第9話 李は九尾の狐をジャドウと川村に任せる

「アチョオオオオオオッ」


独特の奇声を発しながら李は果敢に攻撃を繰り出していた。

妖怪の本拠地に単身で突撃した李は屋敷の主である一体の妖怪と戦う流れとなった。


淡い金髪に赤い瞳。細い首には白金のファーを巻いて、同色の着物を身につけた長身の美女の姿をしており、振袖からは小さく細い手と得物の扇が見えた。腰から生えた


柔らかな九つの尾は炎のようにゆらめき、頭の両側頭部から生えた耳は狐のようだ。

彼女こそ妖怪軍団の最高幹部である九尾の狐である。


一目見ただけで高貴さと妖気に圧倒されそうになった李だが、恐怖を乗り越え対峙する。


三つ網の赤髪に赤い瞳。中華風の戦闘服に身を包んだ李に狐の妖怪は訊ねた。


「いらっしゃい、スター流のお嬢さん。お名前は」

「僕は李。君を葬る者さ」

「随分と大きく出たわね。可愛がってあげる」


ゆらりと扇子を構える九尾の狐に李も拳を構える。

互いの気が満ち、一線触発となる。


両者から噴き出した青と赤の闘気が触れ合った刹那、攻防が開始された。李は得意の拳と足を繰り出すが扇子によって全て防がれる。


完全に軌道を見切られていた。間合いをとって得意の火炎弾を放つが軽々と躱され、建物が破壊されるだけだった。


「止まって見えるくらいに遅いわね」


ダメだ。火炎弾では効果がない。


「螺旋火炎蹴り~!」


自らの身体に炎を纏いドリルのように回転して突撃することで一点集中の威力を生み出す蹴り技も扇の前に易々と阻まれる。


弾き返され体勢を立て直す。

自分の技だけでは分が悪いと悟った李は仲間の技を借りることにした。


突撃して貫手を放つ。無論、簡単に見切られているが狙いは別にある。


「見よう見真似のエクスカリバーナックル!」


手刀から真っすぐな炎が噴き出した。

攻撃範囲が伸びるとは予測していなかった九尾の狐は対処に遅れ着物に軽い焦げ目がつく。


大したダメージとはいえないかもしれないが、李にとっては大事な一歩だった。


格上でも少しは戦えるという自信につながる。

九尾の狐は喉奥から笑い声をあげた。格下だと思った相手から思わぬ反撃を受けたのだ。


「いいわ。あなたに私の力をちょっとだけ教えてあげる」


九尾の狐の全身に円を描くようにして青い炎が出現し、一斉に李に襲い掛かった。

火は服に引火するが李も発火して威力を相殺しつつ回転で風を起こして被害を抑える。


「あなたも炎。私も炎。面白い戦いになりそうね、お嬢さん」

「くっ……」


李の額から冷たい汗が流れ落ちた。



攻撃手段を封じられた李が九尾の狐に圧倒されているところに川村が到着した。


バンシーの予言を回避すべく救出に向かったのだ。服も身体も傷だらけで満身創痍の彼女を守るようにして前に立つと黒い鞘に触れて大きな瞳で九尾の狐を睨む。


「これ以上、拙者の友を傷つけさせるわけにはいかぬでござるよ」

「あなたは?」

「拙者は川村猫衛門でござる」


川村猫衛門。数多の妖怪たちを斬撃で葬っている妖怪斬りの川村猫衛門の名は九尾の狐は耳にしていたが実際に姿を見るのは初めてだったので、小柄な少年だと知って笑みを浮かべた。


「あなたが私の相手になるかしら」

「李殿は下がっているでござる。ここは拙者が」

「ありがとう」


李がテレポートで日本屋敷を離れると入れ替わりにジャドウ=グレイが現れた。

白い髭を撫でた長身痩躯の老騎士はタロットカートを投擲して九尾の狐を怯ませる。


「あなたも私と戦いにきたの?」

「左様。此度の戦は吾輩ジャドウ=グレイと川村猫衛門がお相手しよう。不服ですかな?」

「いいえ。さっきの子よりよほど歯ごたえがありそう」

「吾輩たちを食らおうと考えるとは笑止千万。では、参りますぞ」


ジャドウはジャドウサーベルを引き抜き、川村は斬心刀を引き抜いて構えた。

二対一の勝負がはじまる。

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