第4話 「青」は藍より出でて「紫」に至る
探知状況に表示された「青」に近づいていくと、どうやら食材を扱っている店員がその人物のようだ。年齢は25ぐらい、長身で細身のイケメン店員さんが次から次へと訪れる客を相手にしている。中には彼を目当てに来ていると思われる女性客がちらほら見受けられる。そんな様子を遠目に見ていると
「よく来てくれた。会えて嬉しいよ。」
手を差し伸べてくるので、握り返すと次の瞬間には抱きすくめられていた。それも数瞬のことだったが黄色い悲鳴が周りから沸き起こる。
「お近づきのしるしだ。持って行ってくれ。」
大きなカボチャをほぼ無理矢理持たされるので
「今はこんな状況だから何も構うことができないが、またいつでも来てくれ。」
僕は頭をガシガシされるがそんなに嫌じゃない。その様子を見て女性陣がまた黄色い悲鳴を上げるが、僕にはそれよりも気になることがあった。イケメンから力の流入を感じ、「青」が「紫」に変わったのだ。
もう一度握手を交わし、礼を言って店を出てから改めて考える。恐らく「青」が僕に力を与えてくれる可能性のある人、「紫」が僕に力を与えてくれた人ということだろう。そうだとして、単に「探知」での表示の仕方が判っただけで、どうして「青」や「紫」が存在するかについては何一つ解明されていないんだけどね。さらに、副次的に「青」からの好意――行為?――を受け取ることになるということも。どっちが副次的なのかも不明だけどね。
そして、そうと判れば考えるべきことがある。積極的に「青」に接触しに行くべきか、回避するべきかを。こんな世界なので力があるに越したことはない。だがしかし、これまで出会ったであろう「青」は特に身の危険を感じたことはないが、今後もそうだとは言い切れない。軟禁されてあんなことされたりこんなことされたりするかもしれない。いやんバンカー。
まあ、基本方針としては「青」の様子を確認してから近づくようにする、ということでいいだろう。そうと決めたら、明日は街にどれくらいの「青」がいるか調べてみようと思う。とは言え、ここミースは約1500万人もいる大都市なので虱潰しに調べていては一ヶ月掛かっても終わりはしないだろう。取り敢えずは今いる東地区を調べてみることにしよう。
この後、
「お、ちゃんと来てるな。えらいえらい。」
一足先に一杯飲んでいると、ほどなくして二人が現れる。
この辺りは既に通っていたので把握していることは伝えたはずだが。いや、僕が来ないことを懸念していたのか。店を教えてもらうついでに、さっきのことで二人にもう一つお願いしたいことが出来たので逃げるつもりなど全くなかったけどね。
主に二人の注文した沢山の食べ物が並び、二人の味覚感覚の良さを知ることができたのは僥倖だ。
「カ~ナ~タ~、飲んれるかぁ~。」
「ああ、美味しくいただいてるよ。特に料理は僕の好みにも合ってて最高だよ。いい店紹介してもらえて感謝感激だ。」
ちなみにこの世界では15歳から飲酒可能だ。
割と早い段階でマイがこんな調子になったが、そのまま安定して暴れたりはしていない。
それで、二人にお願いしようと思っていたのは
そもそも
で、話を戻すと半年ほどこの地の先輩である二人から
「明日、あちこち都市の中を見て回ってみようかと思ってるんだが、礼はするので白地図情報でもいいので譲ってもらえないだろうか。」
「みずくさいにゃあ、私とカナタは肉体関係にゃんだかりゃ、まるごとやるにゃあ。」
「こ、こらぁ、ちょっとは遠回しに言いなさいっての。」
明け透けな言い方をするマイに、エミが頭を叩いてつっこむ。
いたいけな僕は、隣の卓からの視線が痛いよ。
「どうしても礼がしたいって言うにゃら、カナタのカラダで払うにゃあ。カナタはいいモノ持ってるかりゃにゃ、にゃはははは~。」
「しゅこしは声をおさえりゅにゃっ。」
更なるつっこみが入り、体での支払いは丁重にお断りしておく。あぁ頭痛が痛い。
エミも満更でもなさそうだったが、最終的にいっそのことお互いの全情報を渡そうってことで合意した。情報の交換後、ミースの
マイは僕の情報を眺めながらニヤニヤしていたが、何を思っていたのかは考えないようにした。
その後も結構話し込み、夜も随分と更けたところでお開きになった。店を出て二人と別れようとしたが、マイはまだ諦めていなかったのか僕を自分の宿に連れて行こうとしてエミに一発いいのをもらって引きずられていった。さて、明日に備えて帰って寝るか。
翌日、早速朝から調査を始める。東地区の外縁に近い方は僕たちが昨日行った森の
そうだ、ミースの東に森の
ということで、探索者は大体朝の早い時間から活動する人が多いので、先ずは
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