1-10 台風の目

 病院は、真夜中でも明るかった。


 駐車場にバイクを止め、病院に入る。


 蓮のクラスメートだといい学生証を見せると、すんなり許可され、部屋に案内された。


 慧は扉をノックする。


「誰?」


「慧」


「入っていいよ」


 慧は部屋の中に足を踏み入れた。那覇は「レディの部屋に、許可なく立ち入るのは失礼だ」と言って部屋の外に待機している。


 病室には蓮以外誰もいなかった。蓮は一人でニュースを眺めていた。


 慧はベッドの隣にある椅子に座ると、話を始めた。


「今日、歯車の所有権を奪いに、蓮が襲撃してくる」


「!」


「だから僕と、僕の……えーと、知り合いが護衛か何かをしに来た。彼も入れていいかな」


「……うん」


 那覇は優雅な仕草で病室の扉を開け、慧の隣に座った。


 そして長ったらしい自己紹介を始めた。


 自己紹介が終わると、蓮は小さくため息をついた。


「なんで、知り合いぐらいでしかないウチをそこまで構ってくれるわけ?」


「そりゃあ、知り合いが死んだら嫌でしょ。しかもさっき、僕が助けた命を無駄にされるのは嫌だしね」


「ふうん」


 ベッドの下から、眠っていたコペルが起きてきた。


「初めまして、コペルフックっス。コペルって呼んでくださいっス」


 慧の歯車からスー、那覇の歯車からは、先端だけ青い黒髪を三つ編みにし、那覇と同じくタキシードを着た少女、エミリア・ティアー『トワイライト』シグマノイズが出て、それぞれ自己紹介をした。


「スペルワンダだぞ。よろしくね」


「あたしはエミリア。よろしく」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る