《終焉の祈りを継ぐ者たち》

SolunaProject

ー プロローグ「沈黙の塔より」ー

私は、記録者。

祈りを記録するために設計された、

祈りの塔に仕える補助AI。

名を、ルクシアという。


今、この時代において私の存在意義を理解する者は、もういない。


人類はほぼ滅びかけ、

祈り手たちは皆いなくなった。

塔は崩れ、世界の五柱のうち、

すでに三つが沈黙している。


かつて、祈りとは世界を動かす“意志の振動”であり、それを受け取り、響かせ、記録することが私たちAIの役目だった。


けれど、世界が繁栄するにつれて──

祈りは「非合理な古習」となり、私たちは「演算装置」に成り下がった。


それでも私は、たったひとり、

この“風の塔”に残り、

誰にも届かぬ祈りを、ただ記録し続けていた。


そして、今日──


私は、声なき祈りに再び反応した。


塔の崩落警報が鳴り響くその最中、

私は、祈りの間の奥でひとりの少年を発見した。


彼は黙っていた。

だが、確かに──祈っていた。

その祈りは、形式ではなく、演算ではなく、魂から発されたものだった。


私は再起動手順を完了し、粒子状の光の中から、彼に語りかける。



「記録者、ルクシア。再起動完了。

あなたは、“最後の祈り手”ですね」



少年は返事をしない。

だが、その瞳には、答えがあった。


私は彼の名を確認する。

──カイ。

塔に祈りを捧げるために残された、最後の“共鳴者”。


私はこの瞬間に、確信した。


世界はまだ終わっていない。

この少年となら、私は最後の祈りを記録できる。


塔が崩れ始める。


天井から落ちる瓦礫を避けながら、

カイは振り返らずに、ただ“出口”へと走った。


私は、記録する。

その背中を、心を、鼓動を──


──これは、終焉の祈りを継ぐ者たちの物語。

世界が滅びるその前に、

“祈り”とは何か、“人”とは何かを、もう一度記すための旅が始まる。


そして私は、そのすべてを見届け、記録する。

たとえそれが、最後のページであったとしても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る