【4】
スーパーまるやまの広告は結局まるで反響がなかった。結局、別な担当者が従来通りに専業主婦をターゲットにした広告を打って、それがSNSでも話題になった。
「あんな短いスペースの記事にいつまで時間かけるつもり?AIを前面に出してアピールすれば十分だろって言ってるだろ」
最近の清水さんは、自分の仕事の愚痴を言うかわりに私の仕事に口を出すようになった。まなびのいえの記事も、アドバイスをくれると言ってほとんど全文を私に代わって書いてくれたけど、なんとなく永井さんに提出する気持ちになれなかった。
「うん…でも何か、伝えきれてない気がして…」
中溝さんの語るまなびのいえにとって、AIは確かに大きな魅力のひとつには違いない。ただ、私がそこで感じたもののすべてがAIという一言で説明できる気もしなかった。
「あのね?奈緒が書いてるのはPR記事なんだよ。読書感想文とかじゃないの。奈緒の自己表現じゃないの。大事なのはクライアントに価値を提供することであって、奈緒が満足できる文章を書くことじゃないんだよ。奈緒は文学少女だから、自分の文章力に自信があるのかもしれないけど、アートとしての文芸と広告って違うものだっていい加減理解しなよ」
私が文学部出身だと知ってから、清水さんはよく私のことを文学少女と呼ぶ。確かに子供のころは本をよく読んだし、読書感想文も得意だったけど、それは大人に褒めてもらえるからであって本を読んだり上手な作文を書いても褒めてもらえない年齢になってからは、読書にも創作にもあまり興味はない。文芸と広告では求められるものが違うということも、自分ではわかっているつもりでいる。でも苛々している清水さんにそれを言っても火に油を注ぐだけだから、「うん、そうだよね」と答えるしかない。
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