独り占めしたいって言えない俺は

斗花

第1話

大学4年の前期、ようやく実習が落ち着いた。

家でのんびりスマホを見ると、バンドの練習中の彼氏の角山かどやま良介りょうすけ通称カクからラインが来ている。



結奈ゆなちゃん、実習おつかれさま!

また後期も大変だと思うけど応援してます!

約束してたお疲れ会、勝手にお店予約しちゃった!」


この優しい言葉選び、何年経っても嬉しくなる。

カクからのラインは読み返すのも嬉しくて、時々スクショしてるのは誰にも秘密だ。


予約してくれたと言ってる飲食店はちょっと有名なオシャレ個室居酒屋だった。

すぐにありがとうの返信とスタンプを送って、ウキウキした気持ちでクローゼットを開く。



私の名前は春日かすが結奈。看護大学の4年生。

そして彼氏の角山良介はプロのバンドで、ベースを担当している。

高校2年の終わり頃から交際を始めて、今は絶賛同棲中。


彼氏のバンドは最近本当に有名になってきていて、この間はゴールデンの音楽番組に期待の新人枠として取り上げられていた。


かなり忙しいはずなのに、疲れた顔を見せずに、こうやって私のために時間を作ってくれる優しい彼氏だ。


付き合って4年半くらいになるけど、控えめに言って大好き。


……本人にはあんまり言えないけど!



服は最近買った、ベージュのワンピースにすることにした。夏らしくて似合うよって、カクが背中を押してくれたやつ。

若干襟元が広くて結構勇気がいったけど、カクがかわいいって言ってくれた服、着ていったら絶対喜んでくれると思う。


約束の時間まではまだ結構あったけど、久しぶりのちゃんとしたデートになんとなく落ち着かなくて、化粧も済ませてしまった。


……とはいえ、本当に早すぎるんだよな。


改めてカクの送ってくれた店を確認すると、私のバイト先の最寄り駅ということに気付く。


ちょうど実習期間明けたらお礼ついでに菓子折りを渡そうと思ってたので、それを持って少し早めに家を出ることにした。


私は大学1年の頃から、ずっと同じカラオケ屋でバイトしている。

カラオケは駅前から4分くらいのところにある、細くて長くて古いビルだ。エレベーターが1つしかなくて面倒くさいのが難点。時給はかなり良い。


とはいえ、実習期間が結構多いから実質的に働いてる時間はトータルするとそんなに長くない。

今回も結構長い期間お休みしてた。

シフトも自由で2時間から入れるくらい自由度が高いし、カラオケだから深夜もやってて、結構都合がつきやすかったし、職場の雰囲気も比較的良いので、やめずに3年続いている。


気付けばバイト先ではかなり長くいる方になっていた。


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