ともだちというもの

 姉が亡くなって、誰に頼るでもなく、葬祭場へ依頼して淡々と葬式を上げた。


 家族葬で。つまり私一人が参列する、それでよかった。けれど、葬儀場の担当者が言ったのだ。

「まだお若いので、ご友人やお勤め先の同僚の方など、故人とお別れをしたいと思う方は多いのではないでしょうか」


 その言葉を信じた自分が悪かったのだろう。

 姉の携帯に登録してある全員に、ひとまず、姉の死亡と葬儀の場所と時間を連絡した。


 そして、葬儀の当日。

 参列してくれたのは、ほんの数人だった。


 確かに、現在海外ですぐに戻れなくて申し訳ない、そんな返答が来たこともあった。しかし、小学校から高校までの友人と思われる人たちは片手くらい。職場の同僚に至っては、代表2名、それだけであった。むしろ顧客と思われる関係者の方が多いくらいだった。


 葬儀場の担当者は、明らかにしまったという表情をしていた。


 ねえ、お姉ちゃん。

 さみしい葬儀を受けて、姉に問いかけた。

「ねえ、お姉ちゃん。あんなに頑張ってたじゃない。頑張っていれば、きっと誰かが見てくれている。そう言って、朝早くから出て掃除してたんでしょ?毎日くたくたになるまで営業まわりして、でも他人の書類も作ってあげたりしてたんでしょ?その結果がこれなんだよ。私は、悔しいよ…」


 まだ両親が生きていたころ、家に姉の友人がやってきた。姉の部屋の隣が自分の部屋だった。姉は階下へお菓子や飲み物を取りに行っていたのだろう。友人3人は、私の存在に気が付くことなくこう言っていた。


「やっぱり、漫画を読むならここだよね」

「うん、飲み物もお菓子もついてくる」

「仲良しアピールがうざいけど、まあ、仕方ないよね」


 お姉ちゃん、このヒト達は本当の友達じゃないよ。尽くしても無駄だよ。


 その言葉は、友達が来てくれた、と喜んでいる姉に伝えることは出来ないままだった。

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