第20話 「誰も居ない交番」
単独でヤツらを
交番の引き戸を開けようと手を掛けると、鍵のある位置が不自然に割れていた、黒白は不思議に思いつつも、そっと扉を開けてみた、鍵は開いていたのだろう、扉はすんなり開いた。
「誰かいるのか…それとも」
室内であれば、仮に銃声が鳴り響いても大きな問題は無いと判断した黒白は、拳銃を片手に室内に入って行った、それでも背後からヤツらに襲われる可能性を
「何か使えそうな物があれば良いんだけど」
小声で呟き中を調べて行く、くまなく調べたが一階には大きな異常やヤツらが居た
「上か……」
血は乾いていて、黒白が来る数時間前に何者かがここに入って来たのは確かだ、そいつが何者かは分からない、それでも警戒するに越した事は無く、黒白は細心の注意を払い、ゆっくりと上に進んで行く。二階に付き両脇を見て見ると左は二部屋、右は一部屋と別れていた、近くにある左右二部屋の扉は閉まっていたのだが、左側奥の部屋だけは違った。
「あそこだけ空いている…」
階段にあった血痕はその部屋まで続いて居た、たった数メートルの距離だと言うのにも関わらず、密閉された空間に一人、何が居るか分からない恐怖があり、長い距離に感じられた、それでも今日はここで一夜を明かす他なく、不確定要素を減らして置かない事には身の安全が保障出来ない。
「行くか…」
自身を
「これは…」
中に居たのは二人の警官だった、しかもその警官達は力尽き倒れていた、片方は感染していたのだろう、口元に血が付着していて、左腕には噛み後が確認出来た。
「撃ったのか…」
感染した警官を見て見ると額に10㎝程の穴が空いて居る事に気が付いた、それはもう一人の方も同じで、そちらは窓にも同じくらいの穴が空いて居て、銃を片手に
崩れ落ちていた。
「どうなるか、分かった上で行動したのだろうか」
二人を見た黒白は、いずれ自分もこの二人のような決断をするのではないかと一瞬
【拳銃二丁 弾薬8発 防弾チョッキ一着 警棒二本】
他にも何かないか探していると銃を持っていた警官の腰の辺りに反射で光る何かを見付けた、それの中身を見て見るとそこには予備の弾倉が未使用の状態で存在していた、だがそれを見た黒白はある恐怖を感じていた。
ヤツらとの戦闘経験が無いと言っても、警官の二人をこの状態で発見したという事は救助は絶望的だろう、そして数年後・数日後・数か月後には物資の奪い合いが激しくなり、ヤツらと戦うのも当たり前になって来る、そんな中で本当に平和がやって来るのかすら分からない、これからの時代は今まで以上に、不透明で不正確で危険が付き
「マジかよ…」
自分が持っている拳銃を見つめた黒白は、その重さと冷たさに恐怖を覚え
「やるしかないよな、もう…あの頃を捨て去り、進まないと生きる事も守る事も出来ない」
一人の学生だった少年は、世界の残酷さを受け入れるしかなかった、戦う覚悟も必要とあらば引き金を引く覚悟もしていた。
「なんとなく銃の使い方は分かるけど、交番であればどこかに撃ち方とか置いていたりしないのかな…まぁいいか後で」
今いる部屋を調べてみたが、争った形跡は無く奇麗だ、他の部屋や一階の部屋は見てみたが、机の中身や部屋の中を調べてわけでは無いので、もう一度調べてみる事にした。
「取り敢えずはこの階から調べるか」
肺の中に有る空気を吐き出し、再び肺の中に酸素が
そして手始めに直ぐ隣の部屋を調べようと開けて見るとそこも綺麗だった。仮眠室や休憩室として使われていたのだろう、奥の方には
「今日はここで休むか」
そう呟いた後に今度は残された右の部屋を開けて見た、しかしそこにあったのは沢山の物だった捜査資料もあるのだろうか、それは
「さすがにここに使えそうな物は無いな」
部屋の中を見てはみたが、物が多すぎてどこに何があるか分からない状態だったこともあり、その部屋…いや、物置で物資を探す事は諦め、一階に向かった。
一階を調べて見つけたのはキッチン、シャワールーム、トイレを見付けたがこれと言って目ぼしい物は無かった、最後に一番奥にあったロッカールームに向かう途中、奥で大きな物音がして付近を調べて見たがそれらしいものは一切見受けられずにいた、そうなると音の出どころは一つだけ、黒白は恐る恐る引き戸を開けるとそこから出て来たのは1匹の猫だった、その猫はロッカールームから出て来て一度鳴くとどこかに行ってしまった。
「なんだ猫か」
ボソッと呟いた後にロッカールームに入ると、そこには6つのロッカーがあった、黒白は音が響かないように気を付けながら一つ一つ開けて行き、中に何か使える物が無いかと探していたが得に目ぼしい物があるわけでは無かった。見つける事が出来たのは私服やスマホ、他には軽食で買っていたのだろう、菓子パンやカロリーブロックと言った具合だ、他にこれと言った物は無く、持って行くかどうかも悩ましい。3つのロッカーには上記のような物しかなく、他2つのロッカーには何も入っていないという状態だった、最後のロッカーには鍵が掛かっていたのか、ロッカー事態古い物だったらしく、少し力を
「他と比べると色々入っているな、写真にメモ帳、なんだこれ?鍵?色んな鍵が付いているけど、流石に交番内の鍵だろうから調べてみるか、調べていない部屋は無いけど、隣接している家と、机の棚とかはまだ調べる事が出来ていないから、そこで使うのかも知れないし」
手元が暗い中で交番内を調べていた黒白はスマホのライトを頼りにロッカーの中を調べていた、鍵以外に見つけたのは小さめの懐中電灯が一つ。
「まぁ無いよりはマシか」
少し残念そうにしていた黒白だったが、最後にロッカーに貼ってあった数枚の写真を見て見るとそこには、今の凛香の姿と少しだけ幼い凛香の姿がそこにはあった。
「もしかしてこの人が凛香さんの親戚?」
凛香の背後には写真の持ち主と思われる人が写っていた、黒白はその写真を頼りに彼女の親戚を探そうと考え、2枚の写真をロッカーから剥がして
その後は先ほど手に入れた懐中電灯を頼りに、交番内を調べていた、まだ電気はい生きているが一人で行動している以上、不測の事態は避けたい。明かりを付けて行動していれば確実に人の目を引いてしまう、そして人が来たと同時にヤツらを招いてしまう可能性だってあるのだから細心の注意は必要だ。
黒白は最初に事務所に向かった、入って来た当初、中の惨状をあまり気にしてはいなかったが、改めて確認して見るとひどい状態だった.2階の二人は命からがらこの場所に戻って来たのだろう、その証拠に
「あの人達の手形かな…」
よく見て見るとその手形は一つの引き出しにも付着していて
「ここに何かあるのか?」
その手形の持ち主は引き出しを開けようとしていたのだろう、取っ手の部分にもかなりの量が付いていた。
乾いた血の感触とはいえ、あまり気分の良いモノでは無かったが、何とか引き出しを開けようと試みたが開く様子は無かった。それでも、あれだけ付着しているのだから何か警官にとった大事なものが入っているのではないかと思った黒白は、中身を確かめたくて仕方が無かった。
「駄目そうだな」
鍵穴がある事にも気が付いていたが、鍵が無いとどうしようも無いと諦めかけた時にふと、左ポケットに触れ、鍵束があったことを思い出した。
「これのどれかで開いたりしないかな」
左ポケットに入れていた鍵束を取り出した、鍵束と言っても7本の鍵が付いている、3本は二階の部屋の鍵、1本は交番の入り口の鍵、1本は隣接している民家の鍵、その5本にはそれぞれどこの鍵か書いてあったが2本だけ未記入の鍵があった、他の鍵より二回りほど小さいのと、他の鍵と同じサイズの鍵がありどちらか悩んでいた、しかしデスクの鍵穴は明らかに小さかった。
「これかな?」
小さい方の鍵を使って見ると、無事に鍵は開き、引き出しを開ける事が出来た、そこにあったのは鍵付きの黒い箱と箱を開ける為の鍵だけが置いてあった、黒白は何となく箱を振ってみると、中からは紙が入っているらしく、軽い音がカラカラとなっていた
「少しだけ厚みがあるのか…それともラミネートされているのか?」
黒白はその箱と鍵を持ち2階へと上がって行った。
黒白は休憩室に入ってから、しっかりと施錠してから近くにある椅子に座った、一階の戸締りはしっかりとしてあるが今の状態だと何があるか分からない、それに休憩室の明かりが漏れたとしても見えづらい位置にある為これと言った心配はない。
「念の為電気は点けない方が良いか」
万が一を考えた黒白は懐中電灯の明かりを頼りに先ほど持ってきた箱の鍵を開けた。
中に入っていたのは手引書と書かれたラミネート加工された紙だった、それはバインダーでファイリングもされており、なんの不自由もなく読むことが出来た。その内容は黒白が知りたがっていた内容で銃の打ち方だった。
【両腕を伸ばし、グリップを両手で握り、力を抜き、体感を意識して銃口を安定させる】
手引書に書いてある事を実戦してみたが、銃の重さを直に感じ、いざ撃つ時の緊張感が少しだけ伝わって来た、これからの事を考えると遠からず銃を使う時がやってくる、その時になって撃てません。では何も守れない、だからこそ今の内に心構えと感覚を掴めるように努力していた。
「やはり重いな‥…だけど、撃てる様にならないと」
黒白は銃弾一発が人の命を簡単に奪ってしまうと言う事を自覚し、それに一発一発が貴重な物だとも噛みしめていた。
「今日はもう休もう、それに…時間がある時に少しでも練習して行こう」
少しでも早く体に味ませることが出来るように時間を見付けて練習して行こうと決め、休憩室の一番奥に身を小さくし、まるで周囲の物と同化するかのように眠るのだった。
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