喧嘩師の異世界転生〜与えられたのはスキルはヒールだが、俺がしたいのは殴り合い!

もぶだんご

第1話 喧嘩師、初めての死

俺の名前は、龍崎凌牙。


ただの喧嘩好きのチンピラ、ってとこだ。


「チッ...糞どもめ」


俺は吸いかけのタバコを捨て、目の前に来たチンピラ共と敵対していた。


「よぉ〜よぉ〜、龍崎さんよ。昨日は俺の舎弟を可愛がってくれたみたいじゃねぇか」


「昨日?覚えてねぇな。記憶に残らないほど弱かったんだろうな。てめぇの舎弟はよォ」


久々の大人数との殴り合いだァ。


俺の気分は高揚していた。


心臓が脈打ち、身体が喧嘩を求めていた。


「聞いた通りのクソガキだなぁ...ヤクザを舐めんなよ?」


そう言うとその群れの頭は、光り物を抜いた。


「ハッ!ナイフくらい使ってくれなきゃ、話にならねぇよ」


「舐めるなよ...クソガキがあ!!」


俺はナイフを突きつけてきた男を投げ飛ばし、地面へと叩きつける。


その間に、左右、そして後ろにこのヤクザ共は散らばっていた。


「3方向からなら何も出来ねぇだろうが!殺す!」


「てめぇらのものさしで、俺をはかんじゃねぇ!」


俺は前方に飛び、3方向からのナイフも避けた。


しかし、それは罠だったらしい。


「なっ」


そこにあった工事に使われている鉄パイプが大量に落ちてきたのだ。


(こいつら、紐を弛めてやがったな...)


「ひゃっーはっはっ!これで、てめぇも終いだろうが!!」


そいつらが見ていたのは、俺が下敷きにされた鉄パイプだった。


普通の人間であれば、こんなことが起きれば、即死だろう。


そう、普通の人間ならな。


「おいおい...こんなんで...俺が死ぬわけねぇだろうが」


血まみれではあるが、俺はその鉄パイプを跳ね除け、立ち上がった。


口内が、血で満たされていく。


「ば、化け物が!」


「てかよ、さっきから殺すとか言うなよ。殺すぞ」


「いや、今お前も言っただろうが。馬鹿が」


「誰がバカだとぉ...馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ。このバカが!」


その後、16人との殴り合いを制し、俺は多少の切り傷を負いながらも、屍のテッペンに座った。


そして、1呼吸つくため、タバコを取り出し火をつけた。


「ふぅー...もう少し骨のある奴は居ねぇのかよ」


薄暗い路地裏だが、喧嘩するには充分すぎる広さだった。


だから、俺はここに居る事が多い。


それに、ここに居れば俺の噂を聞いて、喧嘩自慢が喧嘩をしに来る。


俺は強い奴を探す手間が省けるという訳だ。


とはいえ、ずっとここにいる訳にもいかない。


そろそろ帰るとするか。


「じゃあな、雑魚ども。強くなったら、また喧嘩してやる」


「ぐぉぉぉ...」


返事は呻き声だったが、多分また仕掛けてくるだろう。


これで1週間は喧嘩相手に困らない。


しかし、その路地裏から出た時だった。


俺の視界は真っ白に染め上げられ、体は吹き飛ばされた。


「がぁぁぁぁ!!」


それは、この時間に通るはずもないゴミ収集車だった。


「こんなガキが、全員倒してくるとはなぁ...とはいえ、これで死んだだろ」


俺の体を蹴り、死んだこと確認した2人組の男。


タイミングからして、奴らの仲間だ。


「うれ...しいなぁ...ゴフッ...物足りなかったんだよ。あの、ゴミ共じゃあ」


「は!?あれに轢かれて立ち上がれんのかよ?!」


「こ、こいつ化け物だ」


内蔵が破裂したのか、俺の口からドロドロと血が零れていった。


俺はその2人も殴り飛ばし、顔面を陥没させた。


どちらも一撃で動かなくなったため、不完全燃焼だ。


「期待...ゴホッゴホッ...ハズレの...カスだった」


これは流石に病院に行くべきか...


そう思い、帰路を辿ろうとするも、後ろからの銃声によって、俺の歩みは止まった。


後ろから鳩尾辺りを正確に捉えられた。


ゆっくりと振り返れば、そこには既に誰も居なかった。


「クソが...」


俺は前のめりにぶっ倒れ、そのまま意識を失った。


この日、俺は17年の人生に幕を閉じ、地獄へ向かうはずだった。

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