親友の彼女が横で寝てるんだけど、どうすればいい?
夜兎ましろ
第1話 親友の彼女が横で寝てる(なんで?)
俺――
学校から帰宅し、少し疲れたので仮眠を取っていたのだが、目を覚ました瞬間、体が妙に重く感じた。
倦怠感とかそういった重さじゃなく、物理的に重みを感じている。
「んふふ……」
突然、横……というか耳元から声が聞こえ、俺は慌てて横を向いた。
すると、そこには、見知った顔の同級生の少女――
重さの原因はこれか。
彼女は長い茶髪をふわりと揺らしながら、綺麗な寝顔をこちらに晒していた。
ここって、俺の部屋だよな。
何度周りを見渡しても間違いなくいつも通りの俺の部屋だ。
「マジでどうなってんだよ。こんなんバレたら俺、殺されるんだけど」
俺が混乱しているのは、ただ同級生の女子が横で寝ていたからじゃない。もちろんそれだけでも混乱しまくりだと思うけど、彼女はそれ以上に問題がある存在なんだ。
今、俺の横で気持ちよさそうに眠っている星宮奈月は、俺の親友の彼女なのだ。
今日は一人で帰宅したから、俺が連れ込んだわけではない。
となると、まあ、不法侵入ですか。
別に勝手に俺の部屋に入ってくるのは良いんだけど、一人では来ないでほしかったな。バレたら俺と親友の関係が終わりを迎えることになる。
てか、俺が一人暮らしで良かったよ。
親と一緒に暮らしてたら言い訳しても信じてくれなさそう。
あ、親がいたら勝手に入ってこないか。
「早くどうにかしないと……」
起こしてもいいよな。
俺が襲ってるって勘違いされたら嫌だな。
そんなん言ってる場合じゃねえか。起こさないとこの状況から抜け出せないんだし。
「おい、起き――」
起こそうと俺が肩に触れた瞬間、彼女は衝撃の一言を呟く。
「……海斗くん、好き」
…………え?
ただでさえ混乱していた俺の頭が意味が分からな過ぎて今にも爆発してしまいそうだった。
俺の名前だよね。
え、好きって?
いやいや聞き間違いに決まってる。
心臓の鼓動がうるさく鳴り響く。
(とりあえず起こそう。もう意味が分からん)
彼女の肩を強く揺すった。
「奈月、起きろ」
「んぁ?」
ようやく目を覚ましてくれた。
有難いことに俺が襲っているという勘違いはしていなさそうだ。
嫌がるどころか、何故か嬉しそうに微笑んでいる。
「なんで俺の横で寝てたんだ?」
「眠たかったからだね」
「俺の部屋で寝るなよ。バレたらどうするんだよ」
「バレたらって、誰に?」
「そりゃあ、あいつに」
俺の言うあいつというのは、もちろん親友のことだ。
俺の親友兼奈月の彼氏。名前を、
バレたら縁を切られるに違いない。
だからこそ、一刻も早くこの状況から抜け出したい。
焦る俺に対して奈月はふふっ、と笑う。
「別にバレてもいいよ」
突然のバレてもいい発言。
いやいや、良いはずがない。
なに、俺を修羅場に巻き込もうとしているのか?
「ダメだろ」
「まあまあ、そんなことよりさ」
「なんだ」
どういうつもりか分からないが、奈月が俺のことをギュッと抱きしめ、耳元で囁く。
「さっきからずっと待ってるんだけど、おはようのチューは?」
突然の奈月の耳元での囁きに俺は慌てふためき、沸騰しそうなくらい顔を赤く染めてしまった。
一体、こいつは何がしたいんだ。
「か、からかうな」
軽く奈月の額にデコピンをして、奈月の発言を流した。
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