闇落ち英雄の国家運営

華園モモカ

第零章 始まり編

第1話 理由

 「あぁ、もういいよ……。なんの為にこの世界を救ったのか……俺にはわからない」


 荒野にたたずむたった一人の青年は片手に剣、髪はボサボサ。荒れ狂う業火の中気力をなくしていた。


 「俺は貴様らの為にこの世の為に戦ってきた。だが世界は俺を裏切るし、貴様らも裏切る。何のためにおれはあいつを殺したんだ」


 この世界は魔物が蔓延り、多彩な種族がおり、そして神もまた存在する世界。


 「あぁもういいよ。こんなことになるならいっそこの世界を滅ぼそう」


 気力がない青年から最後の力と思われる、人間ではありえないほどの魔力そして殺意を込められた”壮大な魔力"は周りに集まっていた兵士や敵の魔族などをすべて即死させるほど強力なものだった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 「あなたは死にました」


 きれいな金色に光る髪をなびかせそう言う。


 「俺はとうとう死んだのか」


 神は同情するかのように首を縦にふる。


 「まぁあんな術式を段階踏まず使ったならそうなるわな」


 「そう、あなたの前世は壮絶なものでした。魔王を倒し、賞賛ではなく罵声を浴びせられて、しまいには家族。恋人までも手をかけられてしまった」


 「あぁ、もういいんだよ」


 「そんなあなたにもう一度あの世界に行ってもらいます」


 その刹那、女神の首根っこを掴み締め上げていた。


 「違うんですよ! アスタロトさん!」


 「あぁ?」


 「今から送る場所はあれから500年後の世界です……」


 「500年後だと? 貴様なめてんのか」


 「私は、あなた様に楽しい人生を送ってもらいたいんです!」


 女神の迫力にびっくりした俺はひとまず女神の話を受け入れることにした。


 「そうだそうだ! あなたは殺意と怨念が強い。そう私が言いたいのは次の人生では少しでもいいから優しくすることね! そしたら幸せに生きれるわ」

 

 女神の一言で目の前は謎の光に包まれ気が付いた頃には森の中にぽつんと佇んでいた。


 「あぁなんだここは?」


 あたたかな風が体をなで、太陽の光があたりを照らしている。以前、大戦争時代あの荒野や血の匂い、死臭など全くせず。むしろ緑のいい匂いが漂っている。


 「これが自然なんだな……懐かしい……。何年ぶりだろうか……」


 俺は幼少期から最強の戦士として育てられてきた。


 いつでも敵を倒すことを文字通り体に叩き込まれてきた。


 ある日は依頼で人を殺し、ある日は血まみれになり、ある日は自分の魔力に飲み込まれそうになった。


 「そんな俺に幸せか……。今考えたら俺に幸せなど必要あるのか」


 {だから言ってるでしょう。あなたには休息が必要なんです!}


 「お前、脳内から直接話かけれるのか……」


 {そうだよ~}


 「まぁいいわ」


 とは言っても今の状況から考えるように前世の世界と一緒ならまだ"魔物"がうろついていると思う。


 俺は別に魔物を強いとは思わないが、なんせ食べるものや飲むものがない。


 俺は世界を滅ぼしたことがあるが根は人間、人族と一緒だ。生きるため必要なものがなければ本末転倒だ。


 残り懸念されるのは500年後の世界で俺の力は劣っていないか確認する必要がある。


 「【烈斬れつざん】」


 その瞬間、周りの木々は根元から根こそぎ抉れていった。


 「能力が半減されてるな……」


 {あなた……それで能力半減されてるの? 私が知っている烈斬れつざんはその半分ぐらいの威力だけどね……}


 「本当なら連鎖反応がおきるはずだけど……」


 {どうなってんのよ……}


 そんな会話をしながら森の中を突き進む。


 森の草木が風で揺れ、とても涼しいのだが……。


 「たすけて!!!!!」



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る