暑い日々が続いていますがお元気でしょうか。

 こちらは平素と変わらず、穏やかな日々を過ごしています。そちらはそろそろタマユンの美味しい時期になっていると思いますが、皆さん変わりなくご健在でしょうか。タマユンを頬張るあなたの姿を思い出すと懐かしい気持ちが溢れてきます。

 さて、唐突に本題ですがご依頼いただいた赤輝のガラスペンは滞りなくお届けすることができそうです。少し制作に骨が折れましたが、書き心地も持ち心地も良い一品となりました。インクは取り換え式になりますので時期が来ましたら本体ごとこちらにお送りください。メンテナンスも兼ねて一回2ギルではどうでしょうか。冗談です。友情価格でお代はいただきません。それから初めての商品になりますので念のためにもう一本お付けさせてください。少しでも不備があれば中のインクが貴方の骨ごと焼いてしまうでしょうから。その際は早急に水繭に包み、特急獣に運ばせてください。

 今回のお代はそのままアンディに持たせてください。この子はよく私に懐いていますので寄り道をせずまっすぐ帰ってきてくれます。竜獣種は人に懐かないというのでいつ食われるかひやひやしていましたが、この子は例外のようです。手紙が長くなってしまいました。そろそろ二枚目にいってしまいそうなので、ここらで失礼いたします。


 左手に持っていた水のガラスペンを机に置き、窓際にアンディを呼び寄せる。

「アンディ。水飴の都まで商品を届けてくれるかい」

 グルグルと鳴きながらフワフワの頭を手に押し付けてきた。

「よしよし」

 包んだ箱と手紙を銀蜘蛛の糸で結びアンディの爪にひっかける。銀蜘蛛の糸は見た目の細さに反比例してとんでもない固さを持っている。体躯の関係でカバンを持てないアンディが配達に使う際に役立っている。

「場所は俺の実家の横。分かるね?」

 任せろとばかりに鼻をフンスと鳴らすと瞬きの間に飛び去ってしまった。あの子、またお弁当を忘れたな…。アンディ用に包んでいた大昼鴨九匹を前に頭を悩ませる。もともと野良の子だから餌は自分でどうにかできるだろうが毎度毎度全ての荷物を括り付ける前に飛び去る癖はどうにかしてほしい。しょうがないのでこれは熱砂の高原に撒くか。しかし飛び切りの速さを誇る竜獣種でも往復で三日はかかる距離である。最短ルートには寂し鉱山もある。あそこは生物が少ないし天候もコロコロと変わる。すっかり飼いアンジジェールになってしまったアンディには酷な道だったかもしれない。郵便料を払ってでも水獣に頼むべきだったかもしれない。一抹の不安を感じながらもアンディを信じることにした。いざという時は発信鈴を使おう。


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用語解説


○タマユン…楕円形のスイカのような果物。中身はメロンとスイカの中間くらいの味。食べれば分かる。

○赤輝のガラスペン…カイン自作。灼熱の国を閉じ込めたようなペンが欲しいと幼馴染に依頼され頑張って作った。制作日数は材料集めも含めて86日。インクの原料はマグマと黄金の砂。使うと赤に金の筋が通った文字が書ける。ガラスに特殊なコーティング剤を使い温度と中身が漏れないようにしている。

○ギル…通貨。詳細は次回以降。

○水繭…水墳の国で使われる水球のような繭。見た目は水球。外側に膜が張っている。水墳の国の特殊な環境から生成されるものでそこらへんの水ベールからいくらでも取れる。詳細はいずれ。

○特急獣・水獣(今回使われた意味では)…郵便サービスに使われる生物たち。配達スピードや届ける場所によって種類が変わる。そのうち詳細な説明がでてくる。

○竜獣種…希少性の高い生物。ドラゴンと獣の両方の特徴を持っている。生態についてはまだまだ謎が多い。

○銀蜘蛛…寂し鉱山に生息する二メートル前後の銀色の蜘蛛。主食が銀鉱石。

○寂し鉱山…次回以降説明。

○アンジジェール…竜獣種の一種。体躯は三~五メートル。生息場所によって色が変わる。頭部が虎のようになっている。見ればわかる。

○発信鈴…GPSに似た鈴。

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