【祝10000PV感謝】プロで挫折した俺、逆行したら最強打者になっていた件』

第46話 和哉を打てるのか？

　東京ドームの空気は張りつめていた。

　ホークスターズのエース・和哉が投げるたび、スタンドがどよめく。直球は152キロ、変化球も切れ味抜群。打者たちは次々と凡退していった。

　七回裏、スコアは0―1。

　先頭打者として勇気がバッターボックスへ立った。観客がざわめき、和哉も珍しく目を細めた。

　初球、外角ストレート。勇気は迷わず叩き、打球は三遊間へ転がった。ショートが飛びつくも届かず、レフト前ヒット！

　「よし！」

　プロ初対決で和哉から安打。勇気は一塁ベース上で拳を握った。

　すかさずスタートを切る。和哉は牽制を続けるが、勇気は怯まない。二球目、投球と同時に一気に加速。キャッチャーの送球をギリギリかわし、二塁を奪った。

　「セーフ！」

　観客が総立ちになり、ベンチからも大歓声が上がる。

　一死二塁で俺の打席が回ってきた。

　和哉との勝負。甲子園以来、初めて真正面から挑む瞬間だった。

　初球、インコース直球。唸るような速球に差し込まれ、ファウル。

　二球目、外角フォーク。見逃してボール。

　三球目、再びストレート。振り遅れて空振り。

　「くっ……」

　息を整え、バットを握り直す。勇気が二塁で大きくリードを取っていた。

　四球目、外角スライダー。狙って振り抜いた。

　「カキィン！」

　打球は三塁線を鋭く抜け、左翼へ転がる。勇気は俊足を飛ばし、三塁を蹴ってホームイン！

　歓声が爆発し、ベンチから仲間が飛び出した。

　ついに、和哉からタイムリー。

　「やったな、太陽！」

　勇気がベンチで俺の肩を叩き、笑顔を見せた。

　その後、和哉は冷静に後続を断ち、試合は1―1のまま終盤へ。

　だが、あの瞬間――勇気の走塁と、俺のタイムリー。

　プロの舞台で再び和哉と互角に渡り合ったことが、何よりの自信となった。

　ベンチに戻ると、勇気が小声で言った。

　「太陽、俺たち……やっぱりあいつに勝てる」

　「まだ一打席だ。でも、次は勝ち越しの一打を打つ」

　俺たちは強く拳を合わせた。

　宿命の再戦は、まだ始まったばかりだ。