第3章

第31話 秋夜ってマジで幼馴染以外どうでもいいって感じだもんな

 中間テストが全て終わった今日、教室内にいるクラスメイト達の間には解放ムードが漂っていた。ようやく高校生になってから初の中間テストが終わったのだから当然だろう。


「やっと終わったな」


「ああ、これでようやく落ち着ける」


「春人は手応え的にどうなんだ?」


「うっかりミスとかが無ければどの教科も九割くらいは取れてるとは思う」


「マジかよ、流石春人」


「まあ、返却された答案用紙を見てみるまでは分からないけど」


 俺と秋夜は帰りのホームルームが終わった後、そんな話をして駄弁っていた。最初の中間テストからいきなり転けたくはなかったため、考査発表から今日まで頑張ってきた俺だったが、ようやく気が抜けそうだ。

 俺と同じく紗奈も仲の良い女子グループとテストの話題で楽しそうに話していた。恐らく紗奈も手応えは悪くなかったのだろう。間違いなく入学式翌日にあった復習テストよりは上がっているはずだ。


「ところで春人はあの噂は知ってるか?」


「あの噂?」


「近々転校生が来るかもって噂だよ」


「それってどこ情報なんだ?」


「職員室で先生達が話してるのを聞いたってやつがいたらしくてさ」


 情報源が職員室なら割と信ぴょう性は高いのかもしれない。ただ、小中学校とは違って高校からは義務教育ではなくなるため転校は色々と面倒だと聞いたことがある。

 県外から一家で引っ越してくるなどのやむを得ない事情がない限り基本的に転校はできず、その条件をクリアしても転入試験に合格しなければならないなど、そのハードルは非常に高いはずだ。そのため本当に転校生が存在するならそこら辺は全てクリアしての転校になると思う。


「ふーん、別に俺達には関係ない話だと思うけど」


「いやいや、もし転校生が一年生なら俺達のクラスが一番可能性が高いと思うぞ」


「えっ、どうしてだ?」


「ほらっ、うちのクラスって人数が一人少ないじゃん」


「ああ、なるほど」


 何があったのかは知らないがうちの高校に入学する予定だった生徒が直前で辞退したらしく、現在は学年の人数が一人足りない状態だ。それが原因でうちのクラスだけ人数が少ない。


「まあ、ぶっちゃけ俺は転校生にはそんなに興味がないんだけど」


「秋夜ってマジで幼馴染以外どうでもいいって感じだもんな」


 こいつは本当にその辺りが全くぶれないと思う。そんなことを考えると紗奈が声をかけてくる。


「春人、そろそろ帰るわよ」


「ってわけだからまたな」


「ああ、また明日」


 俺は紗奈とともに教室を出て、そのまま昇降口へと向かう。今日から部活も再開となるため帰ろうとしているのは俺や紗奈のようなどこにも入っていないメンバーがほとんどだ。


「そう言えば紗奈は結局部活には入らないのか?」


「そうね、部活をやってたら勉強についていけなくなりそうな未来しか見えないし。そういう春人はどうなのよ?」


「俺もパスかな、あんまり入りたい部活がなかったし」


「あんたの場合はプールがないのも結構大きいわよね」


「そうだな、水泳部があったら入ろうかなとも思ってたけど」


 中学三年間は水泳部に入っていたため高校でも同じように入部することを検討していたが、そもそもプールが無い関係でうちの学校には水泳部が存在しなかった。今更他の部活に入るイメージも湧かなかったため入らずに今に至るというわけだ。


「そうそう、せっかく中間テストも終わったんだしアウトレットに寄ってから帰らない?」


「オッケー、俺もちょうど羽を伸ばしたいと思ってたから賛成だ」


「じゃあ決定ね」


 ここ最近はテスト勉強ばかりしていたため帰り道でアウトレットに寄るのは久しぶりな気がする。市内の高校は中間テストの日程も同じため、アウトレットはきっと制服姿で溢れかえっているに違いない。

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