第6話

 (ふたりは教室に入る)


「ここのカフェは、夏がテーマ……らしいです」


(4人席のテーブルを案内される)


(ふたりは席に着く)


(右から声がする)

「……なんで、隣に座ってるのか……ですか?」


「たまには……、いいでしょ?ほら、家族が4人集まると……わたしとお義兄さんは正面に向かい合って座るじゃないですか?」


「だから、こういうときくらい……、隣に座っても……」


「ねぇ、……いいでしょう?」


(僕はため息交じりに、うなずいた)


(ふたりの間に少し沈黙が流れる)


(店員の生徒が、僕としおんの前にやってくる)


「注文聞きに来たみたいですよ?なににしますか?」


「お義兄さんは……アイスコーヒーですね」


「わたしは……フラッペと……この、サマーアフタヌーンティーセット?をお願いします」


(店員は席から離れていく)


「いったい……なにが来るんでしょう?楽しみですね」


「そういえば!!お金!!持ってなかった……」


「持ってくるので、待っててもらってもいいですか……?」


「えっ……。おごってくれるんですか……?」


「やったぁ」


「ごちそうさまです!!」


「調子いいなって?」


(上目づかいで)

「かわいいでしょ?」


「……ごめんなさい」


「それより、来ましたよ!」


(テーブルにアイスコーヒーとフラッペ、ティースタンドがおかれる)


「なんかすごいですね。これ。ティースタンド……でいいのかな?本物、はじめて見ました。ドラマとかでしか、見たことない」


SE//フラッペをかき混ぜる音


「一番下に、アイスですかね……?違う、ジェラートかな……?周りを囲む紙ついてるし……。それから、真ん中が、ゼリー、一番上がマカロンですね。確かに……夏っぽい……?」


「……マカロンは……夏ですかね……?」


SE//フラッペをすする音


「冷たい」


「これ、どういう順番で食べればいいんですかね?」


「下から食べるんですか?」


「あ、今、調べてくれたんですね」


「ちらっと、スマートフォンの画面が見えましたよ?」


「迷惑かけさせちゃいましたか?」


(僕は首を振る)


(一番下からジェラートを取る)


SE//ジェラートを混ぜる音


「そういえば、お義兄さんって、食べ物なにも頼んでないですよね?」


(優しめの口調で)

「いりますか?」


(圧が強めで)

「いりますよね?」


「あ~ん、してあげましょうか?」


「家だとお互い向かい合ってるし……、大皿で料理が出てくるし……、そういう機会ないじゃないですか?」


「だから、今のうちに……?やっておこう的な?感じです」


「ほら……あ~ん」


「はい、あ~ん」


「早く食べないと、みんなに見られちゃいますよ?」


(僕はしぶしぶ、口を開ける)


「おいしいですか?」


「よかった~。これで安心して食べられる」


(僕は眉をひそめる)


「冗談です」


「まずいものを渡すわけないじゃないですか」


「おごってもらったお礼のつもりです……よ。一応は……」


「変ですか?」


SE//しおんがジェラートを咀嚼する音


SE//ジェラートを飲み込む音


「そんなに疑うなんて、お義兄さんわたしのことどう思ってるんですか?」


「……ごめんなさい、やっぱり聞きたくないかも。軽はずみでいっちゃっただけです」


「ジェラート、少なかったなぁ……。次はゼリーか……」


(しおんはゼリーを手に取って、口の中に入れる)


SE//しおんがゼリーを咀嚼する音


SE//ゼリーを飲み込む音


「でも……やっぱり聞いてみたい……」


「お義兄さん、わたしに優しくしてくれるし……」


「それに、いっつも晩ご飯一緒に食べてくれますよね?」


(照れながら)

「うれしい」


「だって、誰かと食事なんて、そんなことちょっと前までありえませんでしたから……」


「ママは再婚するまで忙しくて……、ひとりでいることが普通でした」


「晩ご飯食べることがほとんどだったし……」


「でも、最近は、お義兄さんと食べることが多くなりましたよね……」


「大学の研究だってあるはずなのに……」


「どうしてかなってずっと聞いてみたかったんです」


「単純に家族だから……ですか?それとも……」


「お義兄さんにとって……」


「わたしは……なに?」


(ふたりの間に沈黙が流れる)


「……そう。家族は大切ですか……」


「うん……。ですよね」


(そっぽを向く、しおん)


「弁明したい……?ですか?」


「いいでしょう。聞きますよ」


「わたしのことは……大事ですか……」


「でも……義妹だからってだけ……じゃないって……」


「それ以上に……、ですか?」


「あ~うい。へぁ」


「……ひ~きょーうものぉ」


(小声で)

「わぁー。わぁー。ちょっと求めたら、核爆弾みたいな破壊力のがきた……」


SE//しおんが手で自分を仰ぐ風の音


「あんまり、人がいるところでは、話したくない……?」


(少し沈黙ができる)


「人目がなければ、もう少しはなしてもいい……、そういうことですか?」


(さらに、数秒間の沈黙)


「……、マカロンいりますか……?」


「おごったんだから、食べて……。そいですかぁ」


「あ~ははぁ……」


「……このあと、人がいないところにいきませんか?」


(僕はうなずく)


「いただきます……」


(しおんはマカロンを手に取る)


SE//しおんがマカロンを咀嚼する音


SE//マカロンを飲み込む音


「……あっま」

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