第35話 文化祭当日

 メイド服&執事服のお披露目会を終えた俺たちは、着替えずにそのままソファでくつろいでいた。


「早く文化祭当日にならないかなぁ」

「私も楽しみ♪」


 椎名さんと奈月はくつろぎながらそんなことを話していた。

 学生生活で思い出に残る行事の一つだろうし、楽しみだよな。

 俺自身も恥ずかしさはあるけど、それ以上に当日が楽しみだという気持ちの方が大きい。


 今回のメイド&執事喫茶での接客だって、中々経験できないものだと思うし、いい思い出になるのは間違いないだろう。


「海斗くんは?」「水野くんは?」


 二人は同時にそう聞いてきた。

 本当にこの二人は息ピッタリだな。本当は双子の姉妹だったりするんじゃないか?


 そんな冗談を心の中で呟きながらも、俺は答える。


「もちろん、楽しみだよ」


 ♢


 約一週間が経ち、文化祭当日を迎えた。

 俺たちの学校の文化祭は二日間開催される。

 

 一日目と二日目でやる内容が違うのかと思う人もいるかもしれないけど、実際にはほとんど同じだ。

 ただ、一日目は学校関係者限定で行われる。つまり、生徒や教職員のみだ。


 そして、二日目が実質本番と言っていいだろう。

 二日目は、外部からの来客もあり、大勢の人たちが来るのだ。


 というわけで、一日目はリハーサルに近い感じになる。


「なあ、水野。今日の午前中は模擬店の焼きそば屋手伝ってくんね? 十時くらいまででいいからさ」

「ああ、いいよ」

「マジ!? 助かる! まだ準備が終わってないとこがあって、そこを手伝わないといけなくなっちゃったからよ」

「そういうことか。まあ、任せとけ」

「マジでサンキューな!」

「おう」


 メイド&執事喫茶は午後からの予定だからそれまで他のクラスの出し物とか見に行こうかと思っていたのだが、急遽クラスメイトに焼きそば屋を手伝うよう頼まれたので、十時までは焼きそば屋を手伝うことになった。


 まあ、十時以降でも他のクラスの出し物は見れるだろうし、問題ないだろう。


「なんか十時まで焼きそば屋手伝うことになった」

「そうなの? じゃあ、私も一緒に手伝いに行くよ。どうせ午前中は暇だったし」

「いいのか?」

「うんっ! 海斗くんと一緒だと楽しいと思うし」


 どうやら奈月も一緒に焼きそば屋の手伝いに行ってくれるらしい。

 正直、助かる。

 どのくらいの人数の生徒と先生が客としてくるか分からない以上、手伝える人は多ければ多いほど良いからな。


「ちょっと待ったぁっ!」


 早速、焼きそば屋の手伝いに向かおうと教室を出ようとしたのだが、背後から椎名さんに止められた。


「私も行くっ!」

「いいの?」

「私も午前中は暇だったから行くのっ!」

「お、おう。それじゃあ、行こうか」

「うんっ!」


 椎名さんも一緒に焼きそば屋の手伝いに行くことになった。

 一人が抜けたところに三人で行くのは想定外だったけど、まあ、問題はないだろう。


 ♢


 模擬店の焼きそば屋に着いた。

 三人~五人くらいがこの店を担当しているんだろうなと思っていたのだが、どういうわけかそこにはクラスメイトの男子生徒が一人いるだけだった。

 他の担当者はどこに行ったのだ。


 これは、二人と一緒に来て正解だったかもしれないな。

 というか、もし俺が手伝いに来れなかったらこの人、ワンオペすることになってたんじゃ……。


「手伝いに来たぞー」

「おっ、水野ぉぉおおおおお! 来てくれて助かったぁああああ! しかも三人で来てくれるなんてぇええええ!」

「おいおい、どうしたどうした!?」


 焼きそば屋を担当している男子生徒――青山悠太あおやまゆうたはいきなり俺に泣きながら飛びついてきた。

 このクラスメイトは二年生にしてサッカー部のスタメンという実力者で、体力オバケの異名を持っている男だ。


 とはいえ、そんな体力オバケな青山でもワンオペはキツイだろう。

 キツイっていうか、無理だろ。


「さすがの俺でもワンオペは無理だったから本っ当に助かる!!!」

「俺も一人で来なくて良かったわ、マジで」


 俺に抱きつく青山を見た二人は「ぐぬぬ……」と悔しそうな表情をしていた。

 まさか男子生徒にまで嫉妬するのかこの二人は。


 青山はハッとして俺から離れた。


「なんかとんでもなく鋭い視線を感じた」

「気のせいだろ」

「そう、かな。ま、水野がそういうなら、そうなのかもな!」


 どうやら視線には気づいたが、その視線が誰からの視線なのかには、気づかなかったらしい。

 青山が視線に気づいた瞬間に、二人はパッと笑顔に戻っていたから、気づかないのも無理はない。


「とりあえず、そろそろ開店準備始めるか」


 そろそろ焼きそばを焼き始めないとマズいので、俺は準備開始を促した。


「そうだな。四人で頑張って売りまくるぞぉ~! それじゃあ、行くよー? エイッエイッ!」

「「「「オー!!!!」」」


 こうして俺たちは、開店準備を始めた。


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