キミのことが好きすぎるヤンデレ先輩と前世催眠♡恋旅路

黒猫夜

【1日目Aパート】「キミとボクも、何か縁があったのかもしれないね」 ~オカ研の先輩と前世催眠~

// 放課後のチャイム。部活をする生徒たちの声が聞こえる。

// あなたは教室の引き戸を開ける。


// 未使用教室の半分を占有するオカルト研究部の部室。

// 大きな置時計がコチコチと音を刻んでいる。

// あなたは引き戸を閉める。

// 部活をする生徒たちの声がほとんど聞こえなくなる。


// オカルト研究部の先輩が夕焼けの中、本を読んでいる。


// 興味がなさそうに

やぁ……オカルト研究部へようこそ……。

見学は自由だから好きに見ていってほしい。


// かすかにブラスバンド部や野球部の練習の音が聞こえる。

// その中で静かにページをめくる音と時計の音だけが教室に響く。


// あなたは歩いていき、先輩の近くにある椅子に腰かける。

// 椅子がきしむ。


// そこにいるのがあなたであることに気づいた先輩は息を漏らす。


……あ。

キミか……。


// 先輩は読んでいた本をパタンとたたみながら机に置く。


// 少し言い訳がましく早口で

すまないね……キミが入部してくれるまで、見学の人ぐらいしか来なかったから。 


// 眼鏡を取り、きれいにたたむと、机の上にカチャリと置く。


// 胸を張って大きく伸びをするように息を吐いて

ん、ん~。

……お茶でも入れようか。

キミも、飲むだろう?


// 先輩、ペタペタと教室の入り口のほうに歩いていく。

// 少し高いところにある戸棚を背を伸ばしてガラガラと開ける。

// カチャカチャと茶器を用意する先輩。

// 電気ポットからお湯を注ぐタプタプとした音。

// お盆にティーカップを2つ乗せて、先輩が戻ってくる。


// そっけなく。しかし、わずかに不安も込めて

お口に合うといいけれど。


// あなたの前と斜め前にティーカップが置かれる。

// 先輩が座って、椅子がきしむ音。


どうぞ。召し上がれ。


// あなたはゴクリと一口飲む。


// いたずらっぽく

コーヒーだと思った? ふふ、これは、たんぽぽの根のお茶なんだ。香ばしい香り、感じる? ちょっと深呼吸してみて?


// もう一口飲む。


この香り、なんだか懐かしい土の匂いだよね。田舎の風景、浮かんでこないかな?

目をつぶって、野辺で風に揺れるたんぽぽをイメージしてみて……。


// そよ風が草を撫でる音が聞こえる気がする。


// ゆっくりと

田んぼのあぜ道にたんぽぽが咲いているね……。

山に囲まれた小さな農村……。平和そのものだ……。


// トンビのピーヒョロロという鳴き声。


トンビだね。

視点を上げると山だ。

春から夏にかけてのみずみずしい緑が広がっている。


// せせらぎの音。


あ、せせらぎの音が聞こえるね。雪解け水が流れるせせらぎだ……。


// しばらくのせせらぎの音だけが聞こえた後、かすかに馬のいななきや金属のぶつかり合う戦場いくさばの音が聞こえてくる。

// 合戦の音が無視できないぐらいになったあたりで、先輩がパンと軽く手をたたいて目を覚まさせてくれる。


ふふ、リラックスできたかな……? 農村の風景、落ち着くよね?


さて、リラックスできたところで、さ。

付き合ってほしいことがあるんだけどいいかな?



// 先輩は部室のカーテンを閉め切ると、卓上ライトに明かりをつける。

// あなたは柔らかなソファに腰かけさせられ、その正面に先輩が座る。

// 放課後の喧騒は完全にフェードアウトし、部室の置時計のコチコチとした音だけが静かに聞こえる。


// 静かに空気を多く含む声で秘め事を交わすように耳元で

前世ぜんせ退行催眠』……って聞いたことあるかな?

自分が自分として生まれる前、つまり、前世ぜんせの記憶をたどる催眠だよ。


// 立ち上がり、あなたの左右をうろうろしながら

『袖振り合うも他生たしょうの縁』という言葉があるね。

今、袖が触れ合っただけの人でも前世、他生たしょうでの深い宿縁がある。

そういう意味さ。

『多少は』縁がある、ちょっと縁がある。

そんな意味じゃなくてね。 // 少しからかうように


// 再び秘め事を交わすように

キミとボクも、何か縁があったのかもしれないね。


前世なんてものがあるのか。はたまた勘違いなのか。

確かめる方法があるなら、オカルト研としてはやってみるしかないよね。


// 少し不安そうに

……付き合って、くれるかな?


// 微笑んで

ふふ、そういってくれると思った。


// 先輩がそばに来る。衣擦れの音。

// 以下、耳元で

大丈夫。リラックスして。


息を吸って……吐いて……。

お腹で息をするんだ。


ボクを信じて。すべて、ゆだねて。


ねえ、時計の音が聞こえるよね。

カチカチ カチカチ


// 時計の音。


目をつぶって

時計の秒針が進むのを

イメージしてみて


ボクがキミの耳元で指を鳴らすと、それが逆転するよ。


// 先輩はあなたの耳元でぱちんと指を鳴らす。


逆転した?

カチカチ カチカチ


それじゃあ、それを速めていこうか。

イメージしてみて。

今日起こったことを逆回しに。


部室でボクとたんぽぽ茶を飲んだね。

部室に来てくれたね。

お昼は中庭で食べていたね。


どう、巻き戻ってる?


昨日はどうだった?


1年前はどうだった?


中学生の時は?


小学生の時は?


一番最初の記憶は?


一番最初の記憶の始まり、その前はどうだろう?

光が見えてこない?


それはね、トンネルの出口なんだ。

もっと後ろに戻れるはず。


どう?


暗い?

暗いところに来たね。


何か感じる?

何が聞こえるかな?

それが、キミの前世の記憶……。


// 先ほど聞こえた合戦の音が遠くから聞こえてくる。


// 先輩の声は徐々にフェードアウトし、あなたの意識は前世の記憶に移っていく。

合戦? そこは、戦場なのかな……?

キミは、何をしているのかな……?


// あなたの意識は遠い前世の記憶へと吸い込まれていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る