休み明け

 冬休みが終わり、三学期が始まった。

 朝のホームルーム、先生が黒板に大きな文字で「進路説明会」の日程を書き出した。


 「いよいよ、具体的に志望校を決める時期だぞ。模試の結果やオープンキャンパスの情報を参考にして、それぞれの夢を形にしていくんだ」


 クラスの空気がピリッと張り詰める。

 少し前まで、進路という言葉はどこか遠い未来のことのように思っていた。

 でも、もう言い逃れはできない。


 (夢を選んだ以上、これからは自分で動かなくちゃいけないんだ)


 授業中、ノートの隅に小さな星を何度も描いていた。

 その星は、どの線もまだいびつで不格好だけれど、なぜか愛おしかった。


 (星は、僕にとってただの象徴じゃない。僕自身の意思だ)


 放課後、進路指導室に呼ばれた。

 ドアを開けると、担任の先生が静かに微笑んでいた。


 「お、白木。座れ」


 「はい」


 机の上に置かれた模試の結果と進路資料が、こちらを睨んでいるように見えた。


 「君、理系に決めたんだな。宇宙物理系……簡単じゃないぞ」


 「……分かってます」


 「それでもやるか?」


 「はい。やります」


 少しの沈黙が流れる。

 そのあと、先生は目を細め、苦笑交じりに言った。


 「強いな、お前は。まぁ、その分大変だ。成績もギリギリだし、ここからは人の何倍も努力が必要だ。覚悟しておけよ」


 「はい。……全部、覚悟の上です」


 声に力を込めた瞬間、胸の奥が熱くなった。

 (これが、僕の「選んだ道」なんだ)


 教室に戻ると、田中が机に突っ伏していた。


 「お前さぁ、進路指導室で説教されてたんだろ?」


 「……まぁ、説教っていうか、激励っていうか」


 田中が顔を上げる。

 目の奥に、不安と羨望が混じったような色があった。


 「お前さ、本当に変わったな。前はもっとフワフワしてたのにさ。今、めっちゃまぶしいわ」


 「……そんなことないよ。怖いし、不安もいっぱいだし」


 「でも、それでも前に行くんだろ? すげぇよ、お前」


 僕は小さく笑った。


 「田中も、ちゃんと考えてるじゃん。大丈夫だよ、絶対に」


 田中は照れ臭そうに笑いながら、拳を突き出した。


 「まぁ、お前がそこまで言うなら、俺もちゃんと決めるよ。文系にする!」


 「お、決断したじゃん!」


 拳をコツンと合わせたその音が、冬の夕暮れの教室に小さく響いた。


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