颯のシフト知ってんのー?」
「ああ、分かるよ」
「週末入ってないよねー?」
「ああ、今んとこな」
「パーティーに呼んでくれるー?」
「俺が?」
「そう、翼がぁ」
「なんでだよ。こういうのは女の子から誘って欲しいんじゃないの?」
望もそう思うんだけど、私が呼んでも「義理」って感じがもろばれだし、断られそうな嫌な予感がするんだもん。翼がどうしても嫌って言うなら、光……ちらっと見てみる。
「私から、声かけとく」
「わーい!ありがとー」
当日までに買っておく物をメモする。
「つーばーさー、お酒飲んでもいーい?」
「いいんじゃね?俺の許可なんて要らないだろ」
「だってぇ、望、酔うと手に負えないからぁ」
「家だから大丈夫だろ、任せとけ」
「わーい」
お酒、大好きなんだけど、あんまり強くなくて、大騒ぎしちゃうんだよね。私は覚えてないからいいんだけど、あとで皆が「大変だった」って言うからなぁ。
「光も飲むでしょー?」
「うん、飲む」
「どちらかと言うと、光の方が心配」
「えー?そーなのー?」
「そんなことないよ」
「……」
ははぁーん。光もやらかしたことがあるんだねぇ?
「買い物、付き合おうか?」
「わーい、デート」
「だな」
「前から思ってたんだけどさ。翼って、望の前だといつもそんな感じなの?」
「そんな感じってー?」
「なんか私が知ってる翼とキャラが違くて、少し調子狂うって言うか」
そうなのかな?翼の顔を覗いてみる。
「変わったよーな?言われてみれば、私も前とはちょっと違うなって思うー」
「そりゃあ、関係性が変われば、態度も変わるもんじゃないか?」
「だよねぇ。お友達と恋人が同じ態度じゃ変だもんねー。望、覚えてるよ。私たちの友情の一部がお亡くなりになった日、なんか、恋が生まれたー」
そうそう。あの日、認めたくないけど、これまで大事にしてた何かがお亡くなりになって、新しい何かが誕生した。生まれ変わったみたいになった。
「光と颯もそうじゃないのー?」
「私たちは……ずっと隠してたから。関係が変わったことがバレないようにって過ごした時間が長くって、もう、そんな感覚が分からなくなっちゃってたのかも」
「もったいなーい」
「勿体ない?」
「そーだよ。らぶらぶーってするの幸せなのにねー?」
「そこは……俺に話、振んなよ……」
光がいる時にはあんまししないようにしてたけど、翼にぎゅってする。引き剝がされたらショックって覚悟決めてたけど、翼はぎゅってし返してくれた。
「はい。ご馳走さまです」
「どーいたしまして。えへへー」
11:30に来てねって光から伝えてもらってて、颯は時間ピッタリに来た。
この前、買って来てくれたチョコと、まあまあ大きな花束持って来た。ひゃぁ!
「えー!可愛いー!ありがとー!」
「光にだけど」
「むっ、分かってるもーん」
光、光、すごい、颯の愛が溢れてるよー!受け止めないと、勿体ないよー!
「ありがとう」
もっと喜んで、ほら!本当は嬉しくてたまらないくせにー!
「ねぇ、見て見て、すごいでしょー?颯の好きなもんばっかでしょー?」
「と言うより、望の好きなもんばっかだろ?」
「たまたま同じのが好きだよね、私たちー」
翼には隠しきれなかったけど、私たちはチョコレートケーキを作ったんだ。
ご飯は、唐揚げと、ポテトサラダと、手毬寿司で、望は具を入れて、ずっとラップをにぎにぎ頑張った。
「今日はお酒で乾杯だよー!」
「大丈夫なの?」
颯が翼に聞いた。翼は親指を立てて、グゥーってやった。かっこいー!
「シャンパンなんて飲むの?」
「望、これ好きだもーん」
今日の為に、お揃いの足長グラスを買ったんだよ。
4つ並べて、翼が注いでくれる。お店の人みたいで、かっこいー!
「何に乾杯するー?」
「恋人たちの日に」
翼が真っ赤になって、言った。頑張ってる。かっこいー!
「そーしよー!恋人たちの日にー!」
「「「「かんぱーい」」」」
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