ラスト サマー

そして身寄りが無くなった

　姉が死んだのは、この猛暑のせいだった。

　人一倍頑張り屋で真面目な姉は、営業周りの途中で倒れたそうだ。

　勧められる飲み物にも手を付けず、ぎりぎりまで営業して、次の場所へ。

　少しぽっちゃりしていた姉は汗っかきで、水分を取ると余計に汗をかくと信じていた。訪問先の顧客に迷惑をかけたくない、時間を無駄にしたくないという理由で日傘も持っていなかった。

　直射日光の照り付ける中、ふらりと倒れ、そのまま意識を失ったという。

　私に連絡が来たとき、既にいろいろな管が体中に通されていた。しかし、ひとみを開けることは無かった。

　お姉ちゃん。

　両親を早くに失くした私たちは支えあうようにして生きてきた。姉は、私の心配をいつもいつもしていた。

　私は、姉のように社交的ではなかったから。

　小学校の時からいじめられていた私は、両親を亡くし自分の立ち位置をどうすれば良いのか、相談するどころか心配してくれる人もいなくなった。

　ただ、姉は。５歳離れた姉は私のポジションをいつも気にしていた。何も言わなかったけれど、それは無言の中で伝わってきた

　高校を中退して、私には高校を卒業させようとしていた姉。

　児童相談所みたいなところへ私一人を行かせたくなかった姉。

　その姉が、死んでしまった。