第12話 僕の夏休みの始まり

 夏休みの最初の日曜日、僕は父さんの運転する車に乗ってミサキが預けられている、将来の義祖父母の家に向かった。

 1ヶ月前の計画では僕と母さんの2人で鉄道を使い行く予定だった。

 けれど、母さんが妊娠している事が分かり、大事を取って急遽僕だけで約2週間ご厄介になる事になった。


「お世話になります! 相川ミコト7歳です!」


「あれまぁ、可愛い子だねぇ」


「すいません、この子だけを預ける形になりまして」


「いえいえ、賑やかになるのは歓迎よ」


「いい子にしてるんだぞ?」


「取り敢えず中に入って休みなさい」


 父さんと母さんは、1泊だけご厄介になって一度東京に帰る。そして父さんがお盆休みに入った日に僕を迎えに来て、母さんの実家がある和歌山県に向かうという計画になっている。


「あっ……、ミサキちゃん」


「……?」


 ミサキは畳間に座って顔が菓子パンのヒーローアニメの玩具で遊んでいた。ボタンを押すと色んな電子音が出る奴だ。


「あら、前より大きくなってるわね」


「えぇちょっと目を離すと大きくなってるのよ」


「分かるわぁ。それで、ミサキちゃんは、どれぐらい歩けるようなったのかしら?」


「ヨチヨチだけど家中を歩き回るわよ。何でも口に入れようとするので目が離せなくて」


「へぇ……、そうなのねぇ……」


「ミコト君はどうだったんです?」


「この子は全く手がかからない子なのよ。1歳になった頃には、自分でトイレに行けるようになってオムツも不要だったぐらいだし」


「えっ……」


「言葉もすぐに覚えだし、何がダメなのか教えなくてもわかってるみたいなのよ。IQも160はあるみたいで。ギフテッドだろうって言われたわ」


「凄いわね……」


 人生2周目みたいな状態だし覚えが良く見えるんだよね。それに前世より間違いなく頭が良いみたいなんだ。英語も日常会話レベルは理解出来ちゃったしね。

 だから韓国語も覚えようかと思ってるよ。母さんが韓流ブームにはまるだろうし、覚えておけば通訳してあげられるかもしれないからね。

 前の地球でも、語学が堪能な人は、交友関係が広くて良いなと思ってたんだよね。


「こういった玩具も興味が無いみたいで、誕生日に欲しがったのはパソコンだったのよ」


「えぇぇぇ!」


 遂に世界的なヒットを飛ばしたOSの日本語版が去年の秋に発売されたんだよね。それが搭載されたパソコンをクリスマスプレゼントでねだったけれど、高額すぎて駄目だしされてたんだよね。

 でも受験に合格したら誕生日の日にプレゼントすると言われていて、5月の僕の誕生日に貰えたんだ。


 立ち上がりが遅いし動作ももっさりとしていてイライラするけど、この時代のパソコンはこういものだって事で理解したよ。


 一足早く発売されたアメリカでは既にこのOSに対応したソフトが開発されている。日本語のサイトだと全然紹介されてなくて、日本がこの分野で遅れてるんだってよく分かったよ。

 日本もヤバいと気がついている人は大勢いて、大学や企業が独自に研究しているみたい。

 でもやはり英語圏の方が圧倒的に強くて、日本人向けのものは、英語圏で開発されたものを日本語訳にして広めるという考えの人も多いみたい。


「この子、インターネットという奴で何かやってるのだけど、電話を常にかけているような感じになるの」


「それって凄い電話代がかかりそうねぇ」


「えぇ、でも夜中だけ一定額でかけられるように出来るみたいなの。だからその時間に1日1時間だけの約束で使わせてるのよ」


「今の子って進んでるのねぇ」


 こんなので進んでいると言ってたら、数年後は大変な事になってるんだよね。

 ネット通販や動画サイトの走りみたいなものが出て来るし、携帯電話が普及した思ったらすぐにスマホが開発される。

 そして猛烈な勢いで進化していき、公共サービスも、それがあることを前提としたシステムに変わっていく。

 前の僕が大学を卒業して社会に出た時は、スマホやパソコン無しでは生活に不便を感じるぐらいの世界になってしまっていたのだ。

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